- 作者: 須賀敦子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 1990/12
- メディア: 単行本
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表紙と中表紙、どちらもイタリア語のタイトルと作者名のアルファベット表記あり。ついうっかり、ミラノと伊語でも明記してるだろうとたかをくくってましたが、"Milan"とも"Milano"とも書いてません。
Paesaggi nella Nebbia Suga Atsuko
ミラノ霧の風景―須賀敦子コレクション (白水Uブックス―エッセイの小径)
- 作者: 須賀敦子
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2001/11/01
- メディア: 新書
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日本オリベッティ設立 - NTTデータ ジェトロニクス株式会社創立50周年記念サイト
https://www.nttdata-getronics.co.jp/50th/1961-2011/1961-1966/
ACII.jp アスキーデジタル 2000年01月24日 00時00分更新
日本オリベッティ、社名を“ジェトロニクス・オリベッティ”に変更
https://ascii.jp/elem/000/000/307/307266/index.html
オリベッティとは - コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%99%E3%83%83%E3%83%86%E3%82%A3-41476
さらに、2007年にNTTデータが同社を子会社化したため、社名をエヌ・ティ・ティ・データ・ジェトロニクスと改めた。
文化広報誌『SPAZIO』は現在も刊行中だそうで、編集長は創刊から現在まで同一人物とのことですが、検索すると同名の別人しか出ません。
https://www.nttdata-getronics.co.jp/csr/spazio/
かなぶんの企画展の告知を見た時から一冊は読んでおこうと思ったですが、関川夏央の著書で紹介されたのが、結局直接の契機となりました。
2018-06-01『 石ころだって役に立つ「本」と「物語」に関する記憶の「物語」』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180601/1527863600
2018-05-27『豪雨の前兆』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180527/1527438165
2014-10-28須賀敦子の世界展
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20141028/1414494081
二百ページちょっとの本で、一ページあたり四十字かける十五行の活字量ですので、さくっと読めました。
フローレンス、フィレンツェのトスカーナ方言は、ダンテの昔からもっとも正統で美しいイタリア語で、カ行とハ行を混同する訛りがある、というページ。次のページで、作者の夫や作者のホーム、ミラノのロンバルディア地方を「無骨」という単語で表現してます。
須賀敦子 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A0%88%E8%B3%80%E6%95%A6%E5%AD%90
あたまのほうはミラノの光景がたんたんと語られ、ロンドンよりも霧がヒドいとのことで、そんなもんかなと思いながら読み、作者は日本人ですがハズが当地人なので毎日ポレンタ*1を作り、頁7、南ではポレントーネというと、北イタリア人の蔑称である、なんて書いてます。どこかでローマが出てくるんだかどうなんだか、外国人がイタリア語を学ぶということで、旅人とかレナト・クーリ・スタジアムとかバカなクラブオーナーがサニーサイドアップ社長の本で描かれる*2ペルージャの記述になり、たった半年の滞在なのに、相当作者が身構えた「ナポリを見て死ね」になります。作者の教養の基盤がよく分かるのは、鷗外が訳したアンデルセンの『即興詩人』が良く出てくるところ。昔の、1ドル360円時代とか、外貨持ち出し制限の頃の旅行記でも、イタリアというのは、特に音楽関係でけっこう邦人が留学とかしてたみたいなのですが、失敗も多く(商社マン相手にえんこうをする邦人オバステりゅうがく哀歌みたいな本を読んだことあります)、作者のように、オーガイ読みもってイタリアというくらい根っこがどっしりせんとあかんねやろな、と思います。
- 作者: アンデルセン,森鴎外
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1991/01/24
- メディア: 単行本
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頁60、ルゲッタという野菜が出ますが、ルッコラなのかな。
ナポリのことを、ギリシャ語なのか何語なのかネアポリスと呼ぶ場面がありますが、中国語では"那不勒斯"ナブロスと呼んだりするので、漢人はシーラー希腊経由でナポリを認識したのかもしれません。いやまさか。私がなぜナポリの中国語名を知ってるかというと、マラドーナのいたクラブでもあるからです。ほかに漢語で知ってるイタリアの地名は、ローマ羅馬だけ。米蘭もあるか。
いずれにせよ作者はナポリでこんな緊張するくらいなので(誰でもすると思いますが)シチリアやサルディニアはむろん、カラブリアなんかも全然出ません。ほかの本で出るとよいなと。
頁37 プロシュッティ先生のパスコリ
キリスト教の慣習では、祭日は前日の夕方からはじまることになっている。二十数年まえまでは、大きな祝日の前日は断食をするのが掟だった。一番星が出たら断食日が終るので、貧しかった子供のころ、星が出るのを待ちわびた、と話してくれたのは南伊アブルッツォの山村で育った友人だった。断食の終りを告げ、祝日の到来を告げて、教会の鐘はわざを競って打ち鳴らされる。
作者とパートナーは鬼インテリですので、書店や出版社が主戦場で、カソリック左派とか、文革の影響が遠く及んだイタリアの学生運動なんかも語られます。頁100、エディット・ピアフの愛人だったと言われるムスタキという歌手と、そんな奴よりぜんぜんいいと勧められたレナード・コーエン(!)のレコードのくだりを読んで、ムスタキを動画サイトで聞きましたが、確かにレナード・コーエンは別格だから、比べたらかわいそう、くらいな感じでした。
ムスタキ Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A5%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%82%AD
また、戦後イタリアの片方の基盤である、パルチザンの系譜や、よく歌われる歌も登場します。もう片方の、国民がドゥーチェ(と愛人ペタッチ)*3の首を吊ったから温存されたとも言われる、黒シャツ党だった人々は登場しません。
頁113、文豪マンゾーニの次男エンリコの生涯を、ギンズブルクの著書に沿って追っていくくだり、「踊り場バラトイオ」のある建物、下層階級の人達が住む共同住宅、一階ごとに中庭をぐるっと囲むバルコニーがあって、家のドアは中庭に向かって開いていて、絶えず階の上下をまたいだ喧騒や、洗濯物、何をするでもなく手すりに手をついて何かを眺めている娘、で、だいじなポイントですが、トイレが各戸になく、ワンフロアーごとに共同のが一個づつ、ので、絵になるが住みたくない、と誰もが思っている、という箇所が、ぐっときました。以前に、ヤンマガのマンガ『ナニワ友アレ』で、マーボが、親と同居する公営住宅の、ホースで張るベビーバスにつかる場面を読んだ時を思い出しました。具体的に絵で描かれるということ。
頁154、ウンベルト・サバの写真について、オッペルと象にも見えると書いていて、宮沢賢治の童話以外オッペルと象は知らないのですが、検索してもやはりよく分かりませんでした。作者はこの詩人の故地トリエステに行きます。どこまでがユーゴで、どこからがイタリアなのか、そしてオーストリア帝国領だったのでかつては学校でドイツ語必修だったとか、のトリエステ。
随筆はヴェネツィアにも飛び、ジェノヴァを作者はジェノワと書きますが、そこは五十年代作者が貨物船で上陸した場所としてしか出ず、そして工業都市フィアットのトリノは出ないのですが、いずれ他の本で読めるのかもしれないな、と本を置きました。以上
*1:https://cookpad.com/recipe/4176366
*2: NAKATAビジネス (FOOTBALL Nippon Books)
*3:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%9A%E3%82%BF%E3%83%83%E3%83%81