『すじぼり SUJIBORI』(角川文庫)読了

筋彫りライナー (J-9B)

筋彫りライナー (J-9B)

これはすじぼり違いの道具。尖ってるので画像がときどきマスクされる?
スジボリ用ガイドテープ 3mm (30m巻)

スジボリ用ガイドテープ 3mm (30m巻)

これもすじぼり違い。
すじぼり (角川文庫)

すじぼり (角川文庫)

単行本は2006年11月刊行。第10回大藪春彦賞受賞作。解説:ゲッツ板谷
カバーイラスト/岸和田ロビン カバーデザイン/高柳雅人 

シャッター通りの死にぞこない』を読んで、その作者のほかの本も読んでみようと思い、アマゾンでずらずら表紙を眺めて、この本がいちばんラノベとかBLの匂いがする表紙でしたので、じょし受けを狙った話かつ総会爽快爽やかであろうと推測し、読みました。そうではないかったです。

2018-08-02『シャッター通りの死にぞこない』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180802/1533225309

(0)
中年ヤクザお笑い路線から、さらにライトな、ごくせん路線静かなるドン路線に行ったのかと思いきや、すじぼりの方が古い作品でした。仕方ないです。次は『侠飯4 魅惑の立ち呑み篇』(文春文庫)でも読みます。

福澤徹三 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E6%BE%A4%E5%BE%B9%E4%B8%89
文春公式に載ってる著者2014年の写真
https://books.bunshun.jp/articles/-/2757
ダヴィンチに載ってる著者2015年の写真
https://ddnavi.com/serial/260631/a/
週刊大極宮第431号に載ってる著者2010年の写真
http://www.osawa-office.co.jp/weekly_taikyokugu/431.html

写真を見ると作者はやっぱり説教とかしてくれそうな人ですが、読む方は、例えばビーバップハイスクールの読者の大半はサラリーマンで、晴らせぬ恨みをヤンキー高校生に仮託して夢の中でこぶしを振るったり口答え減らず口叩いていた、の同類項かなと。女性は表紙見て買ってもそんな読まなそう。

(1)
私は銭湯によく行きますので、いろんな絵人間の方を拝見させて頂く機会があるわけですが、すじのかたももちろんいらっしゃいますが、片方の肩だけ完成させてもう片方は生まれたまま(世代によってはBCG)という人もいて、知人だったその人の最後は福岡と聞いています。浮いたとか。

(2)
暴対法施行以後の小説とはとても思えませんでした。徐々に骨抜き弱体化していったのか。今はマルタイとかの人が全然把握できない、構成員名簿提出がないハングレ世界なんでしょうか。構成員名簿提出は散々日本社会の本音と建前の例とか日本通ガイジンから揶揄されましたが、それで暴対法が出来たわけではないと思います。バブルの時代とかに大手企業社員や公務員がガンガンたらしこまれて企業社会の屋台骨までぐらついた?教訓も踏まえて暴対法なのでしょうし、東京都民銀行ですから、どちらがよいとはいちがいには言えないのかなあと。どちらも悪いとか(笑)この本にも、2ちゃん用語のなまぽとか、計画倒産とか、すごい外車乘ってるんですねいやいや金融もんやなんちゃないとかの会話の後、なまなましい内輪話やノウハウが描かれそうになるその瞬間に「おうちょっと前見てみいあいつは…」とか、「カシラ大変です!」と誰かが飛びこんで来てとか(そんな台詞ではなかったかも)、要するに話の腰を折られてそのままになります。そんなです。

(3)

頁204
(略)思わぬ大金が入ったとたん乗り気になった。(略)金がからむとあっさり気分が変わる。
 考えてみれば、あれこれ理屈をこねているのは、たいてい金がないときだ。懐次第で気分が変わるとは、われながら卑しい性分のように思えるが、自己嫌悪に陥るかというと、そうでもない。

 DIOポルナレフに語ったとおり、人間は安心したい生きもので、安定を求めていて、それはお金で得られると考えたり感じたりする瞬間が多いのだなと。

(4)
作者が北九州出身と訊いて、あれっと思いました。この小説読んでいて、あまり博多弁という感じがしなかったからです。大阪弁みたいだと。ニューウェーブ北九州。北九州在住の人が、アパートの駐輪場に行く時は、日本で、拳銃の携帯を許可してほしい街ナンバーワンだと前世紀に言ってました。アウェー湘南戦観戦ついでに飯塚に泊まってタンカ市場に行ってさばのみそ炊き食べる旅行計画をむかしたてましたが、3.11で流れました。

(5)

頁366
「どうしても、いくのね」
「ああ」
「じゃあ、あたしと別れてからいって」
「馬鹿いうなよ」
 菜奈は、なぜわかってくれないのか。しかし説得している時間はない。
「あたし、本気でいってるの」
「すぐに帰るから、待っててくれ」
 玄関のドアを開けると、背後で菜奈の叫び声がした。
 それを振りきるように、外へ飛びだした。

ミッキー安川の50年代アメリカ留学記を読んでいちばん心に残ったのは、ミッキーに献身的に尽くす、彼の成功は自分の成功であるみたいな白人女性に対し「待っててくれ」なんて絶対に云うな、言ってはいけない、と、アメリカ人のクラスメイトたちが口を揃えて忠告する箇所。こういう女性はホントに待つので、それでミッキーが成功しなかった場合、彼女は自分の人生を棒に振ることになる。ミッキーがミッキーの人生で自然につまづいたり失敗したりするのは自己責任だが、他人の人生を自分の人生につきあわせたり巻き込んだりしてはいけない、と。ここ読んで強烈にそれ思い出しました。

2018-08-11『ふうらい坊留学記―50年代アメリカ、破天荒な青春』 (中公文庫) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180811/1533990657

以上