『横書き登場―日本語表記の近代』 (岩波新書 新赤版 (863))読了

横書き登場―日本語表記の近代 (岩波新書 新赤版 (863))

横書き登場―日本語表記の近代 (岩波新書 新赤版 (863))

ええと、元座間在住竹熊健太郎Tweetまとめのサイトで、自動的に紹介されてた本です。
丁度いい機会なので、借りました。

竹熊健太郎氏 『業界関係者が横書きに反対する理由』 日本漫画の海外普及について - Togetter
http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/491524
竹熊健太郎氏の漫画横書き問題を見た希有馬氏が語る『中国嫁日記を縦書きにした理由』 - Togetter
http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/492444
竹熊健太郎氏 『なぜ感情論で反論される人が多いのか困惑しております』 漫画横書き議論の真意 - Togetter
http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/492538
上記URLはすべて、はてブ

頁19
 各単字の正立像は回転させず、そのままで縦書き・横書きができる日本語の表記は極めてめずらしいものであると先に述べたが、梵字も、実は、単字が回転せずに横書き・縦書きどちらもできる特異な文字なのである。が、もともとそうだったというのではない。インドで用いられているうちは、他のインド系の諸文字同様左横書き専用だったのだが、中国にわたり漢文中で漢字と混用されるようになってから、単語を梵字で縦書きすることが生じ、ついにはサンスクリット語の文章全体を縦書きすることもできるようになったものらしい。

これ、本当でしょうか。初耳です。「らしい」と歯切れが悪く、
出展論拠が日本人の空海直筆だけなので、ちょっと信じがたいです。
中国では何故か、漢訳される前の仏典はひとつも見つかっていないわけですし、
漢梵混在文献の実例があるのなら、無知を恥じ入りたいので、是非知りたいです。

また、チベット文字などそうですので、おそらくサンスクリットも、
下から上に書き上げる文字の筆順があるでしょうから、
縦に書き下す際、字体が崩れるような気がします。
頁5図版
同じ縦書きでも、モンゴル文字は、もともと右横書きのウイグル文字(1-1)を、
90°回転させて(1-2)、回転後の字体を正字として再認識していった点が、
日本語と違うと言います。*1
日本語縦書き文章に英単語突っ込むみたいなもんでしょうか。
日本語がなぜ回転せずに横書きたりえたのかは、右横書きと往々にして混同される、
「縦書き一行一文字」文の伝統がバックグラウンドとしてあったから、
と、頁43で推定されています。
(右横書きと縦書き一文字一行の違いは、文節だったか改行だったか複数行だったか…)

結局日本では江戸時代の蘭学輸入、開国以降の洋学流入の2度の変革期に併せて、
大衆が知的好奇心の趣くまま、横書きを右から左へ、または左から右へ盛んに使用した、
ということみたいです。浮世絵やらなんやらにガンガン横書きを取り入れてのめり込んでいく。
安土桃山時代の宣教師は、和文欧文を分離していたので、混交はあり得なかった)

そうなると、例の江戸期から日本の教育水準は高かったから、みたいな
プラウドジャパンの話になるはずですが、
筆者は明治22年京都府兵学力試験成績表のデータ、
受験者7,205名中自分の姓名が書けた者が51.3%のみ、完全非識字者13.6%という数字を挙げ、
教育水準もジッサイはどうなんだか、とバランス発言しています。
私はそのデータを見ると、弱兵関西で、対外的愛国心も盛んでない時代ですから、
現実的打算による徴兵回避として字が読めないふりをした鉄面皮たちが相当数いた、
という推察も可能だと思います。

で、戦前の横書きは右横書きと左横書きがせめぎ合っていたそうですが、
大正年間1925年伝来のクロスワードパズルの横書きは左書きオンリーだったとか、
数字の桁合わせをする際は左横書きで、それは実は、
算盤の玉の並びに慣れた日本人に丁度良かった、としています。
(そろばんの玉の並びが何に由来するかは、中国四千年間不明、"不烧的")

で、戦後、ミズーリ号調印から三年くらいで、右横書きは自発的に一掃され、
左横書きが世の春を迎えたのですが、これは全く強制のことではなく、
日本人が自発的に雪崩をうって動いたそうです。
でも、支那呼称中止の文部省通達だって、文書現存してないわけじゃないですか。
通達があって、のちにうやむやになった可能性もあるかもしれない。
学者はそんなこと言えませんが、野史は、その辺言えてしまう。

最後はワープロから始まるITデファクトスタンダードとしての横書き蔓延で、〆です。
和文タイプライターに触れていませんが、省略なのか黙殺なのか…
ブログも、縦書きブログ、ありますよね。私も実は、それでやろうか相当迷った。
結局以前少し書いて放り投げたはてなで始めたわけですが、
はてなが縦書きフォーマット出したら、使うと思います。たぶん。

で、竹熊健太郎に戻りますが、私も英文版マンガは左右反転してると思ってたので、
現在はセリフだけ横書きで吹き出しに収めていると知り、勉強になりました。

北米マンガ翻訳界10年の進化を見よ!
http://world-manga.at.webry.info/201308/article_2.html
英語版の漫画で学ぼう 試し読み
http://eigomanga.org/preview
アマゾンの英文漫画試し読み検索結果
http://www.amazon.co.jp/s/ref=sr_pg_1?rh=n%3A52033011%2Ck%3A%22Dark+Horse+Comics%22+Manga&keywords=%22Dark+Horse+Comics%22+Manga&ie=UTF8&qid=1401860499
英訳コミックスで英語を楽しく勉強しよう
http://park1.wakwak.com/~english/comics/

まあ、日本語のマンガも、
BAKOOOON とか、ざわ…ざわ… とか、右から左に読み進むマンガのなかで、
左から右に目を動かす擬音や効果音混入してますけど、みんな考えずに読めてるわけで。
『水物語』あたりの内田春菊なんか、縦書きだけど、今みんなブログやメールでやるような、
文節単位で改行という行為を全然してなくて、フキダシに入らないところで改行、
といういきあたりばったりのすごいセリフのマンガを書いていたなあ、と懐かしく思います。
そういうのも考察してほしいですね。こじらせたりせず。では