「羊飼いと風船」དབུགས་ལྒང་། "Balloon" 劇場鑑賞

タイトルのチベット語は、ペマ・ツェテン英語版Wikipediaから。チラシやポスターは例の昆虫みたいなカクカクした字体でなく、筆記体的な書体で書かれているので、それを書体比較表とキーボード一覧とにらめっこすること一時間、ひともじもうちこめず敗北しました。

Pema Tseden - Wikipedia

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上の字が、དབུགས་ལྒང་། であることが理解出来たら、チベット人が喜んでくれます。私も喜んでもらえるようになりたいですが、こればっかしは努力してないとダメ。


『羊飼いと風船』予告編

要するに一人っ子政策映画で、風船はムードンコのことです。雪が降る、あなたは、来ない。コンドーです。日本以上に急速に少子高齢化が進む中国では一人っ子政策は撤廃され、過去のものとなりましたので、映画も作れる。しかし、この政策の下では、漢族は二人目でもう壁に激突するのに対し(「在りし日の歌」という同テーマの漢族映画が最近日本でも上映されてました)、この映画で明確に描かれているように、少数民族は三人でもおkでしたので、中国でこの映画が圧倒的マジョリティーな十三億の漢族からどのような視線を向けられていたか、知りたくもあります。少数民族生四个才会有罚款太不想活了。我们生两个也十分幸苦了,为什么会这样。Ελι ελι λεμα σαβαχθανι 上帝,上帝,你为什么抛弃我们。なので、パンフで解説読みたいのですが、新百合ヶ丘は品切れでした。ビターズエンドからの入荷数も少なかったそうで。ザギンのシネスイッチに行けば、まだ買えるのでしょうか。この映画の原作は、例のワークショップの一員の方が春陽堂書店というところから邦訳を出していて、それは、かつて勉誠出版で一連のワークショップの編集を担当された方が春陽堂に転職された縁だそうです。この映画の字幕監修のひとの新刊は書肆侃侃房というところから。いろんな出版社に分散してんだなあと。

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羊飼いと風船 - Wikipedia

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气球 (电影) - 维基百科,自由的百科全书

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Balloon (2019 film) - Wikipedia

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日本語版ウィキペディアチベット語も中国を構成する56の民族のいち言語なんだから、中国語のひとつであるわけで、チベット語と中国語というふうに書くと、まるでチベットが中国じゃないみたいに見えるじゃないデスカ(棒 中国語と書かず、漢語とか華語と書けばいいのに、あっでもそうすると狙い通りでないということになるのかな(棒 などとはいち㍉も思いませんでした。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/en/thumb/c/cf/Balloon_%282019_film%29.jpg/220px-Balloon_%282019_film%29.jpgもうなんも考えず、マレーとかチェズレとかゴンバとかそういう言葉の響きをひたすらいとおしんでました。耳が幸せだった。風船越しや、洗面器の水に映った顔など、手前に何か置いての構図が好きなんだな、とか、動くカメラでの撮影はすべてアイフォンだろか、などと思いながら見ました。

キホンチベット語のアムド方言での会話なはずですが、バイクのことをモターカーとか言ってるように聞こえ、これは、旅のエクスプレスチベット語で貨物トラックのことをラサ語でモタカーと言ってるのと同じかなと思いました。バイクにカターがかけてあるのもご愛嬌。漢語は、三ヶ所くらいしか出ないと思ってるのですが、西北方言のジモティのセリフが想像以上に聞き取りにくくて(実際聞き取れないと思います、農民になると)聞き取れないのはチベット語と思い込んでたら嫌だなあと思ってます。具体的には、尼僧が三輪タクシーの運転手と値段のやりとりをするところ。duo2shao1?と聞いて、shi2kuai2qian。と答えるそのやりとりは完全に漢語なのですが、その前段のやりとりを私はチベット語だと思っていて、チベット人同士でも値段の話は漢語になるんかいや、と思ったのですが、実は西北方言の漢語で、聞き取れてないだけだったら、やだなあと思ってます。

あとの二ヶ所のひとつは、回族商人に雌羊を売る場面。ここは、回族商人のせりふが、ほっとんど聞き取れませんでした。漢語ですが、私の能力はそんなもんです。最後が、風船買う場面。"我要气球" "I want balloon"さいしょ、チーチウと聞こえず、チーチォンと聞こえ、なんでそう聞こえるんだろうと思ってました。"要拉个" "Which you need?" "要哪个"がラーガと聞こえたのはご愛嬌で。"我要两个,大的,红的""I need two, big size, red colour."

妹さんが尼僧で、映画の舞台は青海湖のほとりですから、青海湖に浮かぶ島に尼寺があると聞いたのを思い出しました。尼僧も性欲があるので、男性が上陸するとウハウハと誰か言ってたのですが、ほんとかどうか知りません。少なくともこの映画とは異なる趣旨だと思います。タクブンジャは、『ハバ犬を育てる話』の作者のタクブンジャでしょうか。主人公タルギェの名前が、タルジェに聞こえてしかたなかったです。タイトルロールのところで、Mani Stone pictures という制作会社が、Qinghai Mani Stone pictures となっていて、フーンと思いました。

以上

【後報】

シネスイッチでパンフ買いましたが、『流転のテルマ』の人が絵入りでアムドのパン(ガンバンばっかり食べてるのでさっぱり記憶にない)や、鳥と栗鼠と猿と象の絵の説話は小説嫁とか、巨大ウェンチョンゴンジューは月夜の晩に動くとか、いろいろ描いてましたが、タクブンジャはいったいどんなヒドいことをしたのかなどの説明はないかったです。映画の設定は1995年から2000年とのことでしたが、モトローラの携帯普及はもう少し後ではないかしらとか、羊一頭売却時、六回お札を数えているので、百元札なら六百元だが、五十元札のようにも見える、如何、などの問題は、私自身が持ち越すしかなさそうです。

草原にてんてんと木の電柱が、コールタールかなんか塗ってるからか、黒くて、それが続いている風景を懐かしく眺める人は多いと思います。散発的に停電する牧地の定住住居と、雷の場面もよかった。あの送電方法はそうとうやっつけで、送電中の電力ロスが大きいと、アムドに登山に来てた東電の人が言ってましたので、この映画から20年は経ってるはずの現代では、ちょいとはましになってるといいなあと思いました。以上

(2021/3/13)