『ペキン・ダック』 (世界ミステリシリーズ) 読了

http://ecx.images-amazon.com/images/I/412yN1VUDgL.gif Peking Duck

ペキン・ダック (1981年) (世界ミステリシリーズ)

ペキン・ダック (1981年) (世界ミステリシリーズ)

Peking Duck

Peking Duck

これも、アクションジャーナルで取り上げられてた本です。*1

この本のカタカナ表記も不思議なので、以下順番に列記します。
(不思議でないカタカナは除外してあります)
カッコ内は現在のマジョリティー表記(と私が考えるもの)です。

キャリフォーニア(カリフォルニア)
オウクランド(オークランド
ロス・アンジェルス(ロサンゼルス)
ジャムプ(ジャンプ)
コーヴェット(コルベット
ヴィデオ・テイプ・デック(ビデオテープデッキ)
ジェネラル・モウターズ(ゼネラルモーターズ
ロウリング・ストウン(ローリング・ストーン)
リンダ・ロンスタッド(リンダ・ロンシュタット
ディザイン(デザイン)
チリー(チリ)
ピュジョー(プジョー
スウェター(セーター)
バムパー(バンパー)
コーフィー(コーヒー)
カシュミア(カシミア)
ネイサン・ロウド(ネイザン・ロード)
ティーク(ブティック)
シャミエン(シャメン)
ニューズ(ニュース)
プティ=ブルジョワ(プチ・ブルジョワ
ティベット(チベット
ティーム(チーム)
クアラ・ルムプール(クアラルンプール)
ステュディオ(スタジオ)
コムピューター(コンピューター)

めんどくさくなったので、頁133くらいでよしにします。

この本の舞台になった中国は、有吉佐和子が行ったのと同じくらいの時代、1979年くらいです。
四人組が逮捕されて、華国鋒が要を摘んでどうのこうのしてて、訒小平が全面に出る直前。
有吉佐和子の本で、サラリと読み飛ばしていたのですが、
下の藤井省三先生の本で、通訳がかの唐家璇*2の若き日の姿だったりするのを再確認し、
ひとりどよめいたこともあります。あの、親台分断工作に辣腕を振るいながら、
何故か日本の右の人たちから一目置かれる王毅サンのお師匠ですね。
お師匠のほうは、日中友好の残骸を日々なすすべもなく眺める毎日だと思いますが。話を戻すと、文革終了直後の中国に、加州主体の合衆国中国友好調査旅行団が訪れ、
当然ゴタつき、で、
河北省満城から1968年に発掘された前漢時代の翡翠と銀の鴨の彫刻が消え去ります。
(国外持ち出し禁止の故宮展示品)
調査団は世代別「アメリカのサヨク」が勢ぞろい、そこに主人公の探偵が紛れています。
ロスト60年代みたいな探偵シリーズの一作ということですが、
探偵に、オリエンタル女性フェチという一面が付与されています。
アリーマイラブでルーシー・リューが演じた役のアレ。
http://www.newsgab.com/attachments/celebrity-pictures/159602d1235295403-lucy-liu-black-dress-lots-leg-ally-mcbeal-season-4-episode-19-ll.jpeg
肩の凝らない、テキトーな話として読みました。

頁16
「これがメッサーシュミットかね」彼女はおれの手に、タマレ・パイの暖かい皿を置いた。「いつワルシャワを爆撃するんだい?」

中古ポルシェを買ったユダヤ系主人公に、
マッカーシズムを乗り越えた筋金入り左翼の伯母が、ジョークを飛ばす場面です。
こういう古い世代から、進歩的文化人とか、オリバーストーンみたいな奴とか、
マイケルムーアみたいな奴とか、ヒスパニックとかが出てきます。
当時まだヒスパニックという言葉は一般的でなかったようで、
メキシコ系を意味する「チカーノ」が注釈なしで使われています。黒人は出てこない。

頁95
「ああ」おれが言った。「これでサヨナラだからな」
「サヨナラですって?」彼女はどっと笑った。「中国にお別れを言うのに、あなたは日本語を使ってますわ。中国語を覚えるべきですね。それから、ここへ戻ってきてください……あなたの言いたい言葉は、“再見”ですよ」

セヨナラ、ハイ、ミシミシなら、だいたい映画の日本兵のセリフで、
中国人は知っています。あと、トチュゲキーとか。

肝心の謎解きがどうもでした。この時代、中華民国がそこまで根を張ってるわけないです。
ラスト、コーションの時代じゃないんだから。
http://ebookstore.sony.jp/photo/BT00001940/BT000019401800100101_tl.jpg
http://ebookstore.sony.jp/item/BT000019401800100101/

頁118で、三里屯を北京の街の北西と書いてますが、東の間違いですね。
その一方、上海では、「大界」Great Worldという、
明らかに大世界、ダスカ(の跡地)が出てきますが、
訳者はなぜかこれを架空の存在としています。
そんなことに突っ込む進歩的文化人がいてもおかしくなかったのでしょうか。
市内バスの支払いとかどうしたのか、そっちを知りたいです。
外貨兌換券はもうあったのかな?

あと三年で中国はコカ・コーラが氾濫する資本主義の国になる、
と文中の悪の中国人が予測しますが、
コカ・コーラが氾濫するまで十五年、
資本主義が氾濫する一党独裁政権の国として栄華を極めるまで二十五年でした。
http://www.jn519.com/miaosha/html/big/1301024069_373.jpg
どっとはらい南無阿弥陀仏。以上

【後報】
何故王毅さんが日本の右の人から一目置かれるようになったかと言うと、
下記の写真を恣意的に使われて激怒したことがあったからじゃなかったかな、
と記憶しています。
http://www.geocities.jp/kuzuneta/ouki.htm
(同日)