本アンソロジーの著者のひとり、山本弘サンが今年三月二十九日に逝去されたとの報に接し、まだ読んだことがないかったので、何冊か読もうと考え、最初に読んだのがこれです。
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[B! 訃報] 作家、ゲームデザイナー山本弘氏逝去のお知らせ
私の脳内で、山本サンが空想科学読本を書いたことになっていて、『磯野家の謎』『サザエさんの秘密』的な、同人でやればいいような内輪受けを商業ベースでやる時代についていけないものを個人的に感じていた、と、この読書感想でもエラソーに書こうとしていたのですが、空想科学読本は山本サンでなく、山本サンが書いたのは空想科学読本を批判する本でした。なぜ思い違いをしたのだろう。
南京アトロシティーについては、桶川ストーカー殺人事件を書いた方も一冊書いているので、相通ずるものがあったのではないかと考えます。その後この手の、ネトウヨでもパヨクでもない、是々非々の声は絶えた気瓦斯。
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七名の方のアンソロジーで、うち、山本サンと「蹴りたい」田中サンの作品は第47回星雲賞日本短編部門受賞。ウルトラQとウルトラマン縛りでスピノフというか二次創作を描く企画で、案の定ひとり掟破りでウルトラセブンで書いてます。面白ければという条件付きですが、ルールは破られるためにあり。
表紙(部分)最初英文字を"TATARAHMA FUTATA", タタラーマ・フタタと読み、インドの話だろうかと思いました。カバーイラスト/開田裕治 カバーデザイン/伸童舎 ©円谷プロ
裏表紙(部分)英題は吉田ケニチ先生訳のイーヴリン・ウォー作『ブライヅヘッドふたたび』から。英文のウルトラマンファンサイトは"Return to Tatara Island"と"Tatara Island Again"を併記していて、めんどくさかったので。
"TSUBURAYA ×HAYAKAWA UNIVERSE"というシリーズはこの後二冊出たようで、『ウルトラマンデュエル』と『ウルトラマンF』です。
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多々良島は架空の島で、五島列島の同名の島とはたぶん別物だそうです。
怪獣無法地帯 (かいじゅうむほうちたい)とは【ピクシブ百科事典】
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『多々良島ふたたび』"Tatara Isiand Revisited." by YAMAMOTO HIROSHI 山本弘
SFマガジン2015年1月号掲載。
『四四年前の中二病』"Eighth-grader syndrome in fourtyfour years ago." by YAMAMOTO HIROSHI 山本弘
あとがきのようなもの。
本書は各話二枚くらいずつイラストが収められていて、この話は田中光という人のイラストです。
(部分)
最初は分からずただ読み進めていましたが、初代ウルトラマン放映時の三丁目の夕日的世界を舞台にした作品と、現代っぽい時代を舞台にした作品の二種類あることが分かります。この話は前者。カメラがフィルムカメラなので。後者は、また例によって決めごとを守らない抜け掛けかもしれない。
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『宇宙からの贈りものたち』"Gifts from Outer Space." by KITANO YŪSAKU 北野勇作
イラストは藤原ヨウコウサン。英題はウルトラマンWikiから。SFマガジン2015年1月号掲載。
びっくりするような切り口というか文体でした。とても新鮮でしたが、いつもこれだと飽きられるだろうし、かといってほかにどういう引き出しがあるのか分からないし、という感想です。単独の著書を読むなら何を読むべきか。
スリランカでは目玉焼きのことをブルズアイ、牛の眼と呼ぶと神戸の人のサイトで見たのを思い出しました。
あとがきは『大いなるQ』"BIG <Q>"
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『マウンテンピーナッツ』"Mountain Peanuts" by KOBAYASHI YASUMI 小林泰三
SFマガジン2015年1月号掲載。
たぶん現代を舞台に設定してると思います。キリトリ動画で寄付金を募る世界的環境団体が怪獣保護を訴え、ウルトラマンを排除しようとかなりエグい攻撃を仕掛けてきます。具体的にはヤスリとかギザギザのついた武器でウルトラマンのあの皮を抉る。そして本編のウルトラマンは若いチャンネーが変身します。さすがにJKにはしてませんが、地上アイドル志望だとか。由緒正しい国産SF。韓流デビューを目指してレッスンに励む時代はこの後來ます。クリーピーナッツを未来予知したかのようなタイトルなので、何か元ネタがあるのかもしれませんが、知りません。
