『中国のお笑い―伝統話芸“相声”の魅力』 (あじあブックス)読了

中国のお笑い―伝統話芸“相声”の魅力 (あじあブックス)

中国のお笑い―伝統話芸“相声”の魅力 (あじあブックス)

大修館のあじあブックス、結構面白いのが出てて好きなんですが、その新刊。
内容にも興味はありましたが、まあ、表紙で買いました。
さしてそういう仕事をされる装丁者の方とは思われませんが、
こっちは勝手に連想してしまったので…

装丁者の方のほかの仕事
http://www.google.co.jp/search?aq=&hl=ja&rlz=1T4TSHJ_jaJP515JP515&q=%E4%B8%8B%E5%B7%9D%E9%9B%85%E6%95%8F&um=1&ie=UTF-8&tbm=isch&source=og&sa=N&tab=wi

この本の装丁をみてわたしが連想したもの
http://big5.xinhuanet.com/gate/big5/news.xinhuanet.com/china/2001-12/03/content_147052.htm
http://news.xinhuanet.com/china/2001-12/03/xinsrc_737a5c28e7c111d59992009027d545c9.jpg
あとチベット国旗とか。

大修館の新刊紹介で、抜粋されたこの本の内容にもおおいに食指を動かされました。

わが国では相声の訳語として「中国漫才」を当てている。だが実際に聴いてみると、漫才というより、むしろ落語である。

相声の訳語は「中国漫才」であるのに、どんな根拠があって落語だと言い張るのか。そんな疑問を抱く読者もいないではなかろう。だが残念ながら落語と漫才はどこが違うか、という問いに真正面から答えるだけの知識の持ち合わせがない。筆者が相声を落語と考える根拠というべき相声の特徴をいくつかあげて、読者の判断を仰ぐことにしよう。

http://plaza.taishukan.co.jp/shop/Product/Detail/30610

作者は戦前生まれ。
チャイナスクールの学校(東京外語大)を出て、
チャイナウォッチャーになられた(新聞社勤務)方のようです。
文中の中国語にかなりカタカナのルビを振っているのですが、
濁音を振らないとか、むかしながらだなと感じました。
口の前にハンカチをあてて息を吐いて揺れるか揺れないか、みたいな。
ianをイエンと書いてuanをユアンと書くところは、私には理由が分からない。
「滾」をコゥエンと書くのはもっと分からない、グンでいいだろうと思うので。
eをュオと書くのはなんとなく分からないではないけれど、
もう、いっそ、むかしのしきたりもまとめて公開してほしいと思いました。
あと、タンカンオリは、ドンカンオリとも読むことをこの本で知りました。貪官汚吏。

作者は相声が落語である根拠を三つあげていますが、
私には真ん中のひとつだけしかうなづけませんでした。
最初のひとつ、相声のストーリー性重視は、
日本の漫才師も今はコントばかりやるので、さして奇異には思われませんでした。
真ん中の、同一台本を複数の芸人が世代を超えて取り上げて語り継ぐ点は、
確かに日本の漫才にはない点。
てゆーか日本の漫才師は過去の漫才遺産再演しろよトリビュート。
最後の、読んで楽しめる、これは、
ツービートの『わっ毒ガスだ』だってベストセラーだったしねえ、と、思いました。
マクラとか相声と落語にしかないわけじゃなく、漫才にあるしね。

で、いろいろ相声作品を紹介してるんですが、
どの本に収録されているか全然書いてなくってもどかしかった。
てゆーか作者もほとんどカセットテープで所蔵してて、
今入手出来るかどうか知らなそうな感じでした。
全部YouTubeにあげて、その辺の中国の人に文章も起こしてもらってあげてほしい…
読みたい、聞いてみたいのがたくさんありましたよ。

十年前くらいかな、入谷駅の近くに、
“日本人是馬大哈”という落書きがあったんですよ。
この本の頁35で、そもそもは、
“馬馬虎虎(いい加減)”“大大咧咧(気まぐれ)”“嘻嘻哈哈(無頓着)”
の三つの言葉のアタマを重ねた造語と説明してあって、勉強になりました。
日本人は神経質できっちりしすぎだから、逆だと思うんですけどね、落書きは。

台湾シャンションはあとがきだけでなく、ひとつ章を割いてやってほしかったです。
新進シャンソン歌手総出演新春シャンソンショー。ゆうこりん繞口令ランコ・ポポビッチ

(後報で中国の早口言葉をこの本から引用する予定の場所)
【後報】頁229

打南辺来個喇嘛、手里提拉着五斤鰨目、打北辺来個啞巴、腰里別着個喇叭、南辺提拉鰨目的喇嘛要拿鰨目換北辺別喇叭的啞巴的喇叭、啞巴不愿意拿喇叭換喇嘛的鰨目、喇嘛非要換別喇叭的啞巴的喇叭。喇嘛拿起鰨目抽了別喇叭的啞巴一鰨目、啞巴摘下喇叭打了提拉鰨目的喇嘛一喇叭。也不知提拉鰨目的喇嘛抽了別喇叭的啞巴一鰨目。還是別喇叭啞巴打了提拉鰨目的喇嘛一喇叭。喇嘛回家炖鰨目、啞巴回家吹喇叭。

(2013/1/27)

そういえば、ほかのあじあブックスのおすすめを書こうとして、
WebCat見たら、WebCatってなくなるんですね。知らんかった。

http://webcat.nii.ac.jp/cgi-bin/shsproc?id=BA36085359

「正史」はいかに書かれてきたか―中国の歴史書を読み解く (あじあブックス)

「正史」はいかに書かれてきたか―中国の歴史書を読み解く (あじあブックス)

中国「野人」騒動記 (あじあブックス)

中国「野人」騒動記 (あじあブックス)

漂泊のヒーロー―中国武侠小説への道 (あじあブックス)

漂泊のヒーロー―中国武侠小説への道 (あじあブックス)

どれも面白かった。