『ねこのくにのおきゃくさま』シビル・ウェッタシンハ さく まつおか きょうこ やく(世界傑作絵本シリーズ)"Strange Visitors to the Cat Country" by Sybil Wettasingha Japanese text by Kyoko Matsuoka 〈World Masterpiece Picture Book Series.〉読了

スリランカ関係46冊目。シビル・ウェッタシンハサンが、1994年、『きつねのホイティ』と同年、『わたしのなかの子ども』の前年に出した絵本。日本では1996年4月25日福音館書店刊。

www.fukuinkan.co.jp

www.ehonnavi.net

本書はかなり無国籍な話で、働き者揃いだが楽しむことを知らない猫の国に、歌舞音曲の達人(正体はナゾ)を乗せた船が漂着して… という話。

英語版はおろか、シンハラ語版の表紙も見つけられず、シンハラ語のタイトルも分かりませんでした。タミル語版のタイトルだけ分かったので、下記に置きますが、「キャットカントリー」という表現が、ファクトチェックで日本語に再翻訳すると、「ゲットカントリー」になります。なやましい。

"ஸ்ரேன்ஜ் விசிடர்ஸ் டு த கெட் கன்ட்ரி" சிபில் வத்தசிங்க மாட்சுவோகா
கியோகோ〈உலக தலைசிறந்த படைப்பு படப் புத்தகத் தொடர்〉

見返しの猫たち。かなり無国籍。

勤勉に働く猫たち。左上は柄杓を作ってるみたいです。ゴハンもこういうのによそって出してるのを、『きつねのホイティ』で見れます。右上のホーキづくりは、今でも何故かホーキはスリランカから輸入してたりするので(金物屋やホームセンターで確認してみてください)*1なるほどなあという感じ。左下の、染色した葦を編んで茣蓙を作る作業は、『わたしのなかの子ども』で、シビルサンの父親の長兄の未亡人(子どもたちは独り立ちして家を出るか、寄宿制の学校に入っている)がなりわいとしてる場面がありました。頁68。

https://archives.sundayobserver.lk/2015/11/01/spe-the01.asp

https://archives.sundayobserver.lk/2015/11/01/z_p32-Sybil3.jpg関係ありませんが(あるか)左は新婚の頃のシビルサン夫妻。パートナーの人の名前はドン・ダルマパラ・ウェッタシンハ。

シビルサンのウィキペディア各言語を読んでいて素朴な疑問だったのが、シビルサンの旧姓はなんだろうということ。どうもシンハラ人女性は結婚するとパートナーの姓になるみたいなので(むかしからなのか、英連邦時代にそう変わったのかは知らない)何だろうと思ってましたが、この、スリランカの英字新聞サンデー・オブザーバー"Sunday Observer"2015年11月1日、"Sybil at 88"(米寿シビル)by Husna Inayathullah(HUスナ・イナヤットゥラーというシンハラ系でなさそうなライターのひと)の記事によると、父親はHikkaduwage Sawadwris de Silva(ヒッカドゥワゲ・サワドゥリス・ダ・シルバ)という名前で、母親はKotanadurage Joslin de Silva(コタナドゥラゲ・ジョスリン・ダ・シルバ)という名前であることが分かります。シビルサンの旧姓はダ・シルバ。ということは、シンハラ人でなくポルトガル系のバーガーじゃナイデスカ!!! けっこうおどろきました。ネットの追悼コメントに時折書かれる「不滅の黒人少女」"නොමියෙන කලු දූ"(ノミイェナ・カル・ドゥー)にも驚きましたが(姉は色白だったので何かと親戚から区別されたとは『わたしのなかの子ども』に書いてあったこと)父母の代の苗字が明々白々にポルトガル系バーガーなのにも驚きました。なんで各言語のウィキペディアみんなこれちゃんと書かなかったんだろう。しょせん父系だからかな。
話を戻すと、架空の国であっても、インド亜大陸なので、サリーっぽい服が出ます。

左の庶民はコロンボ・スタイル、インディアンスタイルの左肩かけのサリーです。それに対し、キャンティ・スタイル、オサリヤ姿の王宮女性が出たら勝ちだ!(誰に対して?)と思ったのですが、右のふたり(二頭)は、ともに右肩かけのオサリヤ姿なのですが、サリーっぽくない気もします。真ん中のヨダレたらしてる人はシャツ着てないようにも見えるので、そうなるとサリーではないですし、右の数珠をつけた人は呪者もしくは僧侶にも見えます。

で、この絵本のねこを見て、誰かのイラストに似てると思い、ハグキ『ハトのおよめさん』に出て来るトニャーではないかと考え、イイ線いってると自画自賛してたのですが、よく見たらやっぱり似てませんでした。

