ガマの聖談 : 人生に関する珍考漫考 (光文社): 1968|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
冒頭に日中足の長さ比較があり、ガマサンは戦前一時期カントンにいただけあって、中国人のほうが日本人より足が長い(同じ身長でも少しばかり腰の位置が中国人のほうが上にある)ことを知っていました。しかしその後の展開が独特。
頁53
(略)外国人に八頭身が多いのはそのせいで、日本人は残念ながら六頭身だといわれている。
ところが、じつは、この六頭身のほうがセックスのほうはいいんだな。日本人にくらべると、お隣りの中国人のほうが少し胴が短いようだ。生活様式の相違によるものだが、このために中国では、昔は女に纏足をほどこしていた。纏足とは、もともとシマリをよくするためのものだ。昔の中国では、女を性具として扱っていたからな。
纏足をすると、なぜシマリがよくなるのか。これはかんたんな理屈だ。女だったらただの一発でわかるだろうが、男でも自分の足でためしてみれば、だいたいの見当はつくはずだ。まず足の指を甲のほうにそらしてみたまえ。すべてが体外にはみ出す感じになるだろう。反対に足指を内側に曲げるとシャッター筋がしまる感じになるはずだ。纏足はこの理屈を踏まえているだけだ。
むかしの吉原では、足指を内側に曲げてはいけない、目をつぶってもいけない(精神が統一されてしまうから)と教えたそうで、このへんはなるほどなあと思いました。その後の、玉ノ井に昔いたという、六十過ぎてもスマタで自在に男を骨抜きにしたベテラン女性の話も理解は出来ます。でもその後の、女性がほんとうに抵抗したらアレは絶対出来ない、という、相撲取りあがりのスケベ野郎(豊力会という、ガマサンが関脇を務めていた草相撲の会の会員)の言い分は、ちょっとな、という気もします。出来たんだから、やらせてくれたんだから、合意の上という理屈。最近これは否定され始めてるので。法も改正されるとゆうし。
頁59
おれなど、もう七十五だから、自分の容貌にも自信はないし、肉体にも若い青年のような溌剌さのないことを知っている。ところが若い女が、この年寄りの首っ玉にかじりつき、底抜けになることができるのだからな。人生の快味、ここにきわまるといってもよいくらいだ。
この個所を現代の若い女性が読んで、「オエーゲーきもちわりー」と言わず、生唾ゴックンだったりしたら、私はもう世の中が信じられませんです。
小見出し:女の目をつぶらせろ / 女の本質 / 助平でない女はいない / 美人なんてつまらぬもの
最後は、目の大きな美人にツボのよいのはいないという作者の持論が正しかったというエピソードですが、その前の話が、たぶんナントカ用語なので、別の出版社から出た時には、文言が変わってるか、削除されてるか、どちらかだと思います。私は黒岩重吾の小説を思い出しました。
『西成山王ホテル』(角川文庫)読了 - Stantsiya_Iriya
『夕陽ホテル』 (集英社文庫)読了 - Stantsiya_Iriya
『飛田ホテル』 (角川文庫)読了 - Stantsiya_Iriya
『どぼらや人生』 (講談社文庫)読了 - Stantsiya_Iriya
『西成十字架通り』 (角川文庫 緑二六八)読了 - Stantsiya_Iriya
『どかんたれ人生』(集英社文庫)読了 - Stantsiya_Iriya
『黒岩重吾長編小説全集15 花園への咆哮 北満病棟記』読了 - Stantsiya_Iriya
『黒岩重吾長編小説全集12 花を喰う蟲 病葉の踊り』読了 - Stantsiya_Iriya
『黒岩重吾長編小説全集4 人間の宿舎 裸の背徳者 カオスの星屑』読了 - Stantsiya_Iriya
ボーツー先生と福田和也の下記書評対談に登場する本。カーリルで県内図書館に蔵書があると出て来るので(白帝社版かな)公序良俗には反してないと思うのですが、他館本リクエストで数回なしのつぶてだった本。最近思い立って、日本の古本屋で、愛媛の古書店さんから、てごろな値段のものを購入しました。七百円。送料三百円。計千円。
stantsiya-iriya.hatenablog.com
裏表紙のサンケイ新聞フジテレビ会長(当時)水野成夫サンの一文は、著者ウィキペディアの記述を裏付けるものです。
著者ウィキペディア
(略)1940年転向仲間の水野成夫と古紙再生会社「大日本再生製紙」を設立する。1945年には宮島清次郎が社長を務めていた国策パルプと合併し、同社の常務取締役となる。(略)
(略)経営が悪化した同球団をヤクルト本社が買収したこの一件について、当時は「水野の窮地を盟友の南が救った」と言われていた。(略)
カバー折。田中一光のデザインとは。目次の次のページによると、本文さし絵・藤城清治だそうです。そんなそうそうたるメンバーが、このエロトーク集に結集したと。
杉 靖三郎先生を偲ぶ - 日本生理学会
http://physiology.jp/wp-content/uploads/2014/01/064100237.pdf
いつも元気、いまも現役(文化勲章受章・写真家 田沼武能さん) | 健康長寿ネット
まえがき(昭和四十三年一月二十五日)によると、このトークは、光文社の雑誌「宝石」に昭和四十年十月号から昭和四十二年十一月号まで二年にわたって連載したものをまとめたとか。すでにオープンリール*1の録音装置は普及していましたが、まあ、ライターと編集者にご本人がざっくばらんに語って、ライターがそれをメモして、だいたいな感じで文章に仕立てあげたんだと思います。そのほうがラクだし、ライターも腕が揮える。
奥付 昭和43年2月15日初版で、読んだのは同年7月1日の37版(37刷)左上に神吉晴夫サンの名前が見えます。カッパブックスの生みの親はもちろん、「戦後最大の出版プロデューサー」©Wikipediaだとか。
神吉晴夫のベストセラー作法十か条
1. 読者の核を20歳前後に置く
2. 読者の心理や感情のどういう面を刺激するか
3. テーマが時宜を得ている
4. 作品とテーマがはっきりしている
5. 作品が新鮮であること。テーマはもちろん、
文体や造本に至るまで今までお目にかかった
ことがないという新鮮な驚きや感動を読者に与える
6. 文章が読者の言葉遣いであること
7. 芸術よりモラルが大事
8. 読者は正義が好き
9. 著者は読者より一段高い人間ではない
10. 編集者は常にプロデューサー・企画制作者の立場に
立たねばならない。先生の原稿を押し頂くだけではダメ
右上の伊藤整『文学入門』と、サラリーマン目白三平シリーズがカッパブックスの最初だったそうで、この巻末広告を見ても、ミッキー安川のアメリカ留学記、三笠宮殿下のご著書、中帰聯の三光作戦、関川夏央も読み込んだ『にあんちゃん』、わだつみの声、川喜田二郎のヒマラヤもの、ゾルゲ事件連座の尾崎秀実『愛情はふる星のごとく』と、実にバラエティに富んだラインナップになっていて、驚きます。私もこれらの本は読んだり積んだりのはず。
以上