ブッコフの中古品在庫ありで「スリランカ」で検索したら、出て来た本のひとつ。庄野護サン『スリランカ学の冒険』*1に、どこに行くにしても、百冊(論文含む)読んで千語現地語を覚えてからにシロヨとあって、それで、現地に行く予定はないのですが、カサ増しで読んだです。スリランカ関係書籍27冊目。ブッコフで¥220(税込)
中学生で初スリランカ、大学生で大統領官邸に、社会人1年目で出版した『天国のあるスリランカ』 | スリランカ観光情報サイト Spice Up(スパイスアップ)
買ったのは帯なし。カバー写真 宮城寛明 カバーデザイン 中川ともき
自費出版専門の文芸社出版なので、この本は自費出版です。養子縁組、否、里親制度の本というか、スリランカの訳ありな子どもたちの里親になろうという団体があって、現在はその代表になった香山サンが、そのなれそめと、中三、大学一年二年四年のスリランカ訪問について書きました。香山サンは京都の人で、中学からはりっつーというのか、立命館一筋の人で、父親が祇園の板前で母親が看護士で、両親不在時に時々面倒を見てもらっていたおばさんがもともとは母親の患者サンで肝硬変の人で、その人が里親になっていた子どもの国がスリランカだったとか。で、そのおばさんの息子さんは、おばさんの遺志をついで、スリランカに「八幡綾子メディカルセンター」という診療所を設立。里親制度と診療所の二本柱で現地支援に邁進することに。
一口にスリランカと言っても、様々な切り口があるものだと思いました。北海道の4/5の大きさの島なのに、イスル・ソヤの海外雇用関係機関、スリランカ学の冒険のNPO、フェアトレードの珈琲豆、ハイジャック犯、カフェやゲストハウス、ルッキズムをやっつけるためスパッツカンパニーを開く人、さまざまな人がヨコのつながりまったくなくそれぞれバラバラにスリランカに関わっている。現地に行けば邦人会とかそれなりにあるんでしょうけれど、しかし、読んで、あっ、これはあの本のあの人だ、というのがぜんぜんない。
で、それはそれとして、表紙のサリー姿を見ていて、最初は、邦人がサリーを着るときは現地人並みの彫の深さを表現するためか、やたら濃い化粧をさせられるというけれど、ホンマやなあくらいに思っていたのですが、そのうち、あれっ、これ合わせが逆ちゃうんと思いました。
サリーって、右前ですよね。キャンディアンスタイルとかインディアンスタイルとか関係なく、日本で言う右前のはず。
右前ですよね。
右前のはず。『海外でゲストハウスはじめました』①激闘編 東條さち子(Nemuki+コミックス)頁38
本書の表紙は、左前で、5000円札の津田梅子サンのように写真を左右反転してるとしか思えず、別にサリーだと死に装束*1ってこともないんでしょうが、題名が『天国のあるスリランカ』ですし、2015年の自殺率世界一位の国だけに、なんかこわいです。
この表紙に比べれば、ババンと実名出てる「おばちゃん」の家が阪急の富田駅が最寄りだったこととか、実際に里親登録してるのは「おばちゃん」の息子さんで、里子は女子だとか(頁20)「おばちゃん」の葬儀の日に飛んでいた揚羽蝶を香山さんが「一羽」「一匹」と書かず、「一頭」と書いていて、量詞ちゃうやろと思ったこととか、どうでもいいです。自費出版なら、よほど公序良俗に引っかかる以外、校正しないだろうし。
「おばちゃん」の名前を冠した診療所は、"Ayako Hachiman Medical center"でも"Ayako Yawata Medical center"でも何も出ないので、よく分かりません。頁32に、「他国民より自分は幸せだ」と答えた人の割合の順位を国ごとにあらわしたランキングのニュースが出ていて、デンマークが一位、スイス、オーストリア、アイルランド、バハマ、フィンランドが続き、日本は90位だそうです。それだけ抜くと「日本ってモノがいっぱいあるのに、なぜ幸せが感じられないんだろう」と短絡的にかんがえがちになるのかもしれませんが、香山さんはチャンと、最下位はブラジルで、インドは125位だったと書いてます。あのブラジルが最下位なんだから、明るく振る舞ってる人こそ根暗であるという私の私見を裏付けるものかと。イタリア人もモラヴィア読むと、とても暗いし。中国の順位は書いてませんが、低かったそうで、検索しましたが、2005年は中国未調査でした。2006年のデータなのかなあ。スリランカの順位は不明。
昨年のビリ2はレバノンで、四位がイスラエルなので、ハマスがアクションを起こす理由のひとつになってもおかしくなさげ。最下位はアフガニスタンなので、ペシャワール会の会員としては、恣意的なデータと考えてもいいのですが、まあ、考えないです。
「スリランカ日本教育文化センター」や「マヒンダラヤマ寺院」はお寺さん関係みたいで、チャンダシリ僧侶はじめお坊さんはみな日本語が上手だったそう(頁38)ですが、検索しても何も出ません。茨城県古河市宝蔵寺というお寺のインスタに令和六年のチャンダシリ僧侶が写ってましたが、いかんせん英語やシンハラ語がよく分からない。
