『《沙嘴の(之)花》』"The Flower of Shazui" by Stanley Chan 陳楸帆『折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー』"INVISIBLE PLANETS Contemporary Chinese Science Fiction in Translation" ケン・リウ=編 Edited by Ken Liu (Liu Yukun / 刘宇昆)(ハヤカワ文庫)

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

中原尚哉訳 2012年に、シャオシュウパイバオガオ、《少数派報告》というところに発表されたそうで、電子版の媒体みたいな感じです。同年、インターゾーンというところに英訳掲載。

最初、題名がホウシャオシエン映画"Flowers of Shanghai"のパロディかと思いました。中国を代表する上海方言、広東方言乱れ打ちの侯孝贤映画に対し、広東に浮かぶ普通話の小島、深圳を置いて対比したのかと。

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Flowers of Shanghai - Wikipedia

この小説だとなんだか深圳が二重構造になっていて、深圳の中に広東語世界と普通話世界があるようにも読めましたが、どっちがどっちか、読んだ後模糊としてよく分かりません。ディアオ・イーナン監督は「鵞鳥湖の夜」で、武漢を舞台に、再開発で都市化した周辺の中に取り残された農村をちょっとだけ出しましたが、それの深圳版と、プラス《鬼城》、建てたはいいけど誰も人が棲まないベッドタウン、開発失敗地帯を重ね合わせてなんとやらで、結果チョンキンマンションみたいのが深圳にも出来ますたと言いたい感じ。たぶん。

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中国嫁日記』でジンサンサンの嫁になるゲツサンも、中国東北遼寧省なのに深圳にいたわけなので、まあそういうことです。この小説にも満族の巫女が出ます。深圳はデラシネの街なんですかね。セブンイヤーズインチベットで裏切り者としてボロカスに描かれたアベイ・アワン・ジグメーも、公式の報道ではそう書いてないかったのですが、うわさでは晩年深圳にいたとか。私は深圳は素通りしただけで、黒人いっぱいそのへんに屯ってるな~という印象をその時抱きました。私の中国はひと時代前で止まっているので、百均の聖地义乌なんかは行ったことがなくて、中国のなかのアラブ、中国のなかのアッフリカというテーマで各都市比較が出来ません。

この小説に話を戻すと、本音と建前であっても、中国SFで娼婦の話を書いたら、広がらないかなあと思う通り、ネタバレですが、最後はおまわりさんに捕まってパトカーの中で終わるという教訓的なオチでした。それ以外検閲通りませんみたいな。

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国家権力を批判してはイケナイというしばりがあって、そこでハエのように両手をスリスリしてる自己規制箇所が目についてしまうのが、近年中国映画を数本観ての感想です。文字通り《难看透顶》で、この話も、そんな美女の娼婦がいるわけないとか、女衒の造詣がちょっと、とかの話でおだやかに収めたいのですが、最後のパトカーいらないよと、やはり言いたいです。

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タンレンジエタンアンシリーズのように、母国以外の警察にすれば、なんぼでもコケに出来るのですが、たぶんそれだとリアルさがなくなるんでしょう。じゃあパトカーで終わるのがリアルなのかと言われると略