『今宵、バーで謎解きを』 (カッパ・ノベルス) 読了

今宵、バーで謎解きを (光文社文庫)

今宵、バーで謎解きを (光文社文庫)

今宵、バーで謎解きを (カッパ・ノベルス)

今宵、バーで謎解きを (カッパ・ノベルス)

作者の『歴史はバーで作られる』を読んだ時*1、この人は、
ほかにバー・ミステリー・シリーズがあることに気づいたので、
三冊くらいあるそうですが、タイトルにズバリ入っているこれだけ読みました。
余計な話ですが、題に酒場とか居酒屋とかバーとかスナックとかあったほうが、
食指が動く人が微増する気がします。自分はまだ大丈夫だ普通に吞めていると、
思う人が
「そうだよな〜酒ってやっぱいいもんだよな〜」と思うために読む。

裏表紙
桜川東子、縦横無尽の酩酊推理、みたび。ギリシャ神話の新解釈で、難事件をあざやかに読み替える!

そう上にあるのですが、実際にはまったく酩酊しません。だいじょうぶ。
バーのマスターが自分でのんじゃう人で、すぐトンチンカンになりますが、
それとて、乱飲乱酔というわけではないです。

カバー折り返し
著者のことば
 お酒の飲めないかたも大歓迎です。

赤字は原文ママ

カバー、目次・章扉デザイン:泉沢光雄
カバー、本文イラスト:佐久間真人
カバー印刷:近代美術
季刊「ジャーロ」という雑誌に2008春〜2009秋まで連載との由。
カッパノベルズなので解説はありません。
巻末に、昭和三四年一二月二五日付けの、カッパノベルズ誕生のことば、
があるのですが、さすがに架空戦記で日本大勝利も下火だろうし、
(日米同盟の時代だから大逆転シリーズ書きにくい?)
現在まだノベルズなんか出てるのかと検索したら、
ユーモアミステリーは偉大なりで、十津川(階位不明)も三毛猫ホームズも、
まだ出ていて、ちょっと感動しました。すごいなーと。

版元公式
http://www.kobunsha.com/shelf/book/series?seriesid=201002
カッパ・ノベルズ Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%83%E3%83%91%E3%83%BB%E3%83%8E%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%B9

で、このシリーズですが、前の巻は日本酒をワイングラスで出していた、
という文章があり、しかしこの本は、全部ワインです。
各話、まずワイン薀蓄があり、次に初出時四十代、おそらくで前冊で厄年、
現在2017年は五十代以上ではないかと思われる、男性トリオの、
小学校時代のあるある話雑談があり、
(頁16で脱脂粉乳が小学二年で牛乳に切り替わったとあるので、相当限定される)
そのあと、ギリシャ神話を応用した、安楽椅子探偵謎解きになります。
同じ型で七話書いて、俺よく頑張った、で賞、投了、みたいな。

ギリシャ神話は、前巻からの引き続きなのか分かりませんが、
小峰元へのオマージュかなあ、くらいに読みました。

小峰元 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E5%B3%B0%E5%85%83

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)

アルキメデスは手を汚さない (講談社文庫)

<各話ダンドリ>
①ワイン②チーズ③小学校あるある④推理(割愛)

第一話 ①赤ワイン②カマンベール③給食 
第二話 ①イタリアワイン②ゴルゴンゾーラ 
    ③ハンカチブラジャー、スーパーボール 
第三話 ①ワイン分類法(デザートワイン、スティルワイン、スパークリング、
           フォーティファイド、フレーヴァー)
    ②モッツァレラ(フレッシュチーズ)③駄菓子屋 

