*2021/2/16追記。
下記、URlしか出ない画像は、まだほとんど開くことが出来ます。
動画は削除されたようで、なんの歌だったかもう思い出せません。
冒頭、各映画会社のロゴの末尾にこちらが登場し、堂々と英名"August First Film Studio"を名乗っておられ、英名あるんかいと驚きました。中国人民解放軍八一電影製片廠が、アウグストオーガストファーストフィルムですよ。パンフに各界絶賛の生ヌルいコメントがあって、富坂聡もそこにいるんですが、もうなんかすごいです、オーガスト・ファースト!ですよ八一が! でも私はまだ時々八路と呼びます。はちろ、パールー。大目に見てね。
内田慈かと思った。うそです。
厚木でやってくれるので、観ることにした映画。本当に中国映画、日本で配給されないですね。世界各地の映画祭のサイトを見ると、中国映画もバンバン出品されてるのに、興行界の事情は分かりません。この映画は、原作が『シュウシュウの季節』と同じ人で、原作に罪はないのですが、映画「シュウシュウの季節」は、反共の名を借りたアジアン幼生ポルノでもあるので、それでなんとなく眉に唾つけて構えて観ました。結論からいうと、米国製文革映画「シュウシュウの季節」に対する、GDP世界二位に到達した大国中国によるリベンジ映画だと思います。この映画は。
最後にテロップで、”谨以此片献给你们和我们的芳华” いや、この映画はテロップ全て繁体字ですので、「謹以此片貢献給你們和我們的芳華」と出ます。その字幕が、微妙に遅いんです。「すべてのイヤング110番お悩み食べ放題に捧ぐ」みたいな意味なんですが、で、その後また少しテロップがあって、"拍摄ナントカカントカナントカカントカ战友至敌" とか書いてあって、ここで私、油断して字を読まず漫然と字幕待ってたら、字幕ありませんでした。さっきからしつこく"芳华 结尾一句话"等の検索ワードで中文サイト出してるのですが、この文句が出ないので、すっごく気になってます。なんと書いてあったんだろう。敵と戦った戦友に、みたいな部分だけ読めて、あー気になるです。
中越紛争は、今天を「ギンティエン」学習を「シュエヒィ」と発音するような山東ジジイが、お前ら若い者は知らんだろうが、とぉっても悲惨な戦争だったんだよ、と言って来たのを覚えてますが、いやそうではなくて、私が時代を共有してないのは知らないからではなく私が日本人だからですぅ、と心の中で思いました。
確か、戦勝国ベトナムに、勝った時払いの返済を求めて袖にされて怒った中国が攻めこんだはいいけれど、文革で内戦の真似事くらいしかしてないまなったなまった政治ばっかしのハリコの軍隊は、象🐘に勝った蟻🐜である精強北ベトナム正規軍の敵になれるわけもなし、ボロクソに惨敗惨敗惨惨敗。しかし人が財産、人が盾の中国は人海戦術人海戦術で二百三高地なんかメじゃないくらいヒューマンリソースを注ぎ込んで注ぎ込んで、やっと国境のまちランソンをぺんぺん草ひとつ生えないくらい瓦礫の山にして意気揚々と引き揚げていった(メンツが立った)という戦いだったはずです。で、この国境のまちはドイモイと改革開放の下、国境貿易で不死鳥のように復活し、繁栄を大いに享受し、にぎわった…ような気がしますが、模造記憶かもしれません。
(この映画の中国でのレビューに、例の中国版ランボー「ウォー・ウルフ2」と同じくらい面白いよ!という煽りがあって、笑いました)
上はたぶん宣材のスチールで、こんな場面はなかったかと。(改革開放以降この看板が可口可樂になってる場面はあります。その下を傷痍軍人が歩く)で、この写真の、センターだと思うのですが「卓瑪」という名前のキャラがいて、「卓瑪」が、チベットかモンゴルの名前であることの説明も一切ありません。すげーなーと。本当にリベンジ映画なんですよ。たぶんラサ語だと、『チベットの娘』のリンチェン・ドルマ・タリンのドルマになる名前だと思います。カムだかアムドだかに来ると、ジョマになるはずだと。
- 作者: リンチェン・ドルマタリン,Rinchen Dolma Taring,三浦順子
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革命戦争国共内戦に協力した少数民族黨幹部というのもおりますので(有名人だとウランフとか)少数民族の女の子が歌劇団というか文工団にいたからといって、デセグリゲーションというわけでは全然ありゃーせんですよと。北京語しか話せない可能性もあるし。
もうたくさん、否、毛沢東逝去時に看板に「奠」とでっかく書いてあって、足利学校で釈奠いちど見たいと思いつつ忘れてしまったことを思い出しました。
中国のお葬式はとにかく派手!お金を燃やしてストリッパーが来る!?
