『黒岩重吾長編小説全集12 花を喰う蟲 病葉の踊り』読了

解説は尾崎秀樹
『花を喰う蟲』は昭和三十九年一月の号から十一月の号まで週刊新潮に連載され、
タイトルのとおりデルモと女衒的プロモーター、ギョーカイの話です。
印加国という東南アジアの国が出てくるので、スカルノ絡みかなあ、
と思ったのですが、解説によると、イギリスのキーラー嬢事件*1というのが作品のヒントだそう。
横浜が舞台ですが、横浜新道とか中原街道とかがポンポン出てきて、
菊名とか藤沢にあっという間に移動するのが、車好きな作者らしいと思いました。
関西在住の関西人で、月イチくらいしか箱根の関を越えないはずなのに、
よく知ってるなあ、と。

『病葉の踊り』が、作者の北満時代に基づいた作品ということで、
だからこの本を借りて読んだのですが、
その後の株屋時代や麻痺、占いまでカバーした作品でした。
掲載誌は下記。

近代説話 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%91%E4%BB%A3%E8%AA%AC%E8%A9%B1

作者版ヰタ・セクスアリスのような作品で、
(でも私は鴎外のヰタ・セクスアリスを読んだことがありません)
作者に関心のある人にとっては(あるいは看護婦とか入院に思い入れがある人にとっては)
非常に深く読めるのかもしれませんが、
私は北満についての作者目線での情報を求めていたので、それは、なかったです。
やはり邦人社会、特に軍人のそれと現地とでは、薄皮以上の膜があったのかな。
以上
(2015/5/25)