- 作者: 吉村正和
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2010/08/07
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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世の中には、FMに対し秘密結社だ陰謀だの暴露本が多い、
とあり、惑わされずにうんぬんとのことでした。そうかな、
トンデモ本以外にも、普通にフリーメイソンを紹介した本も、
また多いのではないか(それでも橋爪大三郎の切り口は新鮮で効果的)
と考え、図書館から少し借りた本の一冊。著者は、橋爪参考文献の、
講談社現代新書と人文書院の本を書いており、本書もその延長、
図版が多いのでそこはいいで賞、と思われまして、著者の、
テイストやベクトルを知りたいので読みました。読んでみて、
改めて橋爪の切り口の新鮮さに驚いた次第です。比較するとよく分かる。
従来のフリーメイソン本は、中世の石工ギルド発祥に捉われすぎて、
欧州での発展形成にページを割き過ぎていると感じました。
読者の欲求や編集の先読みもあるのでしょうが、薔薇十字団とか、
カリオストロ伯爵とか、いろいろ記述せんければならず、
橋爪のように、アメリカにフォーカスし、理神論を出し、
神秘主義とかは要するにグレコローマンとそれ以前のエジプトとか、
バビロニアとかメソポタミアへの憧れ、教会主導社会下で、
そうした聖書以外のオルタナな文明でバランスを取る世俗的努力、
という視座が出てくるスキマがないんだと思いました。
頁49に、1789年フリーメイソンが禁止されていたイタリア、
という記述がありますが、当時はまだ、都市国家乱立のブーツ半島に、
南北統一国家はなかったはずなので、イタリーと言い切っていいのか、
と思ったり、頁59に、ザラストロという単語がぱっと出て来て、
ドイツ語読みのツァラトゥストラでニーチェのアレか、
英語でいうと
と、高校で世界史必修の世代なら分かるだろうけれど、
それ以前とそれ以後だと、日本史とったら分からない気がしました。
あとは頁112、シンガポールを作ったラッフルズがフリーメイソン会員で、
シンガポールにロッジを作ったという小ネタがよかったです。
同じページに、インド人がインドの英国フリーメイソンロッジに、
入会を断られるくだりがあり、フリーメイソン会員のキップリングに触れ、
フーンと思いました。橋爪本だと21世紀の開かれたFM状況まで出ます。
さらには日本のフリーメイソンに日本人が入会できなかった点が、
書かれてますが、これも橋爪本は、FM側の視点で、おそらくは、
FM内部の口伝、伝承に基づいた説明がなされています。
そんな本です。図版が多いので好きな人、必要な人にはよいかと。以上
2017-08-27
『フリーメイソン 秘密結社の社会学』 (小学館新書) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170827/1503844174