『i』アイ 読了

ほかの人が最近一気読みしたとコメント欄でご教示頂いた本。読んだのは単行本。 

i (ポプラ文庫)

i (ポプラ文庫)

 

書き下ろし。装画は作者。ブックデザイン 鈴木成一デザイン室 読んだのは2017年1月21日の六刷。今の世の中で、単行本六刷も行くものなのか。すごい。

i(アイ)

i(アイ)

  • 作者:西 加奈子
  • 発売日: 2016/11/30
  • メディア: 単行本
 

 たぶんこの人の本は、西野魔女が死んだの作者だと思ったら違った、とか、漁港の肉子ちゃんをブッコフでぱらぱらめくって、さんまと大竹しのぶの映画の低評価レビューを読んだ、くらいでしょうか。『まく子』は何故か映画も原作も読んだですが、題名の前に処女をつけてみたり、およそちゃんとしたレビュアーでなかった自分がいたように思います。

stantsiya-iriya.hatenablog.com

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i 西加奈子 | ポプラ社

私も一気に読みましたが、途中まで、けっこうきつねにつままれたような気分で読んでしまったです。さいしょのほう、主人公の設定がとにかく細かくて、かつ稀少性が強くて、こんなに、ほかとちがった、唯一無二のおいたちを、これでもかと作りこんでゆく原動力が奈辺から来るのか不思議でした。

なんだろう、花京院がDIOと戦いながら、「自分は(他人と)違う」と、スタンド使いに生まれた宿命を回顧する場面のような感じなのでしょうか。いや、それだと単にSF少年たちの、「あ~あ、エスパーに生まれたかったな~」願望の裏表でしかない。八王子スーパー殺人事件のあと、髙村薫がミステリー断筆宣言したように、現実が、空想の介在する余地がないほど殺伐としたシリアルなものに成り下がってしまったとして、そこにあえてフィクションの巨塔を構築するのなら、それはどこまで行けるのだろう、どこまで行けば越えられるのだろう、を模索したあげくの極北なのだろうか、とも思いました。積極的に難民養子を迎えようとする邦人女性という存在も寡聞にして知らず、う~ん疾走してるなあ、と。新幹線ナタ男無期懲役ガッツポーズ、やまゆり園、京兄。

やっと、分かると思ったのが、ガタイが発育よくガツンと成長した時に、黒を好んで黒を着る場面。頁100。黒は細く見えるというセオリー以外に、「落ち着く」という感覚が、はたから見てもしっくりくるように思えたので。主人公はシリアということですが、在日レバノン人女性と、トルコの血を引いた邦人女性と東京で会ったことがあり、やはりガツンとした感じで、黒を好んでいたです。

この本の「シリア」には意味もあるし、「シリア」ならではの展開もあるのですが、主人公以外のシリア人の米国養子というとスティーヴ・ジョブズしか思い当たらない、はさておき、シリアのどこなのか、どの民族なのか、それによって、思い入れもかなり異なるでしょうから、そこまで知る努力を放棄したのは、悔やまれると思いました。もしマロン派キリスト教徒だったらとか、クルド人だったらとか。たとえば、キリスト教徒だったら、とんこつラーメンへのまなざしも、自然、ハラルで豚肉忌避のムスリムとは思い入れ変わるでしょう。ので、悩ましいところだと思いました。

i 西加奈子 | ポプラ社

頁99、ブラッド・ピットアンジェリーナ・ジョリーの三人目の養子、パックス・ティエンの名前を見て、中国かなと思って検索したらベトナムでした。田壮壮(ティエン・ジョワンジョワン)のティエンかと思った。

وفاة آلان الكردي - ويكيبيديا

終盤怒濤の展開のひとつの重要な要素ですが、これも、アンド検索で「やらせ」があり、それをクリックすると、見たいものしか見ない人がそれを見れるという。そういう時代。

Charlie Hebdo Reopens Freedom Of Speech Debate With Cartoons Depicting Death Of Aylan Kurdi | HuffPost UK

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/8/81/Moments_of_Mourn_For_Alan_Kurdi_DI_September_2015.jpg/300px-Moments_of_Mourn_For_Alan_Kurdi_DI_September_2015.jpg

以下後報

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見返し(後ろ)

この本が六刷もいった(もっといってるかも)のは何故か考えて、作者がベストセラー作家だということもあるでしょうが、不妊治療という題材をテーマの一つに選んでいるのが大きいのかなと。シリアよりそっちが強そう。その題材の結末とそのひとつ前の、「これが現実」というような展開の、どちらがエンディングにふさわしいかは異論反論オブジェクションだと思いますし、作者の選択を尊重したいですが、ひとつ前の「これが現実」のドライな、冷めた味も捨て難いと思っています。あくまでものがたりとして。

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 見返し(まえ)

ダーイシュというかアイエスについて。パルミラ壊してたんですね。頁250読むまで念頭にありませんでした。タリバンバーミヤン破壊について私はフンガイしてたのですが、じゃあこっちはなぜ記憶にないのかという…

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主人公が語学でなく数学を選んだのはなんとなく分かりますが、数学が分かる頭脳をお持ちなのがうらやましい。

話が混乱するから絞ったのだと思いますが、デモでナンパする年上男性が元嫁と子どもについて、もっというとフリーカメラマンの収入で養育費どうしてるか、について、掘り下げられなかったのは野次馬的に残念です。触れると主人公のジェラスについても書かねばいけなくなるから切ったと解釈してます。

3.11の後、東京と日本の福島第一とを混同した海外の言説があったなあ、と、そのくだり読んで思いました。韓国とか、今も引き摺ってるから野菜も魚も日本産はアレだし、処理水吞め吞めなんだろうと思います。キバヤシのひとが大阪に逃げてホテル暮らししてたとネットの噂で見ましたが、ほんとかどうか知りません。森進一の親御さんについて、フォービドンだと以前うわさされていたのが、NHKファミリーヒストリーでどどんと放送されて、平成26年北朝鮮清津の街角風景まで見れて眼福というさくこん。

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そういう話になったので続けますが、親友の権田さん、最初、権田姓なので、韓国のクォンさんかなと訝しんでました。老舗の佃煮屋のごんださんだそうで、いやあ、ここは自分の色眼鏡が試された瞬間でした。

以上

(2021/5/31)