で、毛沢東逝去時「永垂不朽」と書いてあって、私はそれは知らないのですが、鄧小平逝去時に「永垂不朽」と書いてあったのは知ってるので、いつでも同じなんだなあと思いました。毛沢東と朱徳と周恩来はまとめてセットで出ますが(せりふで)、要を摘んでの華国鋒はこの映画出ません。鄧小平も出ません。私が烽火の原作者より好きな作家、池莉原作の「ションヤンの酒家」は改革開放のドサクサで伸張する屋台が舞台です。
この映画は、1976年、1978年、1991年、1995年、2005年、2016年の各登場人物が語られますが、そのあいまは語られません。1989年とかそういう、合間。1991年に海南島でリゾート開発不動産投機沸騰とか、現実より少し動きが早い気がしますが、どうでしょう。
こころが壊れて、快復するヒロイン。この子が、舞台を見て、かつて踊っていた自分を、一瞬だけ思い出す場面、ここは「シュウシュウの季節」と原作者同じだと実感しました。追い詰めた自分が悪いと思いたくないので、犠牲者に救済があるように描く。高行健の小説の主人公も、鄭均の歌の主人公も、文革とか改革開放とか抜きにしてジェンダーだけ見ると、そうとう身勝手です。泣くのはおんな。あと、「ラオガイ」という響きをひさびさに聞いたです。労働改造、略してラオガイ。
テレサ・テンの場面は、精神汚染というエヴァ語の語源が中国にあることだけ押さえておけばよいかと。厚木の映画館は今でも係員が映画開始前に前説してくれるのですが、今回のトピックスは、オーディションの絶対条件が、「整形してないこと」だという情報でした。当時は人間の貌が自然だったので、この映画もそうしなければならないと。
原作者の名前がゲリン・ヤンとなっていて、どこがや、イエン・コーリンというかグーリンが、あえてカタカナで書くなら近い書き方やろと思いましたが、なんだか知らないが今は米国市民だそうで、ピンインを英語読みさせてるみたいです。"Geling Yan"
陳凱歌がチェン・カイコーなのだから、歌苓もコーリンでよさそうなものですが、ゲリン。ワイルド・スワンの張戎がユン・チアンなのよりマシでしょ、と言われそうな。かつて何かで祖国に失望したのか、『シュウシュウの季節』を反中路線映画として米国で制作させた在米作家も、振興中華と共に、私が見たくて見たくて仕方ない南京アトロシティー映画「金陵十三钗」(北京五輪花火監督チャン・イーモウがディレクターを努めた)や一人っ子政策の超弩級余波、高齢化チャイナを描いたわけでもない「妻への家路」(北京五輪花火監督チャン・イーモウがディレクターを努めた)の原作を書きまんたと。妻への家路やシュウシュウの季節は角川が邦訳出したのですが、なぜこれは出さないかな。ハーレクイン・ロマンに譲ったかな。
監督のフォン・シャオガンという人は、よく知らなくて、崔洋一がたけしみたいな目に遭って、リハビリしたらこうなるかなみたいな顔でした。ニューヨークのペキン人は、ぜんぶVCDで見ていて、大好きな作品ですが、それで売り出した人だそうです。姜文が素晴らしいテレビドラマです。先行する台湾系在米新華僑の下にするっと入り込んで力をつけていく姜文。それと並行して、グリーンカード目当てでアメリカ白人と結婚した華人女性が、教育方針の違い等で離婚してこどもの親権争いになり、息子に吞ませた漢方薬が、草の根や虫の死骸など、非科学的なカルト信仰から児童虐待を行ったと法廷で叩かれて絶叫する場面など(現実のそういう事件をドラマに組み込んだ)実に面白かった。東京の上海人は、知り合いがロケ地選定にどうこうしたので、工事現場の場面など、あー代々木八幡、とか思ったりもするのですが、ツマラナイと総じて中国人は評価していて、なぜと聞くと、相手が日本人なので答え方も遠慮がちで、いやー姜文が出てないからハハハ、とか、白人社会と違って、同じ東洋人なのでビジュアル的に違いがクリアでない、とか答えてくれます。
北海道ブームの火付け映画「狙った恋の落し方」もこの人だそうですが、まだ見てません。出だしだけ海賊版を動画サイトで見て、字幕がないので挫折しました。かなり頓狂なストーリーで、バカな起業家が出るのかな?
