『雪が降る』"It's snowing." by Iori Fujiwara(講談社文庫)読了

カバーデザイン 多田和博 カバー写真 (株)リーブラ 初出はすべて小説現代。1995年から1998年にかけての短編むっつ。うち、『銀の塩』『ダリアの夏』は単行本化に際して加筆補正。単行本1998年6月、文庫本2001年6月。英題はグーグル翻訳。

『テロリストのパラソル』の主人公の前日譚が入ってるというので借りました。解説は黒川博行。そうとう仲がよかったことがうかがえる解説。ガンの公表が2005年ということですので、まだぜんぜんそういう予感がないかった時代に書かれた解説だなと。

<解説から分かること>

・愛称「イオリン」本名RIICHIを読み替えるとIORIになるからだそうで、そうはならないと皆知っていても本人にあわせているとか。つまり本人が自分の愛称を提唱して、まわりにそう呼ばせていた。

直木賞受賞後は麻雀が弱く、ケツの毛までむしり取ろうとする周囲(黒川博行白川道)がいる一方で、編集者から "F資金" と呼ばれていた。

藤原伊織小説の主人公がストイックなのは、本人が逆だからと本人による分析。

・ビールを五、六本飲むと必ず寝てしまう。ナルコプレシーではないと思います。私も寝てしまっていたので、そこは分かる。でも私は一時間半ほど寝ると起きて、その後自力で帰った。

藤原伊織は高校時代美術部で、何度も入賞するほど絵がうまかったが、頭もよかったので東大に行った。そりゃ電通に入れるわけだ。

・本人によると、美術と小説は似ているという。私には分かりません。

黒川博行 - Wikipedia

上記後妻業ウィキペディアによると、後妻業は京都芸大で、やっぱりバクチ好きで、東野圭吾も後妻業イオリンの交遊グループに入っているとか。本書を読みながら、ベストセラーはみなツボがいっしょということなのか、東野圭吾を連想させるところもあって、なんとなく納得。

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藤原伊織サンで検索すると、本書解説者のみならず、イヤンジ、否、さぎさわめぐむが出るので、へーと思い、アンド検索すると、こちらも濃い交友関係だったとウィキペディアにありました。

鷺沢萠 - Wikipedia

鷺沢萠公式ブログは移転して、また日記など非公開になっていて、藤原伊織追悼文は日記に入っているのか、見つけていません。こういうの見ると、没後もウェブ空間で生き続けることの難しさ、はかなさを感じます。

下は逢坂剛の追悼文的なもの。

books.bunshun.jp

下は、松島恵介という人の追悼文。

www.j-cast.com

最初の『台風』という話は、バブル崩壊後のワンルームマンション販売と不動産業、プールバーなどというものが出来る前のビリヤード場についての話。そんなに屋上屋を重ねるみたいにネタをつぎこまなくてもいいのに、と、少し思いました。頁17、隣の部署の同格が、移動したかつての部下に、今でいうパワハラを昼夜たがわず注ぎ込むので、やんわりさしとめようとすると、「内政干渉」と言われる場面があります。またかと思いました。この世代好きなんですね、この言葉。

次の、『雪が降る』は、イオネムリン先生の古巣、広告業界がモデルと思われる話。頁83、「ベタ付け」が分からなかったので、検索しました。

景品規制の概要 | 消費者庁

「全プレ」みたいなものでしょうか。でも今の全プレは、応募券に加えてお金を払って着払いで限定生産品を送ってもらうものなので、ここでいうノベルティーの上限なんかは関係ないのかも。で、解説の黒川博行さんは、この話読んで、出てくる映画、リバー・フェニックスの『旅立ちの時』を見てみようと思ったようで、私も検索して、ブルーレイって配信全盛の今では、CD後iPOD後のDATやMDのような位置づけに成り下がりつつあるなと思いながら、千円DVDをポチったです。購入前にウィキペディアで、ネトウヨ脊髄反射映画だと確認してはいたのですが、奥田英朗の『サウスバウンド』みたいなもんだろと思ってみることにしました。サウスバウンドはトヨエツと天海が夫婦。

