『リマ・トゥジュ・リマ・トゥジュ・トゥジュ』"Lima, Tujuh, Lima, Tujuh, Tujuh. " by Komatsu Ayako こまつあやこ 読了

内山書店のアジア書籍コーナーで見て、逡巡して、けっきょく図書館で借りた本(恐縮です)内山書店では九刷(!)でしたが、図書館本は初刷。

cocreco.kodansha.co.jp

www.qzemi.com

装画ー茂苅恵 装丁ー岡本歌織(next door design)本文データー講談社デジタル製作

パヒュームもしくはパフュームみたいな表紙だと思いました。冒頭のっけからナシレマッの話が出ますので、マレー文化に関係ありそうと思いつつ、この表紙を見ると華人な感じも。

で、マレー語、バハサ・インドネシア語は繰り返しの言葉が多く、ジャラン・ジャランやバイクバイク・サジャは私も知ってますので、表紙のことばはなんか現地のことわざか何かだろうと思ってましたら、短歌の五七五七七をマレー語で表しただけでした。

なぜ私が気づかなかったかというと、私がマレー語の数字を三までしか数えられないから。

私が、私の知っている数字を書き出してみたのが下記。

  1. ヌーン、ソーン、サーム、シー、カー、ホック、チェット、ペット、カーウ、スィップ(10まで:タイ語
  2. ビル、イッキ、ユチ、トッティ、ベシ、アルッティ、イエッティ、セックズ、トックズ、オン(10まで:ウイグル語、トルコ語
  3. モック、ハイ、バー(3まで:ベトナム語
  4. エーク、ドゥー、ティーン(セー)、チャハル、パーンジ(5まで:ウルドゥー語ペルシャ語(細かい異同は忘れた)
  5. サットゥ、ドゥア、ティガ(3まで:インドネシア語、マレー語
  6. ハナ、トゥル、セ(3まで:ハングル①
  7. イル、イー、サム、サー(4まで:ハングル②
  8. ヤッ、キィ、サム、サー(4まで:広東語
  9. チク、ニ、スム(3まで:チベット語
  10. イー、アール、サン、スー、ウー、リュー、チー、バー、ジウ、シィ(10まで:北京官話
  11. アン・ドゥ・トグゥァハアッ(3まで:フランス語
  12. アイン・ツヴァイ・ドライ(3まで:ドイツ語
  13. ウノ(1まで:スペイン語
  14. ウノ(1まで:ポルトガル語(たぶん)
  15. ウノ(1まで:イタリア語
  16. ワン・ツー・スリー・フォー・ファイブ・シックス・セブン・エイト・ナイン・テン(10まで:英語
  17. エノ・オウト(2まで:コックニー

ロシア語は忘れました。昨日スワヒリ語で話しかけられましたが、スワヒリ語もジャンボとクマモトしか知りません。インドネシア語も、ドゥビラン、スンビランとか、スプルーとかリマラトゥスとか、断片的にほかの数字も出て来るのですが、連続して覚えてない。九九は二の段だけなら、八と七と六以外言えますよと言われて、それを言えると言えるでしょうか。

ので、私がこのタイトルを言い換える時、タイ語でカー・チェット・カー・チェット・チェットと言うか、ウイグル語でベシ・イエッティ・ベシ・イエッティ・イエッティと言うか、北京語でウー・チー・ウー・チー・チーと言うか、山東方言でウー・キー・ウー・キー・キーと言うか、ファイブ・セブン・ファイブ・セブン・セブンと言うかしか出来ないです。

図書館本の背表紙(部分)最近の図書館本は、シンプルです。913-リ-77とか、そういう分類記号がない。

で、本書は、引用文献に下記映画の原作が上がってるくらい、短歌の話で、さらにいうと、短歌にマレー語の単語を混ぜ込んで歌う主人公の話です。

「春原さんのうた」"Haruhara-san’s Recorder" 劇場鑑賞 - Stantsiya_Iriya

私は上の映画は、短歌好きの知人が激賞していたので、深谷シネマまで行って夜視ました。とてもいい時間でした。しかし、もうああいう時間はとれないでしょう。映画の聖地である聖蹟桜ヶ丘のシネマカフェにも行っていない。知人は短歌好きが嵩じて国書刊行会にまで転職し、クトゥルーや澁澤好きでもないのによくもまあと、半分心配、半分感心しています。宣伝小冊子も送ってくれた。

