- 作者: 倉橋由美子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2008/09/04
- メディア: 文庫
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昭和46年1月初版 昭和49年4月六刷
解説 高野斗志美 珍しく、図書館本もカバ欠でしたので、
装丁者は不明というか、調べません。
解説者 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E9%87%8E%E6%96%97%E5%BF%97%E7%BE%8E
ちくま文庫の獅子文六『七時間半』*1で、解説者が、文六が執筆した、
1960年の翌年、倉橋由美子が同じ「新幹線前の東海道特急」を舞台に、
これを書いたとあったので、それで読みました。しかし、つばめより、
到着地の京都の描写のほうが面白かった。あとは、当時の、ジャズ喫茶ですか、
それに集う良家の不良子女の描写でしょうか。フランス語やドイツ語で挨拶したり。
頁23
あの男の子、眉毛のほとんどない、眼の間隔のややひらきすぎた幼児、典型的な貧民の顔をした赤ん坊よりは、あの犬のほうがはるかに高貴にみえるだろう。電車や場末の映画館のなかで火がついたように泣き出すのはきまってあんな赤ん坊だ。あなたなら、そういう場所にはけっして赤ん坊を運びこみはしないだろうに……いや、そんなことよりも生みはしないだろうに。
頁82、ポ・ト・フー
この小説は、性に関する事柄など、人に見せない日記か!と思うくらい、
仏語などをそのまま使うのですが、時折カタカナもあります。
頁151、《boeuf à la bourguignonne》、いわゆるブルギニオンを食べた。
カタカナで言い直してますが、知らなかったので検索しました。
(ブルゴーニュ風)牛肉の赤ワイン煮だとか。
頁145
(前略)それも良家のフイユといった女の子よ、育ちのいい、堅固なフイユを、かたっぱしから誘惑しちゃうの。
"feuille"だと思うのですが、葉っぱをどういう意味で使ってるのか、
21世紀になってしまった今となっては、分かりませんでした。検索で出ない。
頁154、叡電前から京福電車に乗りかえてその後ケーブルで比叡山にのぼる場面、
叡電は叡電で、京福とは違うんじゃいかと思いました。
頁196には東華菜館が、最後の頁には大市が出ます。料理の感想は書いてないです。
下記、横浜を過ぎてからの風景。
頁96
窓の外に暗褐色の雑木でまばらにおおわれた丘がつづく。丘からきた小道が線路を横切るところには、虎のように黄色と黒の縞模様に塗られた柵が立っている。小さな踏切りだ。ときどき、自転車をとめた農夫がそこで列車の通過を待っている……この印象派以前的な、光と色彩のない風景、克明な線とタッチでえがかれた風景のなかからみるべきものを探すことはむずかしい。あなたの眼はつぎつぎとあらわれる黒と黄色の柵を追っている。
21世紀のの日本では、こういう荒涼とした風景、もはや鉄道沿いで見ることは、
叶わないかと。私は読んでて、黄色と黒の柵こそないものの、中国の鉄道風景ばかり、
思い浮かべました。黄土高原の、コーリャンとか、西瓜とか、監視小屋とか。
主人公は車内で、ヰタ・セクスアリスの追憶に耽るです。
でも別に他人の人生だし、と思いました。以上