ハトよめ (はとよめ)とは【ピクシブ百科事典】

でなきゃヤケドするゲ!! じゃあネコがトビネズミを食べるのも 生態系のうちだな やめろよ! ジョボジョボジョボ

6巻頁103、6巻頁53、6巻頁22。

うまいじゃん! この魚まんじゅう!! ワンカップ酒をナメながら探偵ナイトスクープを見るのが 数少ない生きがいの一つなんだ ワンカップ酒をナメるって…

9巻頁93、6巻頁132。

チュル チュル チュル チュルぅ~♪ チュル チュル チュル チュルぅ~♪ ついに壊れたのか? こちらはレディーガガのプラモでございます お前も「レディーガガ」って言いたいだけだろ

10巻カバー裏

ママーッママーッ コラーッ家で待ってろって言ったでしょーっ ちょっとヤメて下さいよ! なんでオシリ触るんですか!?

6巻頁108、このネコ(シンママ)のほうがシビルサンの絵に似てました。10巻頁108、ふと、シビルサンも痴漢防止啓発マンガ描いてたのを見つけたので、比較として貼っておきます。

පොදු ප්‍රවාහණ සේවය තුළ ස්ත්‍රීපුරුෂ සමාජභාවය හේතු කොට ගෙන සිදුවන ප්‍රචණ්ඩකාරි ක්‍රියා – සිබිල් වෙත්තසිංහ

srilanka16days.wordpress.com

https://srilanka16days.wordpress.com/wp-content/uploads/2015/12/sexual-harassments-sinhala-by-sybil-wettasinghe.jpg?w=1102&h=760

自分がシンハラ文字をスラスラ書けたらラクなのですが、相変わらずグーグルレンズはうまいことシンハラ文字を文字として認識してくれず、だいたいで頑張ったのが下記。日本語はぜんぶグーグル翻訳。

(ピンク地の部分)මග තොට දී 「ウェイポートで」

(抗議する女性)මොා තෝ  මං කොස් ගෙඩියකද ඔබලා බලන්න අ?

ジャックフルーツの中に私がいるのが見えますか?」

(痴漢の後ろの、吊革につかまった男性)කොස් ගෙඩය පැණිලද?

ジャックフルーツは甘いですか?」

(席の口ひげ男性)ලෙඩෙක් අතේ සව!

「病人は死んだ!」

(吊革につかまった女性)ඕමා මග තොටදි නිතර වෙන දේවල්

「オママガ港でよくあること」(意味不明)

(苦虫をかんだような席の男性)බයක් හැකක් නැතිකම থে!

「恐れ知らず!」

(席の白髪の人物)සිරිම නමටත් ලැරීජයි

「シリマの名前もラリーです」(意味不明)

(席のサングラス女性)පොට මැරවුනා තේ?

「死んだの?」

(ピンクのサリーの女性)අම්මත් බිරිඳත් ගැහැණු. එයාලා ගැන හිතලාවත් ඔවැනි පවාත් වැඩ නොකරනවා නං හොඳා

「母も妻も女性です。考えてもうまくいかない」

目視しても違う文字があることは分かるのですが、それが書けない… このイラストはシビルサンひとりでの創作ではなく、"Focus Woman"という団体との合作だそうです。2015年12月5日の記事。

話をこの絵本に戻すと、シビルサンはほかにもこのテーマの絵本を描いていて、トムとジェリーじゃないですが、右なんかもそうみたいです。"පූස් නැට්ට"(猫のダンス)という題名だとか。

中島京子サンの『やさしい猫』*2もそういう話ですし、スリランカでは永遠のテーマなのかもしれません。楽師が覆面なのも、うがった見方をしようと思えば出来るし。

でも本書の英語版もシンハラ語版も見つからない…

しらすだぞしらす!! 好きなんだろ? 「アナタのしらすが欲しいです」って言ってみろ アナタのしらすが欲しいです!

6巻頁19。以上

*1:

2017年10月の日記より。"MADE IN SRILANKA"と明記してあります。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/stantsiya_iriya/20171011/20171011160023.jpg

下記は2019年9月の日記。タカサゴシルバーというホーキ。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/stantsiya_iriya/20190920/20190920204746.jpg

メイドイン何処か書いてなかったので問い合わせると、柄の部分は日本製、ホーキの棕櫚の部分はスリランカ製とのことでした。

https://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/s/stantsiya_iriya/20231230/20231230184139.jpgちなみに、スリランカ製の亀の子たわしもあります。左。

2023年年末の写真。この頃は体調まともだったなあ。

昨年11月に連日激しい頭痛と38℃の熱が一週間続いたとき(市の総合病院の内科医がカロナールを一日三回一回二錠服用の指示を出して収まる)買った氷嚢もスリランカ製でした。意外とつながっている両国。

*2:

stantsiya-iriya.hatenablog.com