『どぼらや人生』 (講談社文庫)読了


これはアマゾンに表紙が転がってたので、スキャンせんともよかったですが、
気付かずやってしまった。表紙は永田力http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=103014
検索すると、同名のバイク絵の人もいらっしゃるようですが、上のURLの人。
ほかの方のブログ*1で知った、黒岩重吾の大阪南部もの4冊目*2
今回は自伝です。解説の大井廣介さんは後半引用ばかりですが、
前半は至極妥当。麻生太郎の親戚だとか。

大井廣介 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E4%BA%95%E5%BB%A3%E4%BB%8B

解説 頁203
 現代の讀者は大笑いするだろう。半世紀前の小説には、地方の賣春婦にくびったけになった。しかし肝心の軍資金が途絶えた。原稿紙を拡げてみたが、一向にはかどらない、といった身辺記録が、おびただしかった。貧乏小説の異名さえとった。嘉村蟻多などはその滑稽さを自覚していた節々があるが、大半は作家としての知惠を欠いた。(中略)これが掛値のないところだと訴えながら、己れに不利だと縷々釈明強弁し、つとめていい児になりたがっている。無器用な癖そういう小細工にぬかりなく、讀者の同情と関心を得ようと、偓促つとめている。
(中略)
 讀者は私小説の展示するような、作家の片々としたプライバシィに興味はもてない。ゴシップでこと足りる。それがフィクションとして鑑賞に耐える場合だけ通用する。武田麟太郎に『市井事第三話』という短編の風俗小説がある。ある左翼かぶれの青年が左翼のチラシまきか何か、おっかなびっくりやっているうち、豚箱にぶちこまれる。どうにか釈放されて、わがやに立戻ってみると、同棲していた女がドロンしていた。がっくり、左翼から遠のいて終う。非合法時代の脱落者をうまく摑んでいる。高見順の実話で、高見も仝じ題材で本家ぶりを示そうとしたが、『市井事第三話』が要領よくポイントを摑んでいたのでかなわず、高見が私に、ネタを横どりされたと、些か怨んでいるように述懐していた。武田によれば、あれは高見が身ぶり手ぶりよろしくしゃべり捲っていた。誰かかくかなと、みていたが、誰もかかない。そこで、ぼくがきかされた通りまとめたのですよ。とっておきの題材なら、肚の中であっためておけばいいものをと、笑っていた。

こういうマクラに、フローベールボヴァリー夫人自然主義でなく、
私小説でもなくフィクションだというような言辞が入り、
黒岩重吾のこの自伝のエピソードに対する論評総括に移っていきます。
(といっても、もう何も語っていない)
この自伝はWikipediaでは今北産業。本文ではいろんな人物のスケッチが横溢。

Wikipedia 黒岩重吾 来歴・人物 
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E5%B2%A9%E9%87%8D%E5%90%BE
1953年、悪食を試み、腐った肉を食べたことで小児麻痺を発病し、以後3年間入院生活を送る。
退院後は、入院中に株が暴落し、帰るべきところがなくなったために、釜ヶ崎(あいりん地区)のドヤ街に移り住み、トランプ占い、キャバレーの呼び込み、「水道産業新聞」編集長などさまざまな職業を経験する。

この、「腐った肉」については、自伝では真犯人かどうか断定されていません。
同時に食べたほかの人間は発症していないし、その後も作者は麻痺を起しているからです。

大井廣介はまた、黒岩の兵役について厳しくチェックしようとしており、
巷間よく取り上げられる処女作『北満病棟記』以外に、
『裸の背徳者』という作品を挙げています。う〜ん、いつまで黒岩重吾を読めばいいのか。
まだ先は長いですかね。