ガマの聖談 : 人生に関する珍考漫考 (光文社): 1968|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
全二十六話の二話。小見出し:人間の寿命は百五十歳 七十五歳の時に、その時が自分の頂点と思ったので、そう書かれてます。七十五歳まで上昇して後は同様になだらかに下降するので百五十歳。ソ連のウズベクには百歳を超える人がたくさんいて、百二十歳以上の人も少なくないのも、その理由とか。それを講演でぶったら、慶大教授林髞(はやし・たかし)またの名を木々高太郎が賛同して感心したそうです。そこに、辰野隆(ゆたか)や徳川無声、高橋義孝の名前も出るのですが、出るだけです。同席してただけで、賛成したとは書いてない。
小見出し:加賀のM・ビッグ・スリー Mはマラ。魔羅買うねん。孟浩然(まうかうねん)執筆時に九十三歳でおなくなりになった細野燕台という郷里金沢の陽明学者が加賀三大マラのひとりだったそうで、動物の馬は三大マラの後塵を拝すこと序列第五位というくらい、三傑のイチモツは大きかったそうです。男性なのに陰毛はタワシ状態。両手は手ぶらで、手ぬぐいを股間の性器の上に、タオルを頭からかぶった力石徹状態にぶら下げて浴場を闊歩したとか。鍛え方は実戦一本鎗で、ガマサンはそれに加えて金冷法もたしなんだとか。
五十代半ばから鍛え始めて、十四センチ半だった持ち物(ピースの箱の内側をはじくかはじかないかくらいだったそう)が、六十で一センチ伸び、六十代後半でさらに一センチ伸びて十六センチ半になったそうです。測定者は同一女性なので、測り方の違い等による誤差は考えにくいとのこと。にんげんは、いくつになっても成長出来るんですね(棒 小見出し:マスのすすめ 細野先生はまた、マスおおいにかくべしとガマサンを鼓舞、激励したそうです。背中を押されなくても、ガマサンは早大理工学部の選抜試験(入学試験?)を受けたとき、頭がすっきりしないので試験場でマスをかいてさっぱりしてすらすら答えを書いて試験に合格したそうで、これは、現代にも通ずる素晴らしい受験テクニックで、スマホを持ち込むより効果的なやり方かもしれません。うそです。
小見出し:女をはなさぬ法 マスをかくのは需要と供給のバランスをとるためで、政治も経済も性の問題と同じであると書き、そのあとで、こうも書いています。
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性をほんとうに享受するには、相手をよろこばせ、それを見てこちらも楽しむというのが、この道の極意となっている。
むずかしいことは少しもない。社会のシステムと同じなんだからな。
しかしこれが案外社会で行なわれていないので、日本の既婚女性の65%はオーガスムスを知らないのではないかと問題提起しています。35%はまあまあだが、頭髪が痺れるほどの愉悦を知っている者はほんの二、三人ではないかとも。まあむかしの話なので、女性の自慰なども発達した現在ではまた違うと思われます。薬物はまた違う話で、本当に違う話。
そこでさらに、作者はおのれの矜持として、犬は性交時ピストン運動をするが、自分はしないと誇っています。吉原の娼婦が、回転を早めるために客にピストン運動を推奨したので、そういうものだとそう素人童貞を筆頭に思われているが、それは違うそうです。ソウデスカ。岡場所が現代ではAVになって、やはりおかしな知識が普及しているのが21世紀かもしれません。著者がその境地に達したのは53歳の時で、立たなくなってからフト、「相手が吸いこんでくれるまで待つ」いにしえの格言にいう「子壺が飛び出して、くらいついてもっていく」に開眼したそうです。
