『フリーメイソン 秘密結社の社会学』 (小学館新書) 読了

ビッグコミックオリジナル2017 9.5号(No.1299 17 2017年8月19日発売)の、
コラムで橋爪大三郎が紹介してた本。自書を当該出版社の雑誌で、
紹介してるわけなので、臆面もないパブ記事以外の何物でもないのですが、
なぜ日本人はフリーメーソン陰謀論を受け容れるのか?
それは日本人がフリーメーソンを知らないからぢゃ、ならば、という、
必死に陰謀論と闘おうとする筆者の姿勢に心打たれた、ということもなく、
買いました。どこの図書館にもまだ配備されてないかったので。

フリーメイソンというと、上条淳士の最初の連載、雁屋哲が原作書いた、
『ZINGY』で、悪役が、フリーメイスンから別れた、B・メイスンという団体で、
(BはブラックのB)それで、自民党にコンパスガーとか、少し調べた、
想い出があります。なつかしい。

鈴木英人のインスパイアというか、▨とか斜め線が走る風景のコマを覚えています。
で、なぜ日本人がフリーメーソンを知らないかというと、
フリーめイソン側の口承伝承がソースなのかな? なのでちょっと苦しいですが、
頁251、明治の治外法権撤廃の際に、在日FM代表と外務大臣が交渉して、
集会への不干渉、監視、取り締まり対象から外すことを約束させ、
その代り、日本人の入会と日本人への情宣自粛を吞んだから、
という説明です。それまでに既に西周などが入会してたそうですが、
その事実も1978年まで公に知られていなかったそうです。
で、以後、断絶、空白地域となる。まー日本人はカラードのオリエンタルですから、
フリーメイスンに大量加入して組織内黄禍論が出ても困るし、
なんとなく上記も、白人倶楽部と日本人がセパレートだった後付け理由のような、
気がしないでもないです。
で、FM陰謀論を振りまいたのは、主にナチスなのですが、
アメリカが悪いんじゃない、FMとユダヤ人が悪いんだ)
それを受け容れて、ナチス同様日本も1941年すべての国内集会施設を閉鎖。
戦後再開して、日本人の入会も認められるようになっても、
啓蒙はさほどされていなかったので、現在に至る、そうです。

で、FMを理解するためには、「理神論」を理解する必要があるそうです。

理神論 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%90%86%E7%A5%9E%E8%AB%96

理神論の反語である汎神論なら、クーデンホーフ光子の息子が唱えたし、
神は細部に宿るという日本人の発想にもマッチするので、

分からんでもないのですが、理神論はそれに対し、神の不在、
斯くも永き神の不在を唱え、ビッグバンとかでよく例える、
宇宙がタマゴなら、神さまはそのタマゴの殻の外にいます、みたいな。
無神論は、神さまいないでおk、ですが、理神論は、いるけど、外です、
中にはいません、という思想。いるいないでいえば、いる。
不可知論は、いるかいないか分からないから、感知出来ないから、考えない。

で、理神論の考え方だと、聖書の記述と自然科学の法則が一致しない場合、
でもその自然は神さまが作ったんだから、聖書と合ってなくでも、いいんだよ、
地球が太陽の周りを回ってても、人類が猿から進化しても、神さまがそのように、
お作りになったんだから、いいんだよ、グリーンだよ(古い)ということらしくて、
(神の主権、sovereigntyというらしいです。一瞬ソブラエティかと思った。違った)
で、フリーメイスンというのは、そうやって、教会から距離を置きつつ、
知的に成長したい市民の憩いの場として、発展してきたんだそうです。
石工のギルドが、石工というのは古代からある職業ですから、キリスト以前、
ソロモンの神殿を作ったのも石工ですので、ソロモンの神殿の再建を、
遠い未来の目標にすれば、教会とは別のオルタナなバックボーンありで、
知的市民であれば具体的に石工でなくても可、というふうに発展してきたとか。

で、顔見知りの範囲を越えた組織として、旅人メンバーの互助機能を持つため、
仲間であることを証明する符丁が発展し、それはやくざの切る仁義とか、
中国の幇が、劉を卯金の刀と言ってみたり、お茶のフタを傾けて三滴水滴を、

みたいなルールと似ているわけですが、東洋的な組織は、いったん出来ると、
組織の存続自体が目的となるので、目的のために組織があって、常に離合集散する、
欧米のアソシエーションのひとつであるFMと、幇は、やはり違う、
としています。頁285。そこの例として、中国共産党は、共産主義社会の実現が、
不可能と明白になった今も、拝金組織として、不断に発展し続けている、
ソビエト共産党は、㍉と分かった時点で、とっとと組織崩してオワタ。
という語りが面白かったです。なるほどなー、月は無慈悲な夜の女王

