- 作者: 大仏次郎
- 出版社/メーカー: 毎日新聞社
- 発売日: 1999/03
- メディア: 単行本
- クリック: 2回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
酔って町田の古本屋で買ったようです。
下記の焼き鳥屋近くの古本屋。
http://tabelog.com/tokyo/A1327/A132701/13024002/
あらすじ等、ほかの方のブログのトラバ
http://trackback.blogsys.jp/livedoor/michikusa05/51170083
第六回日本芸術院賞受賞作品とのこと。
冒頭のマラッカは、私は行ったことがないので、
ペナンやシンガポールなど、
行ったことのある土地を思い浮かべながら読みました。
そこからお話は、鎌倉、東京、京都、箱根などに移るのですが、
美しい描写が美しいと思いました。
頁128
何とも云えず、明るいのである。この花あかりは左右に開いた時宗廟の扉にも映っていた。花びらの厚く豊かな木蓮の花と、明るい海の貝殻を無数に集めたように軽く爽やかな桜花の群がりようと、夕日を含んで、底光りするようにしっとりと輝いているのだ。恭吾は、立ち止って凝視したままであった。
「忘れていたよ」
と、ほっとしたように、
「いや、昔も実は見ていなかったと云ってよいのかも知れぬ。桜色と云うのが、こんなに美しいものだったとは気がつかなかった。」
こうして藍を溶いたように明るい空に花をかざして見ているせいかも知れぬ、と思いながら、その理由を求めようとする心持にはならぬ。ただ、忽然と見入るのである。
白いとも、桃色がさしているとも云えぬ。幽かと云いたい柔かい中間色の微妙な美しさである。如何にも軽らかに、光りようが仄かのまま、ずっと深いところから出ているように見える。
ダイヤモンドを買い漁れるほどの軍票って、どれだけやねん、とか、
ギャンブラーとして異邦に生きてゆける主人公の存在うらやましい、とか、
そんなところでしょうか。
今とは連れ子さん絡みの法律も違ってたはずなので、
そういう影も読み取れたら、また別の読後感があったかもしれません。