旅立ちの時 (映画) - Wikipedia

主人公の両親のモデルは、1970年代に政府ビルの爆破などのテロ行為を行った過激左翼グループ「ウェザーアンダーグラウンド」の指導者ビル・エアーズと妻のバーナディン・ドーンとされる[1]。

こういう映画に出てたから、こういう家庭環境に育った?ライバーくんの薬物中毒が加速したわけでもないと思います。ホアキン京王線喫煙に関係ないがごとく。

銀の塩』が、『テロリストのパラソル』の主人公の前日譚。安アパートの隣室がベンガル人で、そのベンガル人はオーディオマニアで、かつ語学センスが並みでないので、アキバでその道のオタク相手の仕事につけていて、職場の軽井沢の保養所に、よくしてくれたよしみで主人公を連れてゆくが、という話。だからベンガル人とかそんなにネタを詰め込まなくてイイデスヨと思いました。以下この話に出てくるベンガル語カタカナ表記の検索結果。

「おはよう」シュプロヴァ সুপ্রভাত shuprobhat 

「ありがとう」ドンノヴァ ধন্যবাদ dhonyobad 

「おやすみなさい」シュボラトリ গুড নাইট(男性形だそうです)schubho ratri

「こんにちは」シュボデュプール これは出ませんでした。回教徒ならアッサラームアレイクム、そうでないならノモシカール(নমস্কার. )だそうで、一致しない。

なんとなく、ローラってベンガル語どうなんだろうと思いました。

トマト』はショートショートで、不条理です。この話だったか忘れましたが、「プッツン」という単語が出た気がします。JOJO三部で丈太郎がキレる時「プッツンするだろうということだぜ」と言っているので、その用法は後続の世代に、使わなくても理解はされてると思うのですが、石原真理子はプッツン女優、みたいな用法は忘れられたままだと思います。

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こんな時期に赤くいろづいた、うらなりハウストマト。食べれるのでしょうか。

紅の樹』ハードボイルドだど、みたいな話。暴対法施行後に書かれたみたいで、しかしまだあまり法が浸透してなかったころであろうと思われます。塗装工の仕事(段取りなど)よく調べて書いてるとか、格闘シーンの流れるような描写の見事さなど、レビューでも解説でもホメてます。囲炉裏ンのひとが、小説と美術が同じと言ってるのは、絵コンテというか、プロットについて語っているのかもしれません。最後のフレーズとか計算づくで、その辺が理系作家東野圭吾を連想させるのかも。ここで自由律俳句を一句。咳しても電通

東急田園都市線で職人やワケアリシンママがひっそり生息するアパートのある街、という舞台設定について、作者が自分の住んでる川崎を念頭に置いて、たとえば溝の口郊外や二子新地を想定してるのか、あるいは飛んで長津田あたりを考えたのか、知りたいところです。

ダリアの夏』ふしぎなんですが、なんで皇帝ダリアは晩秋の今、花咲くんでしょうか。少年野球と、髪結いの亭主と、そういう人が働くのかと思ってしまう、車持ち込みのお中元お歳暮配送アルバイト。もう配送がなくてヒマなので少年野球を見ながらビール飲んで、車は後で取りに戻ることにして、歩いて帰庫しようと考える場面は、オイオイ飲んで伝票処理とかマズかろうよ、吐く息でバレるだろ、と突っ込みたくなりました。頁305。ホントに突っ込むと、こちらに向かって、経験ありますけど一度もバレたことないですね、と真顔で強く否定してきそう、に2,000ペリカ

リバー・フェニックスの映画がテロリスト映画なのが、この人の原点ぽくて、なんともと思いました。別に昔の女とヤリたい人にもみえないんですが、なぜだろう。以上