巻末にもう一冊、「参考文献」があって、『日本の中でイスラム教を信じる』佐藤兼永(文春)です。

本書は父親の再婚相手がマレー人だったので改宗ムスリムになる少年が、ハラル食しか食べられないことを級友に知られたくないと隠す場面があります。現実の世の中はどっちかというと、形式的なムスリムとして、豚肉もふつうに食べて、ラマダンも健康によくないので厳密には守らない、という「なんちゃってムスリム」になる邦人のほうが多いと思うので(私の周囲を見ても)この子の設定はふしぎでした。なんでそんな认真なん?という。父親が個人経営の店を畳んだ後、何をして食ってるあいだに再婚迄交際したのかとか、いろいろあわせてふしぎ。時計屋は宝飾店なども兼ねている場合が多いので、昨今はSNSで勧誘された強盗団などぶっそうですが、しかし堅実にやっていれば、シャッター下した後も、しばらくもなんとか持ちこたえられるのか。

主人公は自分が帰国子女だと知られたら恥ずかしいとやはり思っており、しかしマレーシア帰りなので、「アジアからの帰国子女って、帰国子女って感じしないよね。帰国子女はやっぱEU加盟国の欧州と北米からだよね。あとオーストラリアとニュージーランド」という心無い声のほうが先にありそうな気もしましたが、そういう描写はありません。そこは、天真爛漫な主人公に巣食われます。否、救われます。

しかしこの子が、田中絹代がアメションならマレしryというくらい、強烈にマレーが好きな子で、驚きます。たった二年半しかいなかったんですよ、現地に。じゃあお前は中国に何年悼んだとものすごいブーメランの自問自答で私は納得せざるを得ませんでしたが。感受性豊かな時期の多文化体験に決定づけられる人生の人も、いる。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

で、この子は言うだけあって、二年半の帰国子女とは思えないほど、マレー語を知っています。日本人学校に通ってたらこうはならなかったでしょう。しかしマレー語と言わずマレーシア語と言ったり、英語や北京語、閔南語は覚えてないので、インターナショナルスクールとしても、そうなんかなあという感じ。ヤスミン・アフマド映画の主人公オーキッドは三種類の言語を流暢に使い分けますが、そこまでじゃない。

頁27:ジュンパラギ(see you later)

頁30:1がサットゥで、小説タイトルの説明。

頁41:ナシレマッ

頁49:サヤ(一人称単数形)

頁63:トゥドゥン(ヒジャブ、ブルカ)

頁69:ジャランジャラン(るるぶやエイビーロードではない)

頁74:カンポン

頁78:スサスサスサ(difficult, difficult, difficult)

頁79:ルパ(forget)

頁79:キラキラ(about)

頁92:メラメラ(red, red)

頁95:クルアルガ(family)

頁133:ブトゥル(right answer)

頁151:ハティハティヤ(Be carefully)

頁159:スラマットゥンガァハリ(hello)

頁170:ピサンゴレン(deep fried banana)

頁179:タッパヤ・スサスサ(不用谢)

頁188:アンダ(you)

父親は母親と結婚してからサラリーマンをやめて回転すしの職人になって、KLに現地職人の指導に行ってたという設定なので、家族ぐるみで接客してたら、これくらいいくのかもしれない、とも思いました。KL在住邦人といえばGacktですが、北京語では"口交"と言う、というトークショーのコタツ記事くらいしか知らないので、KL在住でも英語と中文だけで、マレー語には深入りしてないと思ってます。

そういう小説で、さくっと読めました。なるほどというか、九刷行くのも納得です。ヘタに文庫化しなくても、このままこの大きさでいいんじゃいかな、折れにくいし、というハードカバーで良心的なお値段。以上