ガマの聖談 : 人生に関する珍考漫考 (光文社): 1968|書誌詳細|国立国会図書館サーチ
いちいちおもしろい本なので、全二十六話を一話ずつ感想書きます。今回はまえがきと、第一話。
「まえがき」によると、著者も五十代までは粗チンを振り回していたそうですが、知命の五十歳を過ぎてから鍛えはじめ、刊行時の七十五歳でも「バリバリの現役」でいられてるんだそうです。しげの秀一「バリバリ伝説」に遡ること二十年前、すでに「バリバリ」ということばはあったんですね。
なぜ鍛えるかというと「女の魂を天外に飛ばす」ためだそうで、チャウ・シンチーが映画皇帝ミッションでやった《天外飛仙》ティンゴイフェイスィーンを思い出しました。
頁4
ほんらい、その道には、秘策とか、秘伝というものは、そうあるわけではない。当たりまえのことを、当たりまえのようにやってこそ、本来の道がきわめられるものなのだ。
そうはいってもこの人は合気道八段です。モノがちがう。
「第一話ー女は何歳までたのしめるか」一行目から、孔子は七十歳を過ぎてから若い女に子どもを産ませたと書いていて、初耳でした。孔子の死んだ七十三歳より二歳ながく生きている著者は、三人や五人の女性を相手にするだけのスタミナがあるので、その点だけ比較すると、南喜一>孔子なんだそうで。
小見出し:泣かず飛ばずの財界四天王
そのバロメーターは、小便がどれだけ飛ぶかで、ガマサンの放尿は最大時軽く約二メートル飛ぶそうです。なので、性交は週二回以上、相手は複数とか。
そこから、著者は工業と農業、工業と漁業の対立問題の解決を佐藤総理に強く要望しているという話になり、そこから講演会では猥談がウケるので猥談ばっかしになって、しまいには質問コーナーで、女性は何歳まで楽しめるかという質問を受け、タイトルにつながるわけです。ガマサンの回答では、女性はいくつになっても性欲はある、だとか。
小見出し:悲願、ババキラー
婆専のナンパ師が銀座で上京ショッピングの老婆をナンパするさま(老婆は娘の介添えで銀ブラしているのだが、ナンパ師は娘に目もくれず老婆に声をかける)を語り、別の話で、ガマサンの知人の母親の八十二歳老女が、知人の部下の五十代男性に口説かれていい仲になり、あげく淋病をうつされ、六十近い知人はショックで口もきけなかったと語っています。
小見出し:ラブ・ミー、お婆ちゃん
老女が腰痛を訴えたのが原因でコトが発覚するのですが、そこに、「医者がしょっぱい顔をしてる」(頁14)という形容があり、「しょっぱい」という形容句が当時からあることが分かりました。「しょっぱい」というと、プロレス自体時代の北尾光司を思い出すのですが、この人もお亡くなりになってもう十年以上たちます。人は死に、時は過ぎる。
上は、2019年6月28日の記事。
ボーツー先生と福田和也の下記書評対談に登場する本。カーリルで県内図書館に蔵書があると出て来るので(白帝社版かな)公序良俗には反してないと思うのですが、他館本リクエストで数回なしのつぶてだった本。最近思い立って、日本の古本屋で、愛媛の古書店さんから、てごろな値段のものを購入しました。七百円。送料三百円。計千円。
stantsiya-iriya.hatenablog.com
裏表紙のサンケイ新聞フジテレビ会長(当時)水野成夫サンの一文は、著者ウィキペディアの記述を裏付けるものです。
著者ウィキペディア
(略)1940年転向仲間の水野成夫と古紙再生会社「大日本再生製紙」を設立する。1945年には宮島清次郎が社長を務めていた国策パルプと合併し、同社の常務取締役となる。(略)
(略)経営が悪化した同球団をヤクルト本社が買収したこの一件について、当時は「水野の窮地を盟友の南が救った」と言われていた。(略)
カバー折。田中一光のデザインとは。目次の次のページによると、本文さし絵・藤城清治だそうです。そんなそうそうたるメンバーが、このエロトーク集に結集したと。
まえがき(昭和四十三年一月二十五日)によると、このトークは、光文社の雑誌「宝石」に昭和四十年十月号から昭和四十二年十一月号まで二年にわたって連載したものをまとめたとか。すでにオープンリール*1の録音装置は普及していましたが、まあ、ライターと編集者にご本人がざっくばらんに語って、ライターがそれをメモして、だいたいな感じで文章に仕立てあげたんだと思います。そのほうがラクだし、ライターも腕が揮える。
奥付 昭和43年2月15日初版で、読んだのは同年7月1日の37版(37刷)左上に神吉晴夫サンの名前が見えます。カッパブックスの生みの親はもちろん、「戦後最大の出版プロデューサー」©Wikipediaだとか。
神吉晴夫のベストセラー作法十か条
1. 読者の核を20歳前後に置く
2. 読者の心理や感情のどういう面を刺激するか
3. テーマが時宜を得ている
4. 作品とテーマがはっきりしている
5. 作品が新鮮であること。テーマはもちろん、
文体や造本に至るまで今までお目にかかった
ことがないという新鮮な驚きや感動を読者に与える
6. 文章が読者の言葉遣いであること
7. 芸術よりモラルが大事
8. 読者は正義が好き
9. 著者は読者より一段高い人間ではない
10. 編集者は常にプロデューサー・企画制作者の立場に
立たねばならない。先生の原稿を押し頂くだけではダメ
右上の伊藤整『文学入門』と、サラリーマン目白三平シリーズがカッパブックスの最初だったそうで、この巻末広告を見ても、ミッキー安川のアメリカ留学記、三笠宮殿下のご著書、中帰聯の三光作戦、関川夏央も読み込んだ『にあんちゃん』、わだつみの声、川喜田二郎のヒマラヤもの、ゾルゲ事件連座の尾崎秀実『愛情はふる星のごとく』と、実にバラエティに富んだラインナップになっていて、驚きます。私もこれらの本は読んだり積んだりのはず。
以上