世界の陰謀論を読み解く――ユダヤ・フリーメーソン・イルミナティ (講談社現代新書)
- 作者: 辻隆太朗
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2012/02/17
- メディア: 新書
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出てきた本。橋爪大三郎の本では、フリーメイソンは、非常に、
陰謀論やらトンデモ本が多い、とのことでしたが、本書が既に、
それについて分析してるんじゃないの? これ先行本?
と思ったので借りてみました。
2017-08-27
『フリーメイソン 秘密結社の社会学』 (小学館新書) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170827/1503844174
結論からいうと、本書は、おもに西洋ではびこる陰謀論をざっくばらんに切って、
ユダヤ、フリーメイソン、イルミナティ、アメリカのその他陰謀論、
陰謀論はなぜ成立し、なぜ人を引き付けるのか、について紹介した本で、
橋爪大三郎のはフリーメーソンに特化して、日本支部の協力を得て、
内部等(ロッジの見取り図など)を取材した上で書いている本です。
かなりコンセプトが違いました。もちろん橋爪大三郎もガイセツ的なことは、
書いてるんですが、例えば本書は、頁47で田中上奏文を挙げており、
これは、日本がねつ造される側に回った象徴的な素材ですので、
橋爪の本を読んだ時、まずこれ触れてほしかったなーと思ったものです。
田中メモランダムは、それくらい破壊力がある。
田中上奏文 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%B0%E4%B8%AD%E4%B8%8A%E5%A5%8F%E6%96%87
本書に登場する対日プロパガンダ映画の動画
"The Battle of China"("Why We Fight" シリーズ)フランク・キャプラ
https://www.youtube.com/watch?v=TIkrgOmsbVY
"Know Your Enemy : Japan"
https://www.youtube.com/watch?v=PvcE9D3mn0Q
頁61、ポグロムのくだりで、1903年4月キシネフのポグロムが、
帝政ロシア最大級のポグロムで、イスラエル初代首相ダビッド・ベングリオンが、
シオニストになったきっかけの事件、とあり、キシネフというのはモルドバの首都の、
キシニョフのことかと思い、検索したらそうでした。
Wikipediaでは、ルーマニア語読みのキシナウ、という表記を優先させてます。
キシナウ Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%8A%E3%82%A6
モルドバ自体はざまの場所です。
頁92 フリーメーソン「知識人の社交サークル」
とくに近年は会員の減少と高齢化が深刻になっており、その衰退に歯止めをかけるためにも伝統的ありかたは変わってきているようだ。アメリカではテレビCMやフェイスブックで会員を募集したり、娯楽性の高い「集団儀礼」で若い会員を獲得しようといった試みもなされている。
だそうです。作者の立ち位置がよく分かる記述は下記。
頁190
もっとも幾人かの陰謀論者は、原典を読んだうえで自己の主張に沿うよう意図的に曲解したのかもしれない。そのようにして、この主張が生みだされたと考えることはできるだろう。仮に意図的な曲解ですらなく、読んだうえで陰謀論の主張どおりのことが書かれているとしか理解できなかったのであれば、知性の敗北と言わざるをえない。
頁220で、アメリカの陰謀論最前線で、逆にアラブ側のフェイクニュースも、
紹介されています。9.11当日WTCビルの勤務者4,000人の中に、
ユダヤ人ゼロというのがそれで、
9.11が実はブッシュ政権の自作自演である、
というアラブの一部の陰謀論的主張につながります。
実際には、少なくとも10人のイスラエル人犠牲者、
全体で百人以上ユダヤ人が犠牲に、なってるそうです。
で、陰謀論を完全に排除出来ないこの世界の、事実は小説より奇なり的事例として、
頁283以下に、下記二例が紹介されていました。
Tuskegee syphilis experiment Wikipedia
https://en.wikipedia.org/wiki/Tuskegee_syphilis_experiment
イラン・コントラ事件 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%A9%E4%BA%8B%E4%BB%B6
後者に関して、私もこないだこの日記で、アメリカから、
武器の供給が受けられないイランに、ベトナムが、
ベトナム戦争で米軍が残した武器弾薬を、北朝鮮経由で、
売っていたと書きまして、その時はイランコントラ知りませんでした。
フツーにイランはアメリカから武器買えてたんですね。
北朝鮮経由でベトナムから武器買ったとして、
それは、戦争の命運を左右するほどの量だったのかどうか。
そして、バース党のイラクは、いいツラの皮だったな、と。
作者は、1978年生まれで、本書執筆当時まだ院の博士課程後期在学中で、
いま検索すると、もうそこは単位取得退学になってました。
その後は書いてないので知りません。
院生で既に著書を何冊か出してるわけで、優秀な人材なんだなと思う反面、
今回併読したフリーメーソン関連の本の他の作者が、前世紀に、
医大の哲学科に職を求めて得ることが出来たり、大企業を勤め上げる傍ら、
趣味で本を書けるほど知の渉猟を続けられたりしたのに比べると、
困難な時代、ネットで知が集約され、随時引き出せる状況で、
どう個人としての積み上げに貨幣的価値を持たせられるか大変困難、
チビシーと思いました。著者に光あれ。下記のリツイートのなかに、
筆者がいます。
1882年にアメリカで出版された『A Photographic Trip Around the World』に掲載された葬儀の際のイタリアの僧侶。 pic.twitter.com/V2DzAEpPyh
— 民族衣装bot (@Minzokubot) 2017年3月26日
以上