- 作者: 石川達三
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1972
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船上写真→*1
船模型→*2
ケープタウン→*3
フジモリ元大統領の母親の
ことを書いた本*4で、
『蒼氓』が、
南米移民の参考として
挙げられていたので、
読んでみました。
昭和十年代前半の
ブラジル移民について、
乗船前の収容所から下船、
労働開始まで、
特徴的な群像を
ピックアップして
描かれていました。
確か(精神のほうの)
障がい者の移民、
国籍取得について、
棄民につながる
恐れがあるので、
どこの国でも?
出来なかったのが
どうとかとか
ニュースを読んだ
ような気がしましたが、
この小説では、
結構それも医者、
通訳次第みたいな
描写がありました。
移民やその補助を
有利にするために、
条件に合致する家族を
積み木のように
書類上構成したり、
トラホームをクリアするために
涙ぐましい努力をしたり、
いろんな家族や
キャラクターが出てきました。
第一回芥川賞受賞作とのこと。
それは第一部だけかな?
奥多摩湖Wikipedia*5
で、蒼氓はいいのですが、
『日蔭の村』がきつかった。
大きな力の前に、
近代個人キャラなど
立てようもなく、
ただ鬱々と、
共同体全域に
借金だけが増えてゆく
恐ろしさ。
頁266
村の中でも一番強そうに見えた坂部龍三が、実は一番弱い男であった。若い者は抵抗力が少ないのであろうか、それとも彼は自分で自分を蹴落して行ったのであろうか、虚無や懐疑の感情に対してはまるで何の武器を持ってはいなかった。以前の情熱的な闘士龍三の俤をしのばせるものはめっきりと痩せて来た鋭い顔つきといつも不機嫌な態度とにすぎなかった。
工事人足相手に外地から来た
酌婦が開いた店に入り浸り、
酒を飲んで百姓仕事もせず、
老いた母が店にまで来て、
酌婦の面前帰ろうと諭す
場面など、恥もいいところで、
それでも酒と自分への酔いが
醒めないさまなど、
悲しすぎました。
彼を好いた娘が、
これまで娘を苦界に出したことの
ない村から第一号として
出奔しようとする刹那、
小説の中だけに登場する神が
人間の命と引き換えに
それを帳消しにするところで
お話は終わり、
やっと一息つけるのですが、
いや、きついと思いました。
ダムで村が沈む計画が
宙ぶらりんのまま、
生殺しで日々を送り、
真綿で首を絞められる
ように困窮していく
農民たちを描いた、
恐ろしい小説です。
新潮社の作品集を借りたのですが、
なぜかこの後あの、
『生きている兵隊』*6
が入っており、
この作品についても未読で、
南京アトロシティー
「あった派」「なかった派」
論争がかまびすしかった頃、
2ちゃんでネトウヨが媚中派を
釣るためのスレを立ち上げてた
くらいの知識しかなかったので、
今回初めて読み、ああ、そりゃ、
あったなかった論争にこれを
出すのはお門違いだな、
と思いました。
『鬼が来た!』の姜文は、
当然これも読んだんじゃないかな。
http://book.ssreader.com.cn/ebook/detail_10178035.html
*1:http://www.ndl.go.jp/brasil/data/R/033/033-001r.html
*2:http://www.nippaku-k.or.jp/museum/
*3:http://d.hatena.ne.jp/OdaMitsuo/20110627/1309100460#tb
*4:読書感想 http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20140414/1397443438
*5:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%A5%E5%A4%9A%E6%91%A9%E6%B9%96
*6:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%94%9F%E3%81%8D%E3%81%A6%E3%82%90%E3%82%8B%E5%85%B5%E9%9A%8A