これはとてもうなづけるというか、これこそ「社会のシステムと同じ」と言えるのではないでしょうか。コロナカ以降急速にスーパーやコンビニに普及した釣銭機ですが、これに紙幣を詰まらせる人間にほぼ共通してるのが「せっかち」という属性です。投入口に紙幣をあてれば、向こうから吸いこんでくれるのに、それが待てない。自分からグイグイねじこんで折れたりなんだりのまま無理やり挿入するので、それで紙幣が中で折れ曲がったりくしゃくしゃになったりして、紙幣詰まりを起こしてしまう。こうなると膣痙攣に筋肉弛緩剤を注射しなければいけないのと同じように(いやちがうか)釣銭機のカバーを鍵で開いて、中から詰まった紙幣を取り出し、ごみくずや破片を掃除しなければならなくなります。その間その機械が使えなくなるわけで、混雑時には迷惑にもなる。
相手への思いやりなく、自分さえよければでパートナーに接している可能性があるかどうか、釣銭機の前でしばし立ち止まって考えてみるのも一興かもしれません。スーパーやコンビニでは女性もたくさん働いていますが、詰まらせる女性の場合はどう考えたらいいの、と自問自答を試み、ノーアイデアだったことも付記しておきます。
ボーツー先生と福田和也の下記書評対談に登場する本。カーリルで県内図書館に蔵書があると出て来るので(白帝社版かな)公序良俗には反してないと思うのですが、他館本リクエストで数回なしのつぶてだった本。最近思い立って、日本の古本屋で、愛媛の古書店さんから、てごろな値段のものを購入しました。七百円。送料三百円。計千円。
stantsiya-iriya.hatenablog.com
裏表紙のサンケイ新聞フジテレビ会長(当時)水野成夫サンの一文は、著者ウィキペディアの記述を裏付けるものです。
著者ウィキペディア
(略)1940年転向仲間の水野成夫と古紙再生会社「大日本再生製紙」を設立する。1945年には宮島清次郎が社長を務めていた国策パルプと合併し、同社の常務取締役となる。(略)
(略)経営が悪化した同球団をヤクルト本社が買収したこの一件について、当時は「水野の窮地を盟友の南が救った」と言われていた。(略)
カバー折。田中一光のデザインとは。目次の次のページによると、本文さし絵・藤城清治だそうです。そんなそうそうたるメンバーが、このエロトーク集に結集したと。
杉 靖三郎先生を偲ぶ - 日本生理学会
http://physiology.jp/wp-content/uploads/2014/01/064100237.pdf
いつも元気、いまも現役(文化勲章受章・写真家 田沼武能さん) | 健康長寿ネット
まえがき(昭和四十三年一月二十五日)によると、このトークは、光文社の雑誌「宝石」に昭和四十年十月号から昭和四十二年十一月号まで二年にわたって連載したものをまとめたとか。すでにオープンリール*1の録音装置は普及していましたが、まあ、ライターと編集者にご本人がざっくばらんに語って、ライターがそれをメモして、だいたいな感じで文章に仕立てあげたんだと思います。そのほうがラクだし、ライターも腕が揮える。
奥付 昭和43年2月15日初版で、読んだのは同年7月1日の37版(37刷)左上に神吉晴夫サンの名前が見えます。カッパブックスの生みの親はもちろん、「戦後最大の出版プロデューサー」©Wikipediaだとか。
神吉晴夫のベストセラー作法十か条
1. 読者の核を20歳前後に置く
2. 読者の心理や感情のどういう面を刺激するか
3. テーマが時宜を得ている
4. 作品とテーマがはっきりしている
5. 作品が新鮮であること。テーマはもちろん、
文体や造本に至るまで今までお目にかかった
ことがないという新鮮な驚きや感動を読者に与える
6. 文章が読者の言葉遣いであること
7. 芸術よりモラルが大事
8. 読者は正義が好き
9. 著者は読者より一段高い人間ではない
10. 編集者は常にプロデューサー・企画制作者の立場に
立たねばならない。先生の原稿を押し頂くだけではダメ
右上の伊藤整『文学入門』と、サラリーマン目白三平シリーズがカッパブックスの最初だったそうで、この巻末広告を見ても、ミッキー安川のアメリカ留学記、三笠宮殿下のご著書、中帰聯の三光作戦、関川夏央も読み込んだ『にあんちゃん』、わだつみの声、川喜田二郎のヒマラヤもの、ゾルゲ事件連座の尾崎秀実『愛情はふる星のごとく』と、実にバラエティに富んだラインナップになっていて、驚きます。私もこれらの本は読んだり積んだりのはず。
以上