『ポンコツ一家』"PONKOTSU (JUNK) FAMILY" by Nishioka Sumiko にしおかすみこ 著 読了

ビッグコミックオリジナル連載『前科者』に出てくるまんが本。ビッグコミックオリジナルは今、別のまんがで介護ねたを、成人後見人制度を悪用して認知症老人の資産を合法的に横領する弁護士の話として連載していて、『前科者』には介護士も出るのですが、それに関してはスルーして静観してます。同意して「そうだ国が悪い! 異議なし!」とかはやらない。

装丁 鈴木久美 装画・挿画 西淑 あとがきあり。講談社の女性向け椀テーママガジンフラウのウェブサイト「FRaU web」2021年9月~2022年9月公開記事(毎月20日更新)に加筆修正、書き下ろし5本を加えて、18話収録。今でも連載は続いてます。

ポンコツ一家 | FRaU

あとがきに編集への謝辞はあれど、編集者の個人名が書いてなくて、しかし本文が始まる前に、おそらく編集者の注釈書きがあります。必要な一文。

頁6

当然のことながら、病気や職業や配偶者の有無でポンコツと呼ぶということは一切ありません。どんな状況にあっても、一生懸命生きている誰もが、ポンコツではありません。ただ、にしおかさんにとっては家族全員がポンコツなのだといいます。ではどういう意味でポンコツなのか――。にしおかさん自らの筆で綴っていただいているのが本書です。(原文は一行改行)

傘寿の母親が軽度の認知症で、要支援認定は本書段階では取れてない。にしおかさんの日々のルーティンワークがすさまじいので、なんとなくなおざりになっている。ひとつちがいの姉は作業所に通うダウン症のひと。父も傘寿越え、定年まで勤労サラリーマン、現在は毎日外で飲酒して帰ってくる日々。酔っ払いだが本書時点ではアルコール依存症ではないとはにしおかさんの見立て。

「ポンコツ」の英語・英語例文・英語表現 - Weblio和英辞書

「ぽんこつ」の英語・英語例文・英語表現 - Weblio和英辞書

英題は上から。英語にすると、未読の下記まんがと同じになってしまう。

日記にも書きましたが、私はこの、「に~し~お~か~す~み~こ~だ~よ~」の人を見なくなったのは結婚出産育児をしてるからだと勝手に思っていて、ただたんに仕事が減ったからだとは思ってませんでした。まさかヤングケアラーならぬアラフォーケアラーしてたとは。

にしおかすみこ - Wikipedia

プロフを見ると、小朝師匠の弟子だそうで、小朝師匠は気難しい人という印象ですので、こういう人と、好むと好まざるにかかわらず相性がいいのがにしおかすみこという人なんだろうなと思いました。家族とのやりとりから春風亭小朝サンとのやりとりが透けて見えるような。

頁71、にしおかさんはその話の五年ほど前に子宮筋腫で入院手術してるそうで、ここはちょっと唸りました。地域包括支援センターの人が、「どこから手を付けていいか分かりませんね」と苦笑するしかない状態以外の、個人でしょっていること。母親は娘の手術を先月の話と誤認しつつも、甘いもの断ちや願掛けをしたと話します。たしか定年まではバリキャリの正看だったのかな。

頁39、千葉の実家に帰って徹底的に家の掃除をしたにしおかさんは(父親は見て見ぬふりで飲み歩き、姉は風呂にも入りたがらないわけなので、それで母親はおそらく老人性の鬱から、ゴミだらけのコタツでかろうじてのスペースだけ確保して、日夜何かに怒っている)友人のダイビングスクールでアルバイトを始め、「電話番でオタオタし、グッズの発注ミスを繰り返し、PCにお客様の名前と個人情報を一段ずつズラして入力する」事務職ぶりだったとか。そんなにしおかさんを置いてくれた友人に「感謝しかない」とか。友人とつながっていれることにも感謝だと思います。家族だけだったら、閉塞する。

頁24、母親は二型の糖尿病でもあり、「ストレスでなってね、甘いものなんて全然食べてないのにね~ホホホホホ」なんて言ってます。こういう広範な土壌が背景にあって、病名の言い換えが模索されているのでしょう。

medical.nikkeibp.co.jp

medical.nikkeibp.co.jp

にしおかさんは免許がないようで、庭付き一戸建てから、母親の病院への付き添いは、徒歩だったりタクったりで行きます。ここは書いてないので、なぜ運転しないのか知りません。

本書のもとになるウェブ連載を始めるにあたって、頁182「家族に内緒で家族を売った」とまでにしおかさんは書いてます。ここも読んで考えるところありました。あんましブログで家族や職場の悪口書いてる人は、身バレしなくても、自分で自分の首をしめるのか、途絶えますよね。またそれを面白く読む層というのも、どんなんだろうなあという。包括支援センターで、同じような境遇の人たちの集まりを紹介してもらって、そういう閉じた場所ではけるのなら、不特定多数から見られる場所はおすすめされないだろうし。

頁183

(略)生活費を稼ぎたいんだ、この先介護するにもパソコンひとつで家で仕事ができたらいいだろう、(略)書くことが好きなんだ、(略)

結局母親からは、ウチはどこにでもある「ボンクラ一家」だということで承認を得ます。ポンコツからボンクラへ。

「ボンクラ」の英語・英語例文・英語表現 - Weblio和英辞書

「ぼんくら」の英語・英語例文・英語表現 - Weblio和英辞書

女性が多い家族の常として肩身が狭い父親は、「パパクソ」と呼ばれています。マレーシアやインドネシアで肉団子を指す、閔南語が訛った言い方「バクソ」を思い出して、おかしかったです。

ja.wikipedia.org

頁136

「……そう……すみこ。ああ、こう言えばいい。孫だいたら、ママいろいろ治ると思うって伝えてください。これが一番こたえるはずだから」

 こたえた。

身内がいちばん容赦ないという話。キツいです。以上