第四話 ①ワインの起源②ウォッシュタイプチーズ③遠足運動会ベルマーク
第五話 ①ボジョレー・ヌーヴォー②ヤギのチーズ③学研の科学と学習

頁146
「だからナンバー2にまで上り詰めたんでしょう」
「ナンバー2といいますと?」
「二番目のナンバーということです」

第六話 ①スパークリングワイン②ゴーダチーズ③

頁167
「家だとパンは作るんだけどね。そうだ。山ちゃんはパンつくったことある?」
「ありますよ」
「へえ。パンツ食ったことあるんだ」
 僕は思わずキュベ・ヨシコを噴きだしそうになった。
「逆にマスターに訊きますけど、ねえ、ちゃんと風呂入ってる?」
「入ってるよ」
「へえ。姉ちゃんと風呂入ってるんだ」
 とてもいい歳をした大人の会話とは思えない。
「本当に山ちゃんはバカだな」
「バカって言った方がバカですよ」
「あ、バカって言った方がバカって言った方がバカだよ」
「いいえ。バカって言った方がバカって言った方がバカって言った方がバカです」
「バカって言った方が」
 もういいよ。
「みっちゃん道々ってのもあったなあ」
「それで思い出したけど、青年が何かを決意したときに言う“うん、この道を行こう”ってのもあった」
 どうやったら話題を変えられるだろうか。
「あ」
 マスターが壁を指さした。山内がサッと指さされた方を見る。
「いうえお」
「ハチ」
 山内が言うとマスターが蜂を避けるように首を竦めた。
「9、10」
「カキ」
 マスターが皿を出しながら言う。柿が載っているのかと思ったら何も載っていない。
「くけこ」
「百円あげる」
「ちょうだい」
 ネタが判っているのに山内がマスターの戯れ言につきあう。
「はい、あげた」
 予定通り、マスターがポケットから百円玉を取りだして上に持ち上げた。新聞紙の上に乗って“俺、新聞にのったことあるよ”っていうやつもいたっけ。
「マンダムはがい出?」
「既出きしゅつです」
 顎に何かついてるよ、と話しかけ、友だちが顎に手をやったらすかさず“マンダム”という。チャールズ・ブロンソンが出ていたマンダムのコマーシャルから出た遊び。マンダムが大ヒットしたから社名まで変更した。しかしこの話題は過去にすでに出している。
「言葉を使った遊びを子どもの頃はよくやったんだな」
「そうですね。改めて思いますね」
「なぞなぞとか」
「パンはパンでも食べられないパンは?」
「フライパン」
「切っても切っても切れないものは?」
「水だっけ?」
「トランプです」
「太郎君が風邪を引きました。病院へ行く途中、牛がモウと鳴きました。しばらく歩くとチョウチョウが飛んできました。さて太郎君が罹った病気は何でしょう?」
「風邪」
 牛のモウと蝶々のチョウでモウチョウとミスリードさせるナゾナゾ。
「上は洪水、下は大火事、なあんだ?」
「風呂」
 今では下で薪を焚く風呂など滅多にお目にかかれない。
「ノッポとチビが追いかけっこしているもの何だ?」
「時計」
「この色、何色?」
 マスターが両手で見えない糸を引っ張る仕草をした。
「透明?」
 山内が初めて間違えた。
「残念でした。むらさきです。紫は漢字で此の糸って書くだろ」
「なるほど」
「どんな大泥棒でも年に一つしか取れないものは何だ?」
「歳ですね」
「そうなんだよね。そういえばもうすぐ女房の誕生日だ」
「忘れるとえらいことになりますよ」
「判ってるって」
「ナゾナゾ以外だと、悪口で“バーカ、カーバ”ってのは定番でした」
「その英語バージョンで“フール、ルーフ、ちんどんショップ、ユーア マーザ アップべそ”ってのも生まれた」
 ブロークンにも程がある。
「その日は朝から夜だったって文章が流行ったことがあった」
「何ですか、それ」
「その日は朝から夜だった。生まれたばかりの爺さんが、錆びたナイフをギラギラと、前へ前へとバックした。それを見ていた盲人が、腰を抜かして立っていた」
「我々の親の世代で“馬から落ちて落馬して”っていう畳語を重ねた文章が流行ったことがあったらしいけど、その類ですね」

まだ続きますが、割愛。
第七話 ①ロマネコンティ②チェダーチーズ③香具師

一話と六話と七話が睡眠薬使用なので、ちょっと多いかなと思いました。
以上