『飛田残月』読了

飛田残月

飛田残月

飛田残月 (中公文庫)

飛田残月 (中公文庫)

黒岩重吾の飛田・西成もの。ハードカバーで読みました。装丁:松田穣
これまでこのシリーズは昔の文庫本の活字の小ささに閉口してましたが、
今回はハードカバーで、活字が大きいので楽ちんです。目にやさしい。
おかげさまで読後感までよろしかったです。
人形浄瑠璃みたいな自死結末が極力少なかったせいもありますが…
山周の季節のない街を彷彿とさせる、と言ったら言い過ぎですが、
作者ご自身の一人称語りによるご当地の現状と懐旧のオーバーラップ、
スケッチが巻頭の数編を占めており、例えば、表題作は、
アル中のヒモ亭主が衰弱に継ぐ衰弱を重ね、一念発起して入院して、
解毒、強制断酒を経てみるみる恢復するが、
当初から入院費が懸案であったため、直ったんなら遊んどらんとはよ退院せい、
と迫る女房と、これからもずっと入院したいので、その費用を資産売って工面せい、
という亭主が、病室で罵り合う場面で終わります。誰も死なない。
 あ っ た か い ん だ か ら ぁ (´Д⊂ヽ
死ぬ話もありますが、少数派です。また、デンマークを舞台にした話などもあり、
目先が変わるので、新鮮な気持ちで読み進むことが出来ました。
黒岩重吾はあと一冊読もうと思いますが、ラス2でよい本が読めてラッキーでした。
以上