『淀川でバタフライ』"Butterfly at Yodo River" renamed "Pure White Ahead"(OSAKI-MASSHIRO)⇌(OSAKI-MAKKURA)"Dark Ahead"(講談社文庫)

カバー装画、イラスト 原マスミ カバーデザイン、デザイン 松昭教(ブックウォール) 写真 著者 2003年扶桑社刊『お先、真っ白』を改題加筆修正、書き下ろし追加で2009年文庫化。

脱OLで退社した専業ライターの著者が、ネタに詰まって心機一転、初心に帰って原点の淀川でバタフライを試みる、話かと勝手に勘違いして読みましたが、まだ東映在籍時で、シノヤンとの恋が始まったのか始まってないのかの時期のエッセーをまとめた本みたいです。文庫本では日芸同級生のクドカンに帯を書いてもらって謝辞してますが、2003年の単行本だと、大学時代から目をかけてもらったという島田紳助への謝辞があったかもしれません。

クドカンの文庫本帯推薦文

たかのてるこは、きっとなんかの天才なんだとおもう。なんの天才なのかは……ごめんなさい、ちょっとわからないです

お先真っ暗って英語でなんて言うの? - DMM英会話なんてuKnow?

「お先真っ暗」の英語・英語例文・英語表現 - Weblio和英辞書

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繰り返しになりますが、たかのつながりで高野秀行の例でいうと、『腰痛探検家』とか『国内自転車旅行』的な本かと思ったので、そうでないのは残念閔子騫でした。ですが、これはこれで、貴重な青春の1ページで、とても初々しいです。

ガンジス河でバタフライが旅のバイブルとは寡聞にして知りませんが、講談社が盛ってるだけだと思います。

巻末の講談社文庫新刊紹介や、講談社文芸文庫新刊紹介、講談社文庫既刊ラインナップ(の一部)アカシックレコードの明石散人がいたので、あーほーへーとパチリ。

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この映画の冒頭で吉川晃司が東京湾をバタフライで爆泳するんだそうで、それを見て著者は人生を決めたそうです。

その後は母親のエピソードが続き、いかに母親が奇人変人かが力説されるのですが、五十過ぎて腹話術師になって松竹芸能だか吉本に所属したと『ガンジス河でバタフライ』で読んでるので、何が来てもさほど驚かなかったです。むしろ、凡庸に描かれる父親が、著者幼稚園から小学校卒業までずっと海外単身赴任で、夏休みと正月しか帰国せず、英語、ドイツ語、中国語、韓国語がしゃべれて、75歳を過ぎても、毎年一回、一ヶ月以上ヒマラヤトレッキングに出かけ、その間ずっとシュラフとテントで過ごしているという、まともに書いたら著者のバックパック旅行なんか簡単に吹っ飛ぶのではという人生で、しかしこの人は淡白すぎて自分のことを語ろうという欲がないので、それでやっぱり、世俗に関心が疎い人物として、そのままスルーされています。そういう人もいるんだなあ。

下記は著者のおかんの人の本。まだバリバリ入手出来るようです。

その後、東映という会社の仕事とか人間関係の話になります。レーシック手術のくだりは、私はレーシックの麻酔は注射針を眼球に突き刺すと聞いていて、おえんと思ってたのですが、点眼薬で麻酔が出来るそうで、なあんだとほっとしました。それなら私も受けてもよかったかな。本田圭佑のように言われるのも困りますが。レーザーで焼くとき眼球を固定する器具を入れようとして入らず、まぶたをメスでちょっと切開する場面があり、まぶたの会陰切開やあとセクハラまるだしの感想を持ちました。

「ブツ」という日本語の使い方が、薬ブーツとはちがう使い方で、おかしかったです。

頁165

「ってことは、アンタ、男の私のブツを見たんだね?(略)

「それがね、ねえさんのブツったら、それこそマンガに出てくるみたいな、メチャクチャちっちゃいポークビッツでさ。(後略)

男性器のこと、ブツって言いますでしょうか。アベサダみたい。

頁195

 女子の場合、立ったまま用を足すことができないという身体の構造上、女子トイレは全部が個室。つまり、自分の前に使用した人が「実のある方」をした場合、ブツの臭いを嗅がされながら用を足さざるを得ないことが多々あるのだ。

