『犬になった男』 ཁྱི༌འུས༌ལ༌ཞུགས༌པའི༌རྣམ༌ཤིས། "A man turned a dog." ཨེ༌ཉིམ༌ཚེ་རིང་། E. Nyima. Tsering 艾・尼玛次仁 / 『チベット幻想奇譚』བོད་ཀྱི༌འདྲེ༌སྒུང༌ངོ༌མཚར༌གཏམ༌ཚོགས། "Tibetan Fantasy Tales"より 読了

チベット幻想奇譚|星泉 チベットの現代作家たちが描く、現実と非現実が交錯する物語

装画・扉絵 蔵西 装釘 宗利淳一 ←クギの字を使った「装釘」は、暮らしの手帖などに使われていると、ほかの方のはてなブログで拝見しました。

収められている十三の短編の、一個一個の感想の、七個目。第二のチャプター「Ⅱ 異界 / 境界を越える」カテの作品。三浦順子サン訳。初出不明。2011年甘粛民俗出版社から出た『石と生命』《石头与生命》が底本。その本は甘粛省から出ましたが、ご本人のエ・ニマ・ツェリンサンはメインランド・チベットの山南、ウーの人です。

人間が犬になるというと、中勘助の『犬』が有名で、銀の匙をくわえて生まれてきたくせに、おお、どうしたこと、としか言えないのですが、アイ・ニマサンのこの話は、かわいい仔犬に生まれ変わります。わんこ。わんわん。でも前世は因業おやじ(らしい)

犬 - 岩波書店

回教徒軍の若い隊長に思いをよせる女の告白をきき,嫉妬と欲望に狂い悶えるバラモン僧は,呪法の力で女と己れを犬に化身させ,肉欲妄執の世界におぼれこむ.ユニークな設定を通し,人間の愛欲のもつ醜悪さを痛烈にえぐりだした異色作「犬」に,随筆「島守」を併収.著者入朱本に拠り伏字を埋めた. (解説 富岡多恵子

犬になる、ならないは別として、自分の死後、家族や友人たちが豹変するさまを見てしまう話として、自分が印象に残っているのは、笹沢佐保『幽霊』という話です。お約束の、実はあいつもこいつも自分を裏切っていた、面従腹背だった、裏で舌を出していた、のあとに、かなりオッサン好みのほんのり甘いオチが置いてあります。こういうふうに書いてもいいんだよ、の見本みたいな話。笹沢佐保を研究されている個人の方のブログを見ると、1974年1月のオール讀物に掲載され、1977年にでた『午前零時の幻夢』という本に収録されてるそうで、しかしカイガイ出版部という聞いたことのない出版社ということもあってか(大誘拐なんかも出してたそうなので、ミステリ関係者には知られた存在だったのでしょうけれど)ぜんぜん検索で見つからず、私が読んだ講談社文庫のアンソロジー『闇のなかのあなた ミステリー傑作選10』日本推理作家協会編1980年刊が、古書で見つかる程度でした。笹沢佐保の現代ものというと、なんかエロいと思ってたのですが、そうでもない話も書いてたんだなと思った覚えもあります。

このテーマはみんな考えると思いますので、チベット人作家だとこう料理しますた、を楽しむのが吉で。以上

【後報】

私が打ち込んだ『チベット幻想奇譚』の、チベット文字がいちぶ違ってるとご教示頂きましたので、つつしんで訂正します。まだほかにもあるんだろうなあ。

✖: བོད་ཀྱི༌འདྲེ༌སྒུང༌ངོ༌མཚར༌གཏམ༌ཚོགས།

○: བོད་ཀྱི༌འདྲེ༌སྒྲུང༌ངོ༌མཚར༌གཏམ༌ཚོགས། 

 

トッホッホ。(2022/11/16)