- 作者: 佐藤泰志
- 出版社/メーカー: 小学館
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(みちのものがたり)
八幡坂 北海道函館市 不遇な作家が描いた「故郷」
朝日新聞be 2016年1月16日03時30分
http://www.asahi.com/articles/DA3S12158086.html
http://www.asahi.com/articles/DA3S12158031.html
一度故郷を離れ、故郷に戻り、また離れた作家を、その夭折後、
故郷の人たちが忘れまいと思い起こそうとし続ける、その物語のほうが、
アマゾンレビューなどでも力強く伝わってきて、ともすれば、
物語の淡い叙景を吹き飛ばしそうになる気がしました。
最初の話が、ラストで疑問が解決される謎解きの一面も持っていて、
その余韻が心に残ってしまうので、ほかの物語にそういう構造がないことに、
実は苦しみ始めていたんじゃないか、そんな気がします。
近所構わず夜の営みの声を盛大に上げる女性にオチはないですし、
私が強く印象に残った、毎晩ビール五本飲むところを三本にして車運転した話も、
いちばん何か落とし所をババーンとやりやすかったと思うのですが、
なかった。事業失敗した両親共稼ぎ一人っ子のお小遣いの潤沢さも、
謎と言えば謎でしたが、(中学生が映画観てマクドで昼食)
あるタイプの子は、親が裕福でないのにお金をもたしてもらってたな、
と思い出しました。競馬も、パチ屋も、二階のあるスナックも、オチはなかった。
頁40 この海岸に
何にしますか、とおかみさんがたずねた。焼酎を頼んだ。グラスをカウンターに置き、梅割りにしますか、とまたたずねてきた。満夫は頷く。おかみさんが焼酎をそそぎ、梅酒を加える。
北海道の梅割りは、梅干し割りでなく梅酒割りなんでしょうか。
これはカルチャーショックでした。B級カクテル。ご当地割り。
県庁所在地でない海炭市に、ミツバチのささやき掛けてる映画館があるのも、
驚き。映画の盛んな時代だったということもあるでしょうが…
ジム・ジャームッシュは、驚きませんでした。寧ろレンタルビデオ屋出してほし。
食事が、ファストフードばかりで、ラーメンとか、定食とか、
海峡の向こうだとシーズンは三食イカ刺しとかなので、そういうのとかが、
なかったのは少し寂しかったです。基本、首都と海炭市だけの直線関係で、
県庁所在地やほかの都市、地方が登場しないのは、あえてだったのか、
それが実情なのか。
頁103 夜の中の夜
父は狭いたんぼを母とふたりで耕して一生を終った。墓もない。骨は寺にあずけっぱなしだ。自分は? 自分もそうなるだろう。
これ、孤独死した私の知人も同じです。自治体から骨壺を預かった、
住職から聞いた。彼のご両親もそうして、共同墓所に入ったと。
年に数回、趣味の世界(マンガオタク)で会う以外、
その人がどんな人生を送っていたか、あえて知ろうとしなかった。
読後しばらく経って、いまこれを書く段になって、じわじわと、
沁みています。本書には、ほかにも同様の記述がある。以上