Rice Cracker Futon Is The Best Battlefield第二十四話ーせんべい布団が最高の戦場『ガマの聖談 人生に関する珍考漫考』"Toad's Sacred Talk." -CHINKOU〈Curious Thoughts〉( It sounds like penis. ) and MANKOU〈Pondering〉( It sounds like cunt. ) about Life.- by Kiiti Minami 南喜一(カッパブックス)KAPPA BOOKS

ガマの聖談 : 人生に関する珍考漫考 (光文社): 1968|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

南喜一 - Wikipedia

もうあと三回なので、そんなにネタはないです。今回は、東京ベッドの当時の社長が石川県出身で、ガマサンが石川県人会会長だった縁で、麻布六本木の本社落成式に呼ばれて一席ぶってきた話から。

東京ベッド - Wikipedia

西洋人とオリエンタルとでは尻の深さがちがうので、尻の浅い日本人だと尻がベッドにもぐりすぎる。日本人に合った、尻がもぐらない固いベッドが好もしいという。この辺はうなづけるのですが、西洋人は前戯が長くて本番が短い、スボケマラ(包茎)が多いから、スボケマラでは"接して漏らさず”も"九浅一深”も不可能、などと自説がどんどん進むので、それはどうなんだかと読んでて思うようになります。

「丸の字をしりでかかせる面白さ」という川柳も、柔らかいベッドでは実施に難ありとか。その後、緋縮緬を題材にした川柳を二つ出し、今の人は湯文字と蹴だしの区別もつかないと嘆いています。私も分かりません。「湯文字」「蹴だし」「緋縮緬」どれも女性の和装の下着かなというくらいはぼんやり推量するのですが、じゃあ具体的に違いを説明せよと言われたら分からない。湯文字も蹴だしも腰巻で、湯文字はじかに肌に巻き、蹴だしは湯文字の上に巻くアクセサリーで、緋縮緬は蹴だしの一種で、着物のあいだから緋色がちらちら見えるので風情があるそうです。

湯文字 - Wikipedia

「蹴出し(けだし)」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書

緋縮緬とは - コトバンク

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/b/bb/Sansuke.jpg/400px-Sansuke.jpgそのあとは、白木屋火事からパンティの普及へとふつうに話が移り、割れ目の見えるようなパンティなら穿く必要がない、パンティを穿かない女性は味がよいとしています。ミニスカートも同類項で、銭湯で今の女は前を隠さず、三助の前でも平然としているので、かえって三助のほうが目のやり場に困るとあるのですが、そもそも男性の三助が女湯に出入りするという認識がなかったので、検索したらほんとうにそうでした。

日暮里の銭湯に最後の三助さんが働いていて、今はなきさがみ野スーパー銭湯では、彼に教習を受けた三助サンビスを始めたこともあったそうですが*1その看板を見ると、現代の三助も男湯女湯両方出入りしていたようです。私は中国東北の浴池、長春だか吉林の浴池でも三助見たことあるのですが、中国の垢すりマッサージの人が女湯にも行ってたかは知りません。相模線沿線のスーパー銭湯で、韓国式垢すりサービスがありますが、男湯内のそこも韓国人のオバチャンが来ます。

三助 - Wikipedia

あとは、女性をおとすには性感帯に触る必要があるから按摩を学んだり手相骨相を覚えて(ある程度でいいそうです)口実を作って触るところからという、ネットニュースの三面記事で被害の絶えない話が出ますが、これはまあ、そういう口実であることが分かった上でまかせてくる女性は阿吽の呼吸でどうのこうのという前提ですので、それが分からないとネットニュースのコメ欄に、こういう犯罪者は一生治らないから刑を重くしろとかGPSつけろとか極刑に処せとか賑わうことになるんだと思います。川柳「させたいとしたいは直きにできるなり」