で、メイスんは石工の意味で、フリーは、職人階級でありながら、
市民と同等の権利を獲得した、フリーマンを指すとのことです。頁43

人はみな泣きながら生まれてきたんだよ、みたいな。

1ドル札の、ピラミッドの目は、FMの専売特許でもなく、
キリスト教ではわりとフツーの記号だそうです。頁91。
詩篇33章18節などに基づいてるとか。

頁122、以前は、FM会員は、いちおう、キリスト教徒しばりがあって、
(基督教と耶蘇教、天主教の違いを越えて友愛を模索する組織)
しかし今はユダヤ教イスラム教も仏教もおkだそうです。

ワシントンもマッカーサーもFMということで、モーツァルトには、
本書は触れてません。というか、西周に驚いたので、白人には、
さほど。歴代大統領見ると、タフトやハーディングも、
フリーメイソンリーなんですもの。頁117。
たいしたことない、小物も混じってるやん。

頁173、FMのテンプル騎士団は、モノホンのテンプル騎士団とは無縁の、
なんちゃってテンプル騎士団、平家おちうど伝説の村みたいなもん、
という説明もよかったです。

FMは基本的に男性だけの社交クラブで、それも、夫婦単位でホームパーティとか、
夫婦揃って日曜教会に行くアメリカ文化と、相容れないものがあり、
だから発展したのでは、という見方があるそうです。頁210。
で、神父や牧師は男性なので、女性信者はよく説教聞くが、
その旦那は往々にして反発しがち、なんだそうで。
そこにもFMの存在理由があったと。雀荘みたいなものか。

頁259、当然FMには反FM一派もいて、19世紀半ばには、
深刻な誘拐行方不明事件が発生し、その個所で面白いのが、
FMは当初から集会場所(ロッジと云う)が酒場であることが多く、
事件まで酔っぱらいが多目に見られていたのが、以後、
飲酒厳禁になったことです。禁酒法の時代より前、
ワシントニアンの時代だったかは、調べてません。
アメリカには、ほかにもオッドフェローとか、
似たようなアソシエーションが多く活動してるそうですが、
節酒とか断酒路線の団体が多いそうで、それはなんというか、
そういう組織が何と似てるかという点で、ちょっとニヨニヨしました。

本書はFAQ形式で進んでいくのですが、私が、加えて聞きたいと思ったのは、下記。

ロータリークラブライオンズクラブは、フリーメイソンですか。
クー・クラックス・クランは、フリーメイソンですか。
(黒人の支部は本書頁240に明記)
フリーメーソン民主党支持共和党支持どっちですか。
(ロッジ単位で別れてるんじゃいかと推測)
・不可知論者はフリーメイソンですか。

あと、中表紙裏に、本書の英文タイトルがあるのですが、
副題が省略されてるのが不思議です。
陰謀論でいうと、わたしもよく、このブログで、
イルミナティのしわざでしょうか」とか書くのですが、
井上日召の一人一殺でしょうか」とか、
朝鮮人のしわざでしょうか」とか書くより、
気が楽だから書いてるだけです。頁193、澁澤龍彦は、
イルミナティを、バヴァリア幻想教団と訳してたそうで。

下記アマゾンで出てきたフリーメイスン列記。

イラスト図解 フリーメイソン

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フリーメイソンの秘密

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フリーメイソンの歴史と思想: 「陰謀論」批判の本格的研究

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666がやってくる 「闇勢力」イルミナティ・フリーメイソン

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ユダヤ人とフリーメーソン

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テンプル騎士団とフリーメーソン―アメリカ建国に到る西欧秘儀結社の知られざる系譜

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フリーメイソン=ユニテリアン教会が明治日本を動かした

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↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 
本書でホメ殺しされてる本。参考文献一覧に有。↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ ↑ 
頁103で、独立宣言書調印者に占めるメーソンリーの割合について、
上記の記載は根拠が分からないとしてますが、参考文献一覧に有。
フリーメイソン (講談社現代新書)

フリーメイソン (講談社現代新書)

↑ ↑ ↑ ↑ 
参考文献一覧に有。
「啓蒙の世紀」のフリーメイソン (YAMAKAWA LECTURES)

「啓蒙の世紀」のフリーメイソン (YAMAKAWA LECTURES)

フリーメーソン (文庫クセジュ)

フリーメーソン (文庫クセジュ)

本書執筆を、サピオが後押ししたというのも複雑怪奇かと。
サピオって、陰謀論好きそうなイメージなのですが、
陰謀論排除しようZE!みたいなノリなのでしょうか。
以上

【後報】
クーデンホーフ光子の息子は、汎神論でなく、汎ヨーロッパ論でした。
ぜんぜんちゃうやん。
(2017/8/29)

【後報】
結局、ほかのフリーメーソン本も読もうということで、下記四冊読みました。

2017-09-06『図説 フリーメイソン』 (ふくろうの本/世界の文化) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170906/1504712450
2017-09-10『フリーメイスンモーツァルト』 (講談社現代新書) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170910/1505060960
2017-09-12『フリーメイソンリー その思想、人物、歴史』(中公新書)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170912/1505222393
2017-09-13『世界の陰謀論を読み解く――ユダヤフリーメーソンイルミナティ』 (講談社現代新書) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170913/1505260985
(2017/9/13)