写真 沼田 学 装幀 國枝達也 校正 八木寧子
何かの書評で読んで、面白そうだと思ったので読んだ本。図書館リクエストで半年近く待ちましたが、人気があるからか、コロナだからかは不明です。何の書評で読んだのかなあ。今私が目を通すメディアといえば、痛快!布マスク新聞関連か、ビッグコミックオリジナルくらいしかないので、そのどちらかだと思います。震災復興現場の末端(三次請だか二次請だか)作業に従事する男たちが、それぞれ人生にゴッツンして流れてきた過去があるからこそ互いにやさしくなれるかというとその逆で、弱い者がさらに弱いものを叩いてブルースが加速してゆくような生き馬の目を抜く焼肉定食の世界で、その実情が面白いデスヨ、てな書評だったと思うのですが、読んでみるとそういうものでもありませんでした。
顔が切れてしまった日刊ゲンダイの記事。この娘さんと娘さんを引き取った元妻に仕送り毎月35万送っているのですが、その記述に毎回「精神病を患った娘」と書いていて、ただ娘と書けばいいのに、なんで精神病つける必要があるんだろうと思いました。こういうとこがガテン系の職人たちと合わなかったのではないでしょうか。毎月35万仕送り送って自分の生活費が月5万。併せて月40万の手取りもらっていて、ドカチン作業者としては限りなくシロウトに近いという。主人公をねちねちといたぶりにかかる一派の切り込み隊長は80kgのコンクリブロックひとりで持ち上げてしまうような肉体派のヨイトマケ野郎で、待遇は日給月給なのかな、それじゃいじめられるしかないだろうと。本人は抗弁して、営業職も兼ねていて、現場はほとんど自分がネゴって見つけてきているのだから、手取り月給40万でやいやい言われるすじあいはないとしてるのですが、人間理屈じゃない。とりあえずほかの職人も、ほんとの最低の低の底辺というわけでは全然ない、重機のプロだったりなんだったりの技能集団という位置づけです。
帯
美しい国? 日本が? この話、すべて真実。
石巻、南相馬、福島――
無数の「A」の、憎悪が渦巻く。
住所不定、無職でデビュー。
二〇二〇年度大藪賞受賞作家、初の随筆。
アマゾンの表紙は下が帯になってるので、帯がない表紙の下半分を載せます。
この服はお気に入りみたいで、ほかにも何点か画像が出ます。こんなにおなかぷっくりしてるのか、上のゲンダイの写真を見比べると、確かに出てるようでもあり、これほどではないようでもあり。
以下後報
昭和枯れすすきと、中島みうきの「ファイト!」という題名だったかサビだったかの歌と、あともう一曲出たかでないか、で、奥付にJASRACの許諾番号が見えます。ちゃんとそういうとこはとる時代の人間。でも文字は大きくて行数も少ないです。1ページあたり、35文字かける14行。
たなか亜希夫の『リバーエンド・カフェ』の舞台の街で、こんなことも行われていたとわ。最近渡辺某が利用法を世に知らしめた多目的トイレのもうひとつの利用法、家に居づらい人のひきこもり場所、という機能を存分にいかしていたり、何故かインドネシアの買い物交渉の例が出てきたり、ケッチャムという作家の本を読んでいて、ケチャップの本、料理本だと誤解される部分などがあります。
幻冬舎アウトロー文庫に入れるだろうなという本ですが、いかんせん薄いというか、何故そんな出版を急ぐのかという気もする、もっといろいろ書き込めたろうにという気分になる本です。ボーヴォワールに倣っていうなら、「人は下級国民に生まれて来るんじゃない、下級国民になるんだ」"One is not born, but rather becomes, a lower class people" 年収二千万だったゴルフ場の芝管理会社社長時代の回想は輝いていて、ここだけで本つくれるんじゃいかとも思いました。もっと芝管理の話があればよかったのに、です。バブル紳士の回想録というわけでなく、芝管理という仕事への矜持、誇り、プライドが見てとれた。オーガスタの芝を実体験する話とか。別テーマの話になってしまうのでしょうが、ここがいちばん光ってたのは確かです。以上(同日)