その後は、性交渉の前は体を洗ったりしない主義のガマサンが、昼と夜とで相手を代えて二回戦やったりするときの二度目の相手からは、頑強に体を洗うことを強要される話になります。相手の意向を汲まずにそのままことに及ぼうとしても、一晩に三十回達した熟練の豪傑が、一滴も濡れなかったりするので、そういうときはガマサンは絶対女性に逆らわず、唯々諾々と入浴して、手ぬぐいと石鹸で体をよく洗い、歯を磨いて、うがいもするそうです。

著者・南 喜一 著者・南喜一君のこと サンケイ新聞フジテレビ会長水野成夫みずのしげお  南君にガマ将軍の愛称を呈したのは、『人生劇場』の作者、尾崎士郎であった。そのガマ将軍とごくとの交友はじつに長く、ほぼ半世紀に近い。よくも飽きずにつきあったものである。  しかし、この交わりで得したのはむろんぼくのほうで、彼はぼくたちが、一高や東大でついに学びえなかった人生の機微の数々を、ことこまかに教えてくれたものである。  若いころから、浮世の辛酸に身をさらし、人生の幾山河を踏み越えてきたこの先輩は、処世百般、とくに食生活や性生活については堂々たる見識の所有者で、ぼくなど時のたつのも忘れて彼の話に聞きほれたものだ。 『ガマの聖談』には、そのころの話や、その後の体験記らしきものが、ユーモアに富んだ筆致でみごとに描かれている。  その表現は、ときに猥雑の感をあたえるかもしれないが、よく読むと、読者はそのなかから珠玉の真理をくみとることができるであろう。なぜなら、彼にあっては、食生活の知恵も、性生活の知恵も、そのすべてが、健康と長寿につながっているからである。 〈著者略歴〉明治二十六年石川県に生まる。早稲田大学卒。社会運動家をへて、財界にはいり、現在、国策パルプ会長。ヤクルト本社会長。日本ガン予防協会理事長。合気道八段。昭和四十年藍綬褒章を受章した。

ボーツー先生と福田和也の下記書評対談に登場する本。カーリルで県内図書館に蔵書があると出て来るので(白帝社版かな)公序良俗には反してないと思うのですが、他館本リクエストで数回なしのつぶてだった本。最近思い立って、日本の古本屋で、愛媛の古書店さんから、てごろな値段のものを購入しました。七百円。送料三百円。計千円。

stantsiya-iriya.hatenablog.com

裏表紙のサンケイ新聞フジテレビ会長(当時)水野成夫サンの一文は、著者ウィキペディアの記述を裏付けるものです。

著者ウィキペディア

(略)1940年転向仲間の水野成夫と古紙再生会社「大日本再生製紙」を設立する。1945年には宮島清次郎が社長を務めていた国策パルプと合併し、同社の常務取締役となる。(略)

(略)経営が悪化した同球団をヤクルト本社が買収したこの一件について、当時は「水野の窮地を盟友の南が救った」と言われていた。(略)

水野成夫 - Wikipedia

人生の機微と女性の核心にふれる 東京教育大学教授 杉靖三郎  
私は、厚生省栄養審議会や、体力づくり国民会議などの会合で、南さんの「聖談」には、いつも感心させられていた。  その豊富な体験に裏うちされた内容は、私の専門である生理学的立場からみても、スジがとおっていて、たいへん興味深い。  南さんこそは、ほんとうの意味での学識経験者だと、敬服している。  いつも、「聖談」だけで終わるのは、じつに惜しいと考えていただけに、「人生の機微」と「女性の核心」にふれたこの本が世に出ることに、心から拍手をおくりたい。
カバーデザイン・田中一光 著者撮影・田沼武能たけのり
近代実践派の色道武勇伝 性科学者 高橋鐡  
一ページ、いや一行の文が一生のプラスになることもある。この本にはそれがいっぱい。”初交三回説”や、”一寸五分型説” ”マス効用説”をはじめ、”Mベラ” ”人体穿孔機”の発明など、さすがに近代実践派の大モノが豪語した色道武勇伝である。  極左派から、国策事業までの振幅を示した異色頭脳の産物だけあって、性学上の科学的新発見にも驚く。当今流行の労務管理の秘伝も兼ねている。  そのうえ、政財界人、文士、力士が、「粗チンの持主」としてぞくぞく登場するから、痛快きわまりない。