この映画の原作はまだ邦訳が出てないですが、中国のサイトによると、原作は映画より残酷シーンが多いそうです。さっき出したチリの『ションヤンの酒家』は、服役中の薬物中毒の弟への差し入れにこっそりドラッグを仕込んで看守を欺いて弟に渡す場面が、中国のインチキ出版社の版権ウヤムヤ版では削除されていて、逆に初版に忠実に訳した池田版邦訳にくっきり入っていて、思わず手を打ったりしたものでした。
この映画は往時のうれしはずかしスローガンに満ちあふれてて、例えば、プールから見える、"练好杀敌本领"「練好殺敵本領」なんか知りませんでした。上海出身の女の子が、ソファーなんか錦江とどこだかにしかないと思ってた、という場面。錦江というのは、勿論田中角栄が泊まった錦江飯店のことで、1990年代初頭にその部屋の値段聞いた時は邦幣で三十万日元くらいだったと記憶しています。この企業は今では海輸にも手を染めているようで、日本の港湾都市から伸びるトレーラー走行可能な道路のそばでぼーっとしてると、一日一台は錦江 JINJIANGと書かれたコンテナトレーラーが通ります。
後、通訳考えたなと思う場面。「無欲」と字幕が出てる場面のせりふが「無私」 そもそも"私"プライベートと"公"パブリックの概念が違うので、「無私」をそのまま使うと、なんか意味がしっくりこず、「無欲」と訳したんだなと。劉峰は最初に字幕が出た時、雷鋒のパロディかな~と思ったらホントにそんなふうに劇中でも揶揄されてました。雷鋒Ⅱ世と字幕が出てますが、原語だと"活雷锋"だそうで。この「活」は北京五輪監督前のチャン・イーモウのフオジェ"活着"のフオであり、"活泼"とか転生輪童の活仏のフオです、たぶん。雷鋒は死んだが、劉峰还活着。
沼に引きずり込まれる場面は、長征でもパンダのふるさと四川省を通るあたりでそういう個所があったことを思い出しました。九寨沟。红原。
映画の省がナニ省か明記されてなかったのが残念。車のナンバーも注意深くマスクされてました。ひとつ、「子」ナンバーがあったのですが、そんなナンバー現実に存在しないみたいで。冒頭で、ズーグオシーナン、祖国西南とあったので、雲南省かなーと思ってたら、烈士陵を訪れる場面で、わざわざ雲南に行くと書いてるので、雲南ではないんだろうと。そうなると四川省でしょうか。原作者の経歴とも一致。
私はこういう歌に詳しくないので、知ってるのは、「だ~んび~んでぃれ~ん♪、めいようごんちゃんだん、めいようしんちょんぐお」だけです。没有共产党没有新中国。パロディがあって、没有共产党就没有穷中国というそうですが、GDP世界二位の大国中国に対し、口が裂けても今はそんなこと言えないだろうと。
以上、写真は下記からお借りしました。
科学网—情欲压抑、青春献祭与漂泊流浪——影片《芳华》解读 - 陈吉德的博文
映画「芳華-Youth-」 on Twitter: "拓殖大学海外事業研究所教授でジャーナリストの富坂聰さんに映画へコメントを頂戴しました!… "
【後報】
角川文庫の『シュウシュウの季節』(英題:"Xiu Xiu: The Sent Down Girl"、原題:"天浴")が出てきたのでその時点(平成十一年初版)での作者プロフなど貼っておきます。
角川文庫の訳者あとがき読むと、中国政府の許可が下りるわけもないので、チベットでゲリラ撮影したとか、「少女小漁」という作品の映画はシルビア・チャン!が監督したとか、シュウシュウの季節で、事故かリンチか忘れましたが、不能になったチベット人男性を演じたのはチベット人だとか、いろいろ書いてます。
シュウシュウの季節は女性監督ということもあって、原作のセリフは一個の省略もなく、これほど原作に忠実な映画はないとあとがきに書いてあるわけですが、映画終盤、徴兵逃れのために自ら負傷した青年が中絶手術後のシュウシュウの病室に押し入った後、ぬけぬけと"思想交流嘛!"とぬかすセリフはこの角川文庫にはありません。
今回ひさびさに角川文庫読み返して、ヒロインのヤリマン肉便器状態を、看護婦たちが笑って陰で、漢語で、「破れた鞋」と言う、という個所を読んで、少林サッカーの場面思い出しました。主人公がボロボロの運動靴を無銭飲食のカタにヒロインの屋台に置いて行って、その靴をお金を工面したのち取り返しに行くと、ヒロインが、"破的鞋没了"とそっけなく告げ、落胆する主人公に、"修好的鞋有了"と、自分で縫い直した靴を渡す場面。この映画の北京語は、香港の観客にも分かるようにしてるせいか、よく聞き取れます。これ思い出しました。蜂窩織炎芳華は、だからやっぱりGDP世界二位になった中国のリベンジ映画だと思います。そしてそこにタブーなんだかなんだか分からない微妙な中越戦争を持って来るあたりが、やはりこの巨大民族の文化人の器なんだと思います。以上(2019/6/9)