上かなあ。新首都にあるみたいです。スリランカニッポンアヴェニューという通りがあるんですね。すばらしい。今検索しましたが、"Sri Lanka Zhong guo Ave."は今のところありません。スリランカ政府は今年百万人の中国観光客誘致を目指してる*2ようですが。
頁47、スリランカでは(スリランカでも?)左利きの人も右手で食べるとか。そうなるとますます表紙写真の左前が気になって気になって。
左右反転してみたんですけど、もともとこういう写真だった、かどうかは不明。
スリランカ人のセイナさんと結婚して、一人娘のアキちゃんと三人でスリランカに暮らすタツコさんも登場します。頁50。リアル『やさしい猫』かどうかは分かりません。のちにはセイナさんを残して日本に帰国するのですが、北海道の80%の国土しかないのに、ほかの本にかぶって登場しないのが、なんというか、ほんとバラバラ。砂のような日本人。かつて魯迅が中国人を評したことばが、こんなに今世紀の邦人にあてはまるとは、ほんとうになさけない。異境にあってはあいみたがいの、相互扶助の精神は何処へ。
下記はシギリヤに行った時の体験。まだちゅうがくさんねんせい。
頁56
「ワタシ、ニホンゴ、ナラッテマス」
壁画を見ていると、いきなり肩をたたかれ振り返る。その片言の日本語は不自然そのもので、「ミナサン、ココハ アブナイデス」と無理やり手を摑もうとしてきた。
すると、いきなりチャンダシリさんが間に割り込み、ものすごい勢いで現地の言葉をしゃべりだした。そして、片言のスリランカ人はその場を去った。こうして偽ガイドを装うのは、このあたりに住む地元の人だった。日本人を案内してお金をもらうガイドの様子を、見よう見まねで再現し、お金をもらおうとする彼らの必死の作戦だった。チップをねだり、バスまでついてくる集団まであり、まるでパレードのようになっていた。バスの扉が閉まっても、その入口から離れず、ドアをバンバンと叩く。明らかに子供であるあたしにもまとわりついてチップを要求してくるほどだ。
(略)
再び驚きと恐怖に襲われホテルに着くまで気持ちが沈んだ。
フィリピン旅行記を読むと、よくこういうの出ますね。シギリヤも観光地ってことで。よく東條さんはここで暮らそうと思ったなと。
頁64、香山サンは絵本を描き、シンハラ語に訳されて各関係教育機関に届けられ、好評だったとか。『プペルの煙突』否『えがおの工場』というそうですが、これも分からない。立命館国際平和ミュージアムの展示写真が出て、シンハラ語の単語が二つ写っているので、それをスマホでスリランカ人に見せればシンハラ語のスペルが分かるので、もう少し検索しようがありそうですが、スマホないもんで。グーグル翻訳だとその単語になりません。このシンハラ語は、「スリランカにすみながらお寺の幼稚園の先生として働く日本人のゆかさん」が翻訳したんだとか。あっちこっちに日本人が出るのはいいことですが、もっと太い絆にならないものか。
三回目のスリランカ訪問の前、哲学の講義で「人間は人間にとって狼である」ということばを習ったそうで、唐突に出ます。頁88。検索すると、トマス・ホッブズのリヴァイアサンに出てくる言葉だそうで。
しかしその語源はさらに遡って、紀元前ローマのプラウトゥスという人の言葉だとか。
香山さんはがんばってるようですが、いろいろ背負ってるのかしら、だとしたらのんびりやりなはれとも思いました。いきなりこんな単語が出て来たり、中二病だったり、左前だったり、こわいわ。若いからかなあ。ダンスのうまい若いスリランカ人男性、ミヒラが気になってるように、誰が読んでも読めますが、さて。
下記は、大学生活最後のスリランカで、人生初のホロスコープをしてもらう箇所。英語で会話するのですが、便宜上このようになっています。一週間前に電話で必要な情報を伝え、夜八時半から三時間半行列に並んで結果を聞く。
頁159
「見たことない顔ね~だれ?」
「……ゆうみです」
「ああ、Wyumね」
「……Yumiなんですけど……?」
「あ、そう。あんたの国のスペルわからな~い」
少々腹が立つ喋り方だ。
「で、どこの人?」
「え、日本ですけど」
「あぁ、そうだったね~キオト(京都)」
まさにこの調子で、話は始まったのだが、その後彼が話してくれた内容は、今のあたしをそのまま映しだし、悩んでいる項目を見事なまでに的中させた。口をはさむと、その様子から口車に乗せられ、良いように誘導されそうなので、その手には乗らないように終始黙って客観的な結果だけを聞いていたのだが、胡散臭いどころか、その的中具合に鳥肌すら立った。
(略)
ホロスコープの最後に、学者の彼はあたしにこう言った。
「あなたは、幸せを持ってるね。人とちゃんと関係を持てる。Good Luck」
本書にもちょくちょく出てくる、ペラヘラ祭の写真。電飾象。『世界の資産家はなぜスリランカに投資するのか』(幻冬舎)頁75より。
以上
【後報】
スリランカ人女性に聞いたところ、なんのことはない、左利き女性は左前でサリー着ることがあるとのこと。じゃあ香山サンは左利きなのかな。そう思うことにします。終了。
(2024/7/18)