カバー折。田中一光のデザインとは。目次の次のページによると、本文さし絵・藤城清治だそうです。そんなそうそうたるメンバーが、このエロトーク集に結集したと。

杉靖三郎 - Wikipedia 

杉 靖三郎先生を偲ぶ - 日本生理学会

http://physiology.jp/wp-content/uploads/2014/01/064100237.pdf

ja.wikipedia.org

田沼武能 - Wikipedia

いつも元気、いまも現役(文化勲章受章・写真家 田沼武能さん) | 健康長寿ネット

www.jiji.com

田中一光 - Wikipedia

まえがき(昭和四十三年一月二十五日)によると、このトークは、光文社の雑誌「宝石」に昭和四十年十月号から昭和四十二年十一月号まで二年にわたって連載したものをまとめたとか。すでにオープンリール*2の録音装置は普及していましたが、まあ、ライターと編集者にご本人がざっくばらんに語って、ライターがそれをメモして、だいたいな感じで文章に仕立てあげたんだと思います。そのほうがラクだし、ライターも腕が揮える。

KAPPA BOOKS KOBUNSHA 光文社の「カッパ・ブックス」誕生のことば  カッパは、日本の庶民が生んだフィクションであり、みずからの象徴である。  カッパは、いかなる権威にもヘコたれない。非道の圧迫にも屈しない。なんのへのカッパと、自由自在に行動する。その何ものにもとらわれぬ明朗さ。その屈託のない闊達さ。  裸一貫のカッパは、いっさいの虚飾をとりさって、真実を求めてやまない。たえず人びとの心に出没して、共に楽しみ、共に悲しみ、共に怒る。しかも、つねに生活の夢をえがいて、飽くことを知らない。カッパこそは、私たちの心の友である。  この愛すべきカッパ精神を編集モットーとする、私たちの「カッパの本」Kappa Books は、いつもスマートで、新鮮で、しかも廉価。あらゆる人のポケットにあって、読むものの心を洗い、生きる喜びを感じさせる――そういう本でありたい、と私たちは願ってやまないのである。 昭和二十九年十月十日

奥付 昭和43年2月15日初版で、読んだのは同年7月1日の37版(37刷)左上に神吉晴夫サンの名前が見えます。カッパブックスの生みの親はもちろん、「戦後最大の出版プロデューサー」©Wikipediaだとか。

神吉晴夫 - Wikipedia

創業者 神吉晴夫 - かんき出版

神吉晴夫のベストセラー作法十か条

1. 読者の核を20歳前後に置く
2. 読者の心理や感情のどういう面を刺激するか
3. テーマが時宜を得ている
4. 作品とテーマがはっきりしている
5. 作品が新鮮であること。テーマはもちろん、
文体や造本に至るまで今までお目にかかった
ことがないという新鮮な驚きや感動を読者に与える
6. 文章が読者の言葉遣いであること
7. 芸術よりモラルが大事
8. 読者は正義が好き
9. 著者は読者より一段高い人間ではない
10. 編集者は常にプロデューサー・企画制作者の立場に
立たねばならない。先生の原稿を押し頂くだけではダメ

右上の伊藤整『文学入門』と、サラリーマン目白三平シリーズがカッパブックスの最初だったそうで、この巻末広告を見ても、ミッキー安川アメリカ留学記、三笠宮殿下のご著書、中帰聯の三光作戦関川夏央も読み込んだ『にあんちゃん』、わだつみの声、川喜田二郎のヒマラヤもの、ゾルゲ事件連座の尾崎秀実『愛情はふる星のごとく』と、実にバラエティに富んだラインナップになっていて、驚きます。私もこれらの本は読んだり積んだりのはず。

以上