『アルコールとうつ・自殺――「死のトライアングル」を防ぐために』 (岩波ブックレット)読了

出たばかり。各種データに基づき、考え抜かれた、良書です。
フィンランドの自殺予防の取り組みが我が国で紹介される時、
わざとかどうか、アル中対策の箇所がすっぽり抜けていることが多い事実の紹介など、
否認の病を否認する社会についての作者の強い思いが伝わってきます。
また、中川昭一について頁を割いているのも印象的でした。
本書も触れていますが、アルコール健康障害対策基本法成立が、
本書の出版契機のひとつに違いなく、これから一億総高齢化社会を迎えるにあたって、
生きがいが特にないだけで酒で空白を埋める愚にハマる老人が大量に出ないよう、
こうした静かな啓蒙活動は進められていくのだろうと思います。

チェックリスト【C.A.G.E.】
http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/pdf/nomeba140310.pdf#page=4
http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/index.html
http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/pdf/nomeba140310.pdf
http://ikiru.ncnp.go.jp/ikiru-hp/10kajo.pdf

読むだけでじゅうぶんです。なにか抜き書きしようとは思いません。
ただ、福祉につながるかどうかで自殺率や断酒率に変化はありやなしや、
のデータがもしあれば、みたかった気がします。本書の主題からブレるかもしれませんが。

【後報】
上記を思ったのは、無職の自殺率の高さや、借金要因のそれの高さの記載があったからです。
ただ、三十万の借金で自殺してしまうなど、
なんらかの理由(ケミカル?エタノール抑うつ?)で、
明らかに判断能力が低下したり、生きようとする自然の本能のにぶり、
遮蔽があるケースがあるのではないか、とのことでした。

で、追記しますが、この本はまえがきで、
チャンドラーとヘミングウェイの晩年と酒と鬱の関係(至破滅)から始めているように、
中高年男性とその飲酒習慣、飲酒通念と、欝自殺について警鐘を鳴らす本です。
女性のほうがアルコール依存になりやすいとほかの本には書いてありますが、
乱飲酒依存と鬱自殺との関係において、本書では男女比でかなり違うというデータを記載し、
対象として中高年男性、未遂なしで一発で決めてしまうタイプの男性に警鐘を鳴らしています。
また、女性に関しては家族の立場への記述もあります。
ACとそうでないアル中の違いについても、かなり整理して記載された印象を持ちました。
(2014/5/18)