『短劇』読了

短劇 (光文社文庫)

短劇 (光文社文庫)

短劇

短劇

読んだのは単行本。"Short acts"という英題が表紙に有り〼。
装幀 石川絢士(the GARDEN)あとがき有り。
あとがきに、タイトル名付け親と担当編集への謝辞。
初出は「本が好き!」2006年7月創刊号〜2008年8月号
https://kotobank.jp/word/%E6%9C%AC%E3%81%8C%E5%A5%BD%E3%81%8D%21-1747181
(2009年に休刊とのことですが、書誌情報をまとめたサイトがなくて残念)
これまでの坂木司作品とはいっぷう変わった作品集とのことで、
読みました。あとがきでは、当初「いい話」連載だったはずが、
どんどんブラックになっていって、それを担当が許容してくれた、
みたいに書いてありましたが、そうなのかなーと思いました。

最後のほうは流石に何が何やらホンジャマカみたいな話が出ますが、
基本的に、因果応報というか、勧善懲悪というか、
陰惨な話は陰惨な性格の主人公が自ら招いた結果であって、
美人薄命とか悪い奴ほどよく眠るとかそういう、美徳の不幸とか、
デカダンのひとことで説明つけてオワコンみたいなことはないです。
「最後」は、須賀田さんのローレンス・ブロックの短編で、
よく読むような、アメリカ人が好きそうな、というか、
アメリカの編集者が買いそうな噺かと思いましたが、帳尻つけるし。
「目撃者」も「恐いのは」も「ゴミ掃除」もそうなるので。

むしろ、気になったのは、「迷子」で、
道に迷うものは好意を抱かれやすいというところで、他者を警戒するか、
信頼を寄せるにはどうすればいいか、という応答があって、
作者がかつてこじらせていたなにものかが顔を覗かせている、
と思った箇所くらい。あとは、まー善人なら、さほどヒドい目には、
あうまいよ、物欲とかで目を曇らされると善人でもアレですじゃが。
みたいな感じで、宗教ではないんでしょうが、宗教なんですかね。いやでも。

全然関係ないと思うのですが、(新興)宗教に在家から出家した、
DJふみカスの人が最後の映画について「食人鬼の役やるなんて耐えられない」
と語っていたというニュース読んで、なにその高度な倫理観、
と思ったのを思い出しました。それを実践…いやいや、それとは違うのでしょうが、
或る程度短編集で自分が決めたルールをやり遂げるのはすごいですよ。
それはある意味敬服します。

<目次>
カフェテラスの甘い日
目撃者
雨やどり
幸福な密室
MM
迷子
ケーキ登場
ほどけないにもほどがある
最後
しつこい油
最後の別れ
恐いのは
変わった趣味
穴を掘る
最先端
肉を拾う
ゴミ掃除
物件案内

試写会
ビル業務
並列歩行
カミサマ
秘祭
眠り姫
いて
あとがき

「試写会」は、またまた諸星大二郎『復讐クラブ』想起しました。
「穴を掘る」は、鉄塔のスタンド。
「目撃者」「MM」「ビル業務」「カミサマ」「秘祭」「いて」がよかったです。
以上