ので、こういうイラスト(部分)鷲尾直広という人。あとがきは『ウルトラマンは神ではない』《奥特曼不是上帝》ジャミラは人が変じた怪獣なので自然保護の対象にはならないとか、ウルトラマンはガザに降臨してヒト同士の争いに介入してはならないとか、示唆に富んだアレが思索に奥行きをもたらします。「アレってなんだよ」©筒井康隆。
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『影が來る』《影子来了》"Here Comes Shadow." by MITSUDA SHINZO 三津田信三
ホラー。伝奇要素。ウルトラQ。これも、フィルムカメラなので、往時が舞台と推察。イラストは楢喜八という人。ここまでがここまでなので、急にイラストがこういう転調になってズッコケそうになりました。
あとがきは『依頼から本作を書き上げるまで』"From Request to Write up the StoryStory" 「ウルトラQ」の範疇としつつも、「怪奇大作戦」にも言及しておかないとフェアでないという作者の公平性がよく読み取れます。SFマガジン2015年2月号掲載。
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『変身障害』"Metamorphosis Disorder" by FUJISAKI SHINGO 藤崎慎吾 イラストは大石まさるという人。あとがきは『暗闇のセブン』"Seven in the Dark" SFマガジン2015年8月号掲載。
かつて炭鉱夫だったが廃坑閉山とともにウルトラ警備隊に転職したモロボシ・ダンはある日変身出来なくなっていた自分に気づき、心配する家族をよそに、公営住宅の一室で苦悩する。クリニックを訪れたダンは、グループセラピーに参加し、かつて自分が相まみえた宇宙人たちも軒並み変身出来なくなって診察を受けていることを知る。
藤沢だかどっかに住んでるモロボシ・ダン役の俳優の人が免許返納しただのトークショーでゆっていたなどのコタツ記事が脳裏によぎり、本編に一層の趣を加えてくれました。が、今検索してそんな記事はぜんぜん出ないので、また模造記憶かもしれません。
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『怪獣ルクスビグラの足型を取った男』"The Man Who Took the Footprints of Kaiju Lx Bigra" by TANAKA HIROFUMI 田中啓文 原案協力 雑破技 イラストは工藤綾という人。SFマガジン2015年4月号掲載。あとがきは『ウルトラマン前夜祭』"Pre-fes of ULTRAMAN"
下記の歌は、上記映画があまりにアレだったので、「かいじゅうの鼻クソ」というタイトルで当初作られたが、おとなの事情で下記のようなものになった、という話はないようです。
この話も、円谷英二サンがウルトラシリーズの前に太平洋ひとりぼっちを撮っていたとか、ウルトラマンの監督が実は市川崑だったとか、そういう話かと思って読んだのですが、検索してもそういうことではないようでした。英文ウルトラWikiではこの怪獣名を"Lux Vigra"としているのですが、根拠がさっぱり分からないので、この感想では"Lx Bigra"にしました。夕陽パノラマ社は朝日ソノラマだろうと思ったですが、怪獣図鑑は読んだことないのでよく分かりません。よねつけんしサンがアンド検索になるので、そういう歌を歌ってるんだろうなと思うんですが、公式的なのが見つけられず。
なぜ双葉社が怪獣図鑑を出しているのか分かりません。クレヨンしんちゃんのファンが買うんでしょうか。バイデンサンの意*1を汲んで、侵略外国人図鑑を作って、バイデンサンの言ってたことは正しかったデスと言うも基地。
『痕の祀り』"Ritual of the Stigma" by TORISHIMA DEMPOH 酉島伝法 SFマガジン2015年4月号掲載。イラストは加藤直之という人。あとがきは『史上最大の侵略』”The Greatest Invasion Ever Planned” これはなんというか、ほかとかなり毛色が変わっています。北野サンも変わってますが、北野さんは'90年代の鏡明編集アンソロジーにも出てくるような前世紀人なので… こっちは、音楽界の米津サンほかにも似た、インターネット普及以降の才覚な気瓦斯。用語、ジャーゴン、取説に溺れてるような気もしなくもない、説明なき新用語の氾濫が特徴と思いました。加賀特掃会が化学特捜隊なのはダジャレと分かるのですが、斉一顕現体がウルトラマンなのはよく分からず。嚢種体(こども)はさらに分からず。オチに救われました。
以上