『ハーツ・アンド・マインズ ベトナム戦争の真実』(原題:HEARTS AND MINDS)劇場鑑賞

厚木でやってたからってのもありますけど。次は高崎だそうです。
http://ecx.images-amazon.com/images/I/51eq9hqB2RL.jpg

私にとっては、いましろたかしの最初の連載のタイトルがこれだったので、
それで見たってことです。内容は全然無関係ですけど。

公式_作品情報
http://heartsandminds.eden-entertainment.jp/site/#to_intoro

上を読むと、日本でもアメリカでもなかなか上映出来なかったみたいで、
とすると、いましろたかしはどこでこの作品を知ったのか、
以前読んだ気もするのですが、もう忘れてます。

ベトナム語のセリフの吹替の英語が、アジアっぽい訛りなのは、
如何なものかと思いました。フランス語を話してる範囲では、
アジアっぽい訛りのアテレコにはなってない。

また、公民権法(Civil Rights Act)が制定されても、
デセグリゲーションの普及までまだ間があるので、映画に映るアメリカは黒人が少なく、
おおむねホワイトユーエスエーです。後継越南戦映画ディア・ハンターで語られるように、
実はナントカスキーやナントカビッチ、ナントカニコフ、ナントカティデス、
たちが画面に横溢していたのかもしれませんが、そんなの分かりませんので。
ひとり、ナントカバーグさんがいましたが、やっぱりユダヤ系でしょうか。

なかなか上映出来なかった映画を、戦争映画特集みたいな感じで、
日本では2010年に継ぐ二回目のスクリーン上映とのことで、
せっかく戦争映画なら、チャン・イーモウの南京映画観たかったな、
と思いましたが、双方の主張のうち、何が真実なのか考えさせる映画でなく、
あちらの主張だけを喧伝する映画であるなら国益を損なう恐れがあるから㍉、とか、
そういうことかなと思いました。せめて、姜文の『鬼が来た!』でもと思いますが、
あれも、当時上映に圧力が云々で、大阪で唯一上映してたとこで観た覚えがあります。
DVDも二度売りましたが、そうそう売り切って終わり。澤田謙也演じる隊長のセリフ、
「我々は負けたわけではない、戦うことをやめただけだ」なんて、
いかにも右の人が言いそうな台詞ですが、それを中国人監督が言わせてるという…
姜文は嫁さんがおフランス人の、国際派なので、
錯綜してて、ミギヒダリのリトマス試験紙で物事を判断しないための、
頭の体操として丁度いい映画と思うのですが。

だいたい1:56:56くらいからそのセリフ。

中国魅録―「鬼が来た!」撮影日記

中国魅録―「鬼が来た!」撮影日記

香川照之の上記撮影日誌によると、澤田謙也は長髪でロケ入りして、
姜文から皇軍士官は丸刈りと言われ、翌日さっそく坊主頭にしたとか。
その姜文出世作『ニューヨークの北京人』で当初ロンゲのヅラかぶってたのが、
まるで昨日のことのように思い出されます。

上の9:33から。マンハッタンを北京語読みで「マンハードゥン!」“曼哈顿”と呼び、
コネで査証ゲットして渡米したばかりの音楽家が、架空の指揮棒を振り回す。
何度見てもいい場面です。天安門前の訪美留学生。ここから低賃金労働への急展開、
髪をバッサリ切って姜文カットになって、皿洗いのチャイニーズレストランの、
台湾外省人マダムと夜の国共合作飲食男女してのし上がっていくわけですが、
全然ハーツアンドマインズと関係ないです。

話を戻すと、この映画はこの映画でよいのですが、
我々は1975年で止まってしまった時間を生きているわけでないので、
例えば、中公文庫の『裏切られたベトナム革命』を読んでも、
ホーチミンルートなんか実際は架空の存在で、
物資は船でカンボジアのコンポンソムだかシハヌークビルだかに水揚げしてたとか、
南ベトナム解放戦線はテト攻勢でほとんど全滅してて、
あとは北正規軍がそのまま戦ってたとか、この映画時点では分からなかったことも、
すでに知っているわけです。それを踏まえておきたいなって思います。
http://bookshelf.co.jp/images/9784122013759.jpg
http://bookshelf.co.jp/product_info.php/products_id/56679
だいたいベトコンのコトバが、「ラ」が「ザ」に訛るから北出身とか、
そういうとこまで分かる米軍兵士がいたかというと、いなかったでしょうね。
そんな気がします。国内の黒人やヒスパニックのデセグリゲーションですら、
まだまだ先の話なのに。

この映画でも、北爆やB-52出てきますが、ナマの北の人の声は当然まだないわけで、
以前某銀行がベトナムに支店を開設するにあたって付け焼刃のベトナム語教室を開いて、
それで東京に呼んだ講師がハノイの人で、たまたまNPOだか教会だかでお会いして、
1975年5月1日のサイゴン陥落の時は勝ってうれしかったですか、と聞いたら、
もう爆撃に怯えなくてすむのでほっとしたのが正直なところ、と答えられ、

当時は肩すかしくらった気分でしたが(パッチギ2みたいに高揚と思ったので)、
やはりひとはそうなんだ、小さなしあわせなんだ、と今は思います。

https://en.wikipedia.org/wiki/Hearts_and_Minds 曖昧さ回避 ⇒ film以上

【後報】
あと、ベトコンのトンネルで思い出したのが、昔のロンリープラネットの、
クチの、観光用に保存されているトンネルの写真に、
浅黒い肌のオリエンタル女性が映っているのですが、
実はその女性は日本人観光客で、ベトナム人でも東南アジア人でもないんだよ、
と教えてもらったことがあります。
http://cache-graphicslib.viator.com/graphicslib/thumbs674x446/7329/SITours/morning-cu-chi-tunnels-tour-from-ho-chi-minh-city-in-ho-chi-minh-city-186956.jpg
http://www.lonelyplanet.com/vietnam/ho-chi-minh-city/activities/sightseeing-tours/morning-cu-chi-tunnels-tour-ho-chi-minh-city/item-v-7329P2-id
最初っからこういう写真にしとけば誤解もなかったのに、と思います。
http://cache-graphicslib.viator.com/graphicslib/thumbs674x446/5060/SITours/cu-chi-tunnels-small-group-adventure-tour-from-ho-chi-minh-city-in-ho-chi-minh-city-144265.jpg
http://www.lonelyplanet.com/asia/activities/history-culture/cu-chi-tunnels-small-group-adventure-tour-ho-chi-minh-city
(同日)
【後報】
本田靖春の本で、右も左も敵に回す的な道をあえて歩む性分の話があり、
ベトナムといえば、一時期オリヴァー・ストーンがそうなってたな、
と、思い出しました。昼は政府軍、夜はベトコン(実は北正規軍)に支配される村、
を活写し、主人公が北兵士に強姦される場面を描いたばかりに、
ハノイ政府から出禁、上映禁止を喰らってしまった、天と地の件です。
レ・リ・ヘイスリップの原作(自伝)がそうなんだから、しょうがないのに。

いまのオリヴァーくんは、メシを喰うために、左翼をも敵に回す愚は、
犯してないような感じですが、それはつまらない。
昼と夜で支配者が違う村というと、西安事件国共合作以前の、
清野作戦の頃の華南中国とかじゃないの、とも思い、
アメリカって、半世紀それが理解出来なかったんだなと思いました。
(2015/9/5)