"I, almost never leave from Chiba, the social withdrawal become the Romanian novelist without one experience of oversea travel."
ビッグコミックオリジナルのまんが『前科者』のロイホ読書会に出て来た小説。もともとひきこもりがちだった著者が、①JOJO第五部の影響でイタリア語を学習②大学の二外でスペイン語を学習③趣味のマイナー映画鑑賞でルーマニア映画にヤラれ、同じラテン語のルーマニア語を学習④コロナカ、そして難病クローン病罹患でルーマニア渡航が難しくなるも、インターネット通信をとおして、現地語小説家として成長してゆく、というエッセー。
装丁 木庭貴信+青木春香(オクターヴ) 装画 横山裕一 編集 三上真由 「終わりに」で各位に謝辞。
…でも、表紙のイラストは、ちょっと私には、地元の事件の、「首吊り師」ツイッターアイコンを連想させるので、苦手です。検索で出るご本人の顔は温和でぜんぜん違うのに、残念閔子騫。
著者ははてなブログをやっているそうで、前科者で取り上げられた人たちも、『みんな、水の中』だったか『世界のひきこもり』だったか、やってたなと思いました。スターはつけあってなく、読者登録してるかどうかまでは知らない。
もっと後に読む予定でしたが、図書館でほかにリクエストしていた人がいたので、今急いで読みました。映画も出ますが、本がたくさん出るので、ある程度は読もうと思います。全部は無理。生まれつき翻訳の本などは近隣に図書館蔵書なし。ジプシーの幌馬車もなし。『ルーマニア、ルーマニア』は買うことにします。
頁148「あなたのルーマニア語は本物?」この問いかけは、ネイティヴなのか否かを問うてると思います。機械翻訳や生成AIではないのか、と。きわめて今日的な問い。調べたら、ルーマニアはルーマニア人が人口の89%と圧倒的多数を占めているそうなので、ネイティヴでない話者の存在は日本のそれと似たようになるのだろうと推測します。
ここで著者があげてるイエモンの「悲しきASIAN BOY」はあんまり響きませんでした。とほほ。ルーマニア語はイタリア語に書き言葉ではすごく近いが、やっぱりスラヴ語の語彙が入っていて、はっちょんは全然ラテンでなくスラヴよりなんだとか。
頁187『生誕の災厄』E.M.シオランからの引用
外国人が言葉に関して創造者たりえないのは、その土地の人間と「同じように」喋ろうとするからである。首尾の如何を問わず、この野望こそが彼の破滅の元だ。
頁151のノンバイナリーのくだり、"he", "she", "they"。漢語の場合、音声では同じ「ター(有気音)」なのですが、書く時に男性は人偏の〈他〉、女性は女偏の〈她〉になり、無機物の"it"の場合、ウ冠にあいくちの〈它〉となります。現在ではそれらの区別をあえてなくす、ノンバイナリーを意識した潮流として、アルファベットで"TA"と書く動きがあるようです。LGBTQ?のひとが書いた武漢ロックアウトの手記で知りました。
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本書の「生まれつき翻訳」、海外で知られた作家であるがゆえに、作品発表時点で多言語展開を約束された小説のことをに作者は「生まれつき翻訳」と呼んでおり、それに関連した事項になるのかどうか分かりませんが、マヤ語は読者人口が少ないので、作家自身がスペイン語訳をつけた両文版で出版し、そうすることで世界何位かの会話人口を誇るスペイン語市場でペイしようとする、とマヤ語文学の邦訳で読みました。
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著者自身の手になる訳ではないですが、人口五百万ほどのチベットも、漢語訳を併記することで、膨大な漢語市場をアテにした本を出したりもしています。
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蔵語漢語両文併記については、母語を離れた、漢語話者のチベット人についてのフォローアップの意味もあるようで、それは言語の喪失という点で、とても悲しいことですが、知里幸恵『アイヌ神謡集』もまた、少数民族自身の手になるアイヌ語・和文両文併記であることを記すにとどめておきます。
サイトーサンも、日本で両文併記版を出してみてはどうでしょうか。専業作家がいないルーマニアで紙の単行本を出す方向で苦闘するより、日本で両文併記版出すほうが早そう。で、同時に電子版が出れば、それであちらでもスイスイ読める。
日本人であるということは、日本文学の旗手、世界のハルキ・ムラカミについて言及される、問いかけられると同義である、少なくとも文学クリティークに関しては、というくだりがあり、なるほどなあと思いました。その攻撃が止んだ時は、もう一方の、ルーマニアのアンチハルキ派とでもいうべき対抗勢力から、リューズバー気ままに嫌な夜のほうもいいよね、的問いかけがなされると思ってまちがいないとか。誰か不肖カワバタやあいまいな伊丹十三の妹の宿六についても質問してやれや、と思いました。ノーベル賞受賞者のほうを前に出すべきだと思うの。ケズオ・イシグロとか。だって、日本の十倍以上の人口のインド人に訊くなら、まずタゴールでしょう? そんな感じで。これが漢族だと、ちょっと私には分かりません。魯迅でなく金庸を訊く人もふつうに多い気がしますし、高行健や莫言でなくリウ・ツーシン(三體)を訊く人も、ふつうにたくさんいそう。
検索すると、千葉はやちまたのほうに、ルーマニア料理店があるようですが、作者は食事制限も厳しいので、ちょっとダメかなと思いました。神奈川県にはルーマニア料理店はないようです。地下鉄が通っていて、マクドも牛丼屋もない町って、どこでしょう。作者は『吸血鬼すぐ死ぬ』が好きなようで、私の知人で雇い止めと戦っている人は、少し『吸血鬼すぐ死ぬ』の吸血鬼に似ています。埼玉県民ですが。以上