『父・金正日と私 金正男独占告白』読了

父・金正日と私 金正男独占告白 (文春文庫)

父・金正日と私 金正男独占告白 (文春文庫)

読んだのは単行本のほう。
2012年1月20日初版。2012年2月10日四刷。
表紙写真撮影 五味洋治
装幀 石崎健太郎

これも、ボーツー先生と福田和也の文壇アウトロー時事放談で、
読んでみようと思った本。

2018-03-09
『不謹慎 酒気帯び時評50選』THE HOTTEST TABLE TALK SERIES:2010-2012 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180309/1520601711

頁299
福田 前も言ったけど、正男を囲ってる中国が、正恩がコケたら正男を投入する、北朝鮮の改革開放をやらせる――という可能性は、今でも50%くらいあるんじゃないかな。つまり、正男が北朝鮮トップになるという線は消えてない。本にも出てくるけど、正男の言い分は「北朝鮮も改革開放をやらなきゃいけない」で、完全に中国路線でしょ。

頁300
坪内 あと本に書いてあって面白かったのは、カダフィが核を手放した途端、アメリカにとってリビアは脅威ではなくなって、一気に潰されちゃった、と。核を手放せば経済封鎖をやめる、というアメリカの策略に乗って失敗した、と北朝鮮指導部は見てるのね。

五味洋治 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%94%E5%91%B3%E6%B4%8B%E6%B2%BB
Yahoo!知恵袋 2017/2/2823:11:46
五味洋治 ごみようじ 記者について。
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q10171130835?__ysp=5LqU5ZGz5rSL5rK744Gu44Gb44GE

まあ、対象者がホントに暗殺されたわけですから、
寝ざめは悪かったろうと思うのですが、どうでしょう。

頁34、金正男が出没する北京の各スポットを書いていて、
テレビにも出た日本人理容師の店は名前出してませんが、
崑崙飯店を、中国公安部が経営しているとされる五つ星ホテル、
と書いていて、まず読者はここで、中国では公安も八路軍も、
さまざまな企業活動を営むコングロマリットである、
という事実を、注釈なしに受け入れないと、
この本についてけないのでは、という思いに駆られます。

頁38の丸金ホテルは知りませんでした。でもこの場所なのか。
今でもビル名にその名が残っているので、大和駅の地図拡大して、
どなたかがあげられたインスタ画像と照合すれば、場所は分かります。
大和市といえば、本田靖春『私の中の韓国人』*1で、
福岡安則の著書で知った、民団とも総聯とも距離を置く、
帰化して日本国籍を取った韓系日本人の結婚紹介所等コミュニティー
その本部のあるまちとして登場したので、のけぞった覚えがあります。
それを読んだ時はもう、大山倍達の評伝で、日本は二重国籍禁じてるが、
違反してもまったく罰則ないので(公的な地位の人の二重国籍の場合、
社会的なバッシングがあることは、蓮舫で証明済みですが、法的な罰則はない)
日本籍とっても韓国あるいは北朝鮮籍ぬかない、という民団の人の談話、
読んだあとでした。その大和にマサオくんが来ていたとは。

頁124、中華圏に暮らしてるのに中国語は料理を頼む程度、
英仏露語に堪能なのに、日本語も中国語と同じくらい、
という記述が、納得できるようなできないような…
ただ、彼の言う「白頭の血統」は、ほんとにヤンバン、
両班の伝統とは無縁なんだなと思います。漢学の素養の有無の点で。
だいたい子が親の一文字を継承するという点が、
コリアの族譜の伝統とは違う。同じ代で同じ一文字が伝統。
親の一文字引き継ぐ「白頭の血統」は、まるで源氏だ。
為義、義朝、頼朝。平家はぜんぶもりもり盛で、また別。

頁152、正男は父が、普通の日、ハレに対するケの日に、
酒を吞むのを見たことがないとのこと。これは世間に流布されてる、
正日は酒で体調悪化、無類の酒好きという報道と異なるとか。
正男自身は父譲りの酒好き?で痛風持ちだとか。頁157。

頁153、正男のハングルは英語からの外来語が多く、
北の人間と言うより南っぽい、の指摘に関しては、
海外暮らしが長いから、と本人答えてます。あれかな、
韓国では、ノートはそのままノトゥとか云うそうですが、
北では、中国語の"筆記本"をハングル読みして、
ビョルジブンと読むとか、そういうことかと。

頁忘れましたが、北朝鮮のことを「北韓」と読んで、
それで影武者説とかまた湧いたとか。どうせなら、
「北傀」と書いてプッケと読めばいいけど。小さなバイキング、プッケ。

そんな本でした。こういう本はサクサク読めます。以上