『うみへいくピン・ポン・バス』"PIN PON BUS GOES TO THE SEASIDE" by Fumiko Takeshita illus. by Mamoru Suzuki 読了

まちだことばらんどの絵本展にこのシリーズの前作原画があり、それで借りました。

Pin Pon Bus Goes to the Seaside | Kaisei-sha

英題は版元の英語サイトから。福音館は奥付に英題記載してますが、偕成社はそうでないので、英題どうするかなぁと思ってましたが、立派にウェブ対応されてた。

www.kaiseisha.co.jp

装幀者未記載で、作者がやってるのかな? 編集者かな? 下は見返しのデザイン。私は実物見ても気づいてないのですが、バスの前部は直角で、後ろはややナナメです。そうなってるのかなぁ。そういう認識が私には有馬千円。

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前巻が1996年で、この続編が2004年。十年近く経ってますが、人物が絵本的なものから漫画的アニメ的なふいんきを強めてるなと思った以外、差分は、ない、かなぁ… 後述しますが、むしろ、2004年と2021年の差分のほうが大きそう。

取材協力/東海バス 

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わりと早いページに下田警察と書かれたパトカーが出るので、下田なんだなと分かります。それまで、紀伊半島だろうかどこだろうかとワクワクしてたのですが、確定早かった。冒頭の特急列車は特徴的で、なのでたぶん有名で、分かる人には場所の問題など瞬殺でしょうけれど、私はそうではなかった。

運転手は前巻同様くせっ毛なのですが、前巻はパーマ、この巻は天然な気がします。若手、まつげ長い。優男風ですが、冒頭二ページ、半袖の二の腕の密生した毛をしっかり描いてるので、画伯のこだわりポイントかなと思いましたが、それ以降は描かれません。残念閔子騫。2004年当時の下田行きバスは交通系ICカード未対応であることも分かります。

街の風景は、そろそろチェーン店が存在感を増しているようにも、そうでないようにも見えます。実はそういう描き方は、前巻とも共通。

画家のくせなのか、やたら工事車両が描き込まれます。交通誘導の警備員が、なんしか、私服にメットとトラチョッキのようにも見えます。私服はダメだと思うのですが、時代なのかなあ。それとも、描き方の問題か。白と緑色の横縞の半袖なんかあるかなあ。

頁16の、パッカー車の右隣の灰色の車が分かりませんでした。自衛隊の火器搭載車両でもないだろうし… パッカー車の左はラプター車。このページの左側のオープンカーのナンバーが仮ナンバーに見えてしかたないです。赤枠で囲まれた、ハイフンつきの大きな数字四桁、「12-12」で、左側に縦書きで漢字が書いてあるように見えるので。でも熟年夫婦が乘ってるようなので、それで仮ナンバーはないだろうしな~。

日本のナンバープレート - Wikipedia

山中のS字カーブで、片側が樹木伐採、もう片側がブルドーザーで道路舗装の下準備、砂利ならししてるように見えて、それは危ないし、クレーマーがレスするからあかんやろうと思いましたが、当時のクレーマーは、今ほど手軽にクレームする方法がなかったのかもしれません。

さいごのほう、空いたバスで、子どもが椅子の上で靴を履いたままひざをつくのですが、足の裏でなく甲が椅子に接面するかたちですので、これは近年許容する親が多いかたちだなと思いました。靴を脱がせると、履きなおすのが面倒だったり、どっかいっちまったり、あげくは履かないで出ようとしたり。足の裏を椅子に接面すると汚れるけど、甲だからいいか、みたいな。子どもはじっとしていないので、何かの拍子にくるっと反転しますので、そうすると足の裏が椅子に触れて、泥などがつくこともあろうかと思うのですが、だからといって靴を脱がせてから椅子に上がらせるべきという人は、昔もすべてではありませんでしたし、今はほぼいない気がします。だいたいこの絵、親は離れた席に座ってるから、子どもが悪さしても見えない。

というようなことを思って、時代の変化を勝手に感じていたところ、ラストページ、「ゆうがた、みんなは、うみの おみやげを どっさり もって、かえりの バスに のるでしょう」という科白で驚きました。子どもは磯で何やら獲ってるし、親は海釣り。最近よく夕方のニュースでやってる、海に来て、勝手に海産物獲って帰る人に見えなくもない(そういう人がバスで来るわけないとも思いますが)地元の漁協で遊漁券購入する場面とか、遊漁禁止区域でないことを示す表示とかが描き加えられた増補改訂版がひそかに出ていてもおかしくないなと思いました。読んだのは初版と同じ2004年の二刷。以上