下高井戸のタダ券を消費するために観に行きました。11月いっぱいの有効期限なのですが、パラサイトをまた上映するそうで、観たい映画がほかに11月中にあるかどうかナゾだったので、えいやで見ました。事前に三時間映画(185分)と聞いていたので、難儀だなあと思っていましたが、サービスデーということもあってそこそこの入りのほかのお客さんは、頑張って三時間観てました。
邦題を検索したら、中也が出て、ああそういうことなのかと思いました。
事前にサクッと読んだレビューで、今の中国で、一人っ子政策批判映画なんか作れると思わなかった、というのがありましたが、寸止めでここまでならという感じで作ったのではないかと思います。労働改造も、模範的な会話しかしないので、正直に話してよ! とキレるも、そこで場面自体切り替わってしまう。つい先日見た凱里ブルースで、紙のお金を燃やすのもダメなんだねえ、みたいな台詞があったのですが、この映画では、郊外の荒涼たるお墓で紙のお金を燃やしてますので、なんでんかんでんダメちゅうわけではなくてよ、TPOをわきまえたらいいべさ、都市の胡同や弄堂で燃やすからダメなんさ、と言ってるように思えます。爆竹が禁止される前の旧正月の場面もなかなかイヤミ。
王景春咏梅获奖,《地久天长》成最大赢家,是黑马还是实至名归? - 历史资讯(存满娱乐网)
私が、よくやったな、と思ったのは、国営企業のリストラ、シャーガン(下岗)に反対する工員たちが、壇上で名簿を読み上げる幹部に詰め寄って混乱が始まる場面。始まったところで寸止めで場面が切り替わるのですが、ギリ狙ったなと思いました。
80年代初頭から2010年代までを描いたこの映画を、大躍進から90年代までを描いた張藝謀の《huozhe》活着と並べる批評もあったのですが、産科で血が止まらない描写は「活きる」のが上だと思いました。あれは悲しかった。ただ、両者はマントウが共通してるので、それで出したのかもしれません。主食は米でなくマントウ。チャン・イーモウの「活きる」は、まだ北京五輪も何も見えてない頃の、自信のない中国で終わってるのですが、この映画は、GDP世界二位の現在の中国で終わるので、結論は大きくことなると思います。つましく庶民が生きるオチのチャン・イーモウに対し、第六世代が監督した本作品では、〈计划生育〉推進の鬼(日本語的な意味で)だった女性が、いまわのきわに言ったせりふが、すべてだと思いました。彼女はこう云うのです。
"我们有钱了,不怕。你也可以生孩子"
日本の一部には、都合の悪いことは語らない文化があるのですが、あちらには、積極的に、こういうふうに語る、と語ってしまう芸風があります。語ってしまったものだけが残り、歴史になってしまう。かつて中国から亡命してアメリカに行って反共映画の原作やったゲリン・ヤンを再度取り込んで南京映画作って、それは日本非公開のままなのですが、もう一度、イエン・グーリンで今度は中越紛争の映画作って、これなら右翼のいる日本の人も見れるだろうと大々的に日本でも公開してしまう(芳華)というしつこさ。どっちの芸風がいいか悪いかはナイツのはなわにでも判断してもらうとして、こういうものだというのは知っておいた方がいいと思います。一人っ子政策はかく映画になりき。これでまた、少数民族が絡むと、シャタウトするんだべなあと。この映画、撮影スタッフは韓国勢で、録音はタイ人が絡んでて、若い頃からフケ顔までひとりのアクターアクトレスが演じるにあたってのメイクスペシャリストはイギリス勢です。金があれば、こわいものはない。子どもだって産める。
その上で、ネタバレ上等で、不妊と不妊治療で苦しむ、悩むのは世界共通ですので、その観点から、この映画のオチのご都合主義を糾弾するレビューがあって、それは強いと思いました。けっきょくこの話も、「悪いのは孕ませる男」という視座が弱いと。
右の子が川遊びで死んじゃって、次の子はもう、一人っ子政策で中絶した時に荒っぽかったのでその後遺症でもう産めなくなってるので、作れないという話。
川遊びしたのはここなのかなあ、という場所。改革開放までの時代突出した工業都市だった包頭市には、ここ以外もダムがあるので、違うかもしれない。そんでまあいたたまれくなって、夫婦は南方の海の町に行くです。
現地の男性三人の会話だけ、この映画で北京語でないのですが、広東語のいち方言かと思ったら、場所が福州のあたりだったので、閩北話か!そうは聴こえないけど!でした。不登校の問題児童(盗癖もある)の養子についてビャオジュンなプートンホワで語る福州の学校の先生が、〈可以〉をコーイー、コーイーと言っていて、真似したくなりました。
漁船の模様がステキで、中国の漁船おもろいのう、と思ったのですが、あとでよく考えたら、日本の中古漁船かもしれない。(台湾や韓国の中古かもしれませんが)
この左の子がなつかない養子で、辛口レビューで、ご都合主義と批判されます。アイドルかなんかなんですかね。わざわざこの子のメイキング動画が出てる。右の子は、成長して医者になってヨメが初めての子を産もうという、川遊びに誘ったほうの子。
原題は、日本では「蛍の光」で知られる歌です。あちらでも歌詞はいろいろあるようで、映画の歌詞に近い動画を見つけたと思ったら、ロケ地日本で、そば屋の看板が映ってる。
川遊びに誘う子は一生のトラウマになるのですが、事実なんか他から漏れるから、彼が何したかとっくに被害者の両親は知っていて、それでも彼の未来と成長のため、黙っていたですが、ここ、他から漏れたら本人も知ることにならないかと思いました。自殺未遂の妻を抱きかかえて病院まで走る場面で、平トラ一台持ってるのになんでそれに乗せないん?と思ったのと、ここだけが、見ていてはてなでした。
私があまり得意でない言い回しのひとつが、”可不是”なのですが、現代の包頭を自家用車で走りながら、あそこも取り壊した、ここも取り壊したと語る場面、”可不是”って、こういう時言うんだろうなと思ったら、次の瞬間、ホントに”可不是”と言ったので、ちょっとうれしかったです。以上