大便もブツ。ぶつぞう。どうぞう。中国のトイレに触れないのは、行ったことがないからかもしれません。

高校時代の思い出で、ユン・ピョウの大ファンだったくだりがあります。朝日放送の「おはよう朝日です」にユン・ピョウ生出演と聞き、あらゆる手立てを駆使して(と言っても「おはよう朝日です」担当者を電話で口説き落としただけ)スタジオ生見学し、楽屋に帰る本人に直撃しなくていいの? と逆に担当者から鼓舞され、握手とサインをもらいに行きます。高校時代からすでに業界で生きていけるだけのスキルがあった。これが今だと担当者にJKの武器を駆使してみたいな、ろくでもないコンプライアンス違反の例になってしまうでしょうから、バブル時代でヨカッタデスネとしか。でも、こんな人がバブル期に就活で50社落ちるのですから、下宿女子を落とす慣習って、ほんとひどいと思います。私は京都在住時「目覚ましテレビ」派で、アンチ「おはよう朝日です」派でした。なんでかというと、時刻をお知らせするのに、いちいちそこだけスポット出演のねえさんが木琴か何か叩いていて、わざわざ人力でライブでやることか、とものすごく疑問で、それで自動的にお知らせ表示する目覚ましテレビを見ていたです。おはよう朝日ですのねえさんは、なんていうか訴えかけるような眼をしていて、だんはんもあてを、このスポットの数秒だけでギャラのおぜぜがもらえるんやろ、うらやましいこっちゃ、とおもてはるかもしれません、でもこれはあての意志やないんどす、かんにんえ、誰かあてを連れて逃げてくれよし… とでも読唇で言われてたらこわいわと思って、それで見てませんでした。

高校時代文化祭のクラス出し物で映画製作して上映し、校内大ヒットを勝ち得るくだりも、さすがのちの東映社員と思いました。こんな人がバブル期に就活で50社落ちるのですから、下宿女子を落とす慣習って、ほんとひどいと思います。大ヒットしたのは、いまふうの言い方でいうなら、クラスの陽キャ中の陽キャともいうべき、進学校の全国大会出場部であるビー部の部員に声をかけて主演を承諾させ、それが勝因だったとのことですが、その映画の山場も淀川へのダイブで、しかも十三大橋からということで、さらにいうとかよっていた高校のビー部は一個上が橋下徹だったとあるので、北野高校かよ!!!とメチャクチャ驚きました。

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北野高校って十三にあるんですね。新宿高校も歌舞伎町にないのに、えらいこっちゃ。横浜中華街の隣にも県立高校がありますが、どういう高校か知りません。

ビー・バップ・ハイスクール (1985年の映画) - Wikipedia

橋げたから川へ飛び込むというと、映画ビーバップを思い出し、たかのサンが東映に入ってビーバップのダイブ企画通したのかと思いましたが、それだとたかのサンはタイムトラベラー。ビーバップが先で、たかのサンダイブのが後でした。

この、ビー部の部員は、一留のち京大を卒業して東京で就職することになり、その時には自分が発起人となって学年全員、三百人からの大同窓会を企画して仕切り倒します。これまたすごい。

頁276

(前略)『花より男子』の道明寺に相当する実在の男を、私は牧野以外に知らない。

私は『花より男子』を「はなよりだん」と読むので、「はなよりだん」ですと訂正されるのですが、百歩譲って「だんこ」と読んでも、「だんご」とは読まれないだろ~、そんなんで育ったオバハンが子育て世代になった時キラキラネームが市中を席捲したんやから、やっぱここでルール無用が始まったんちゃうんけ、くらい思わなくもないです。「道明寺ってそんなすごいの?道明寺」「落ち着いてください。いうても松潤ですよ、松潤

この青年はそれからほどなくして事故で急死します。事実は小説より奇なりで、ここが本書のクライマックス。

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私は「花より男子」は見てないので、観た映画の中で、類する映画というと、台湾映画の上のかなあという感じです。牧野という同級生男子の死について、著者はまほりんという名で呼ぶ、よしもとばなな(本名真秀子まほこ)サンに話してます。単行本で読むと、島田紳助にも話してるが、文庫化のさいカットしてたりして、と、心の狭い妄想を抱きました。ラオスルポの文庫化カット場面の件があるので、つい気にしてしまう。

その後受験の話があり、日芸は国語と英語の2教科受験で、試験もマークシートだったとあり、芸大なのに実技ないのかよと思いました。多摩美ムサ美は実技あるのに。それなら豊玉に行かなくても、玉川大学芸術学部でもよかったのではないかと思います。神奈川の町田に通うことも出来るわけですし。和光だとどうだろう。知りません。

前後しますが、下記は、やはりバックパッカーだった著者の長兄が、進学かブラブラか悩む妹に告げることば。

頁295

「たとえば、オレが『中国はこんな国やった』って、具体的に話すとするやろ? それはあくまで、オレ個人の体験による中国のイメージで、ある一部分に過ぎへんのに、中国に対するイメージの少ないおまえが聞くと、それが中国のイメージのすべてになってまうんや。オレは自分が何か話すことで、おまえの中国に対する先入観を作りたくない。ほんまに知りたいんやったら、いつかおまえが自分で行けや」

大正論で、「一番行った国でよかった国はどこ?」「行った中でいちばんおいしかった食事はどこの国?」と聞かれるたびに、どこも一長一短と相対化してしまう御仁は、私も含めてみなこう思うはずですが、相手はそんなこと求めてなくて、話し手の個人的な意見を求めているわけなので、こういうの悩ましいです。自分が、なるべく相手が誤解しないよう、かつユーモラスに話すすべを身に付けられていればいいのにと願う。

こんな感じでしょうか。父方の祖母と母方の祖母がどちらも90歳前後でピンシャンしてて、京都で一人暮らししてるというくだりも面白くて、それなのに母も自分もコテコテ?の大阪弁で、京都弁ではないあたりも、らしいな~と思いました。でもここは蛇足。以上です。