『惜櫟荘だより』読了

惜櫟荘だより

惜櫟荘だより

https://www.iwanami.co.jp/book/b256248.html
http://gekkan.bunshun.jp/articles/-/431
http://archives.bs-asahi.co.jp/sekirekiso/

読んだのはハードカバーの二刷。岩波現代文庫でも出てますが、
ハードカバーも重版しったい否しゅったいしてたとわ。

カバー写真:表=佐伯泰英 裏=言美歩
あとがきあり。装丁=桂川 潤
ハードカバーなので、解説とかはないです。
口絵のカラー写真はいっぱいあります。レストア後のおやしき。
新海誠が鼻血噴きそうな四組十二枚の雨戸収納「十二単」写真もあります。

吉田いそやの本を読んだので、代表建築のアレで、この人が、
この熱海のおやしきを不肖なんとかでかんとかのことを、
新聞とかでも知ってましたので、読もうと思って、読みました。

この屋敷をリストアする過程と並行して、作者がこれまでのこしかたを、
回想するエッセー。作者はガン持ち。初出は岩波「図書」連載。

2018-03-02『饒舌抄』 (中公文庫) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180302/1519945186
2017-02-20『バナナ』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20170220/1487537951
吉田いそや Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%89%E7%94%B0%E4%BA%94%E5%8D%81%E5%85%AB

佐伯泰英の人は、酔いどれ小藤次を二冊だけ読んでます。

2014-07-15
『御鑓拝借〈新装版〉―酔いどれ小籐次留書』 (幻冬舎文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20140715/1405430563
2014-09-02
『意地に候〈新装版〉―酔いどれ小籐次留書』 (幻冬舎文庫)読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20140902/1409659628

なんちゅうかな、藩の江戸詰めで独身でいそじまできちゃった人が、
節を曲げられなくて解雇されて住むところも何もなくして、
そこからの再出発が、たんたんと書いてあって、すごい沁みたのを、
覚えています。本人に職人としてもやってける技能と、正直さと、
剣の腕があって、そこをみこんだ大商人の力添えというか、
大商人は暴漢から命を救われたわけですが、その援助におごることなく、
ひとりもんなので、自炊するわけで、冷蔵庫がない時代だから当たり前ですが、
現代でも冷蔵庫がない生活を送ったことのある人はみなじーんとくるであろう、
焼き魚を残しておいて焼き直して再度火を通して食べる場面とか、
ほんと忘れられないです。よい小説でした。小藤次が態勢を立て直した後は、
読んでないのが、なんともかんとも。すいません。

で、このおやしきの名前、ちゃんと読んでなくて、けやき坂のけやきかと思ったら、
くぬぎでした。くぬぎ坂がないのは、クワガタとかがよってくるからでしょうか。

櫟 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AB%9F

頁6、アンジェイ・ワイダもここに泊まって、単なるスケッチでない絵を描いたとか。

この本は作者のスペイン時代の思い出が、つぎつぎに出てくるので、
堀田善衛とその御寮はんが作者から見た像として描かれます。
堀田善衛は広場の漢奸の人ですが、分限者の、ええしのお子やったんか。
また、頁87など、田村隆一の思い出も語られています。
アル中とはっきり言われています。昔の話なので、入院中の解毒中だけ、
酒を抜いてた感じ。蕎麦を手繰る時も、ベッドに仰向けでたぐってたとか。
頁159で、児玉清の思い出で、古着屋総兵衛が鎖国を越えて海外雄飛すると、
江戸の市井のつましやかな暮らしぶりの魅力を離れてしまう、どやさ、
との声を入れています。角川春樹は、ヤクブーツ入院前、陰陽師書け、
陰陽師書け、と、これはトンチンカンなことを言ってたそうで。頁192。
永川玲二*1という人の、欧州バックパッカー流旅行、
どこでもホテルでなくまずキャンプ場に行くやり方は、
イスラエル人の日本旅行みたい、と思いました。頁50とか。

かつて文庫は、名作だけが版型を変えて刊行されるものだった。
それが各社参入と出版不況の結果、文庫書下ろしが出るようになり、
作者は、三冊書ける内容を一冊に詰め込むと編集者から揶揄されたり、
親子のかかわりや家族の描写に力をいれすぎないで、お色気濡場や、
血しぶき手足ポーン!の活劇をもっと書けと言われながら、
中年以上が読者主流で、日本全体が自信を失ってゆく時代に、
過激じゃないのを書きたいんだ、読者もそれを望んでる、との思いを大切にし、

頁29
 私なりの時代小説のスタイルを確立したのは「居眠り磐音 江戸双紙」シリーズを始めた二〇〇二年あたりかと思う。五章だて一章四節、これだと二十節で一作が完結し、一日に一節を書き継いでいけば二十日で脱稿する計算になる。一節が四百字詰め原稿用紙で十八枚から二十枚だから一作の分量はおよそ三百六、七十枚から四百枚だ。
 ともかく一章の起承転結を考えつつ一日一節を書く。日曜日も祭日もない、盆も暮れも書く。多作の秘訣とはただそれだけだ。

ラノベみたいに、うあああああああああああああああああああああああああ
とか、
段落を、
こまかく、
わけてみたりとか、
そういうのも好き好きですが、中国の論文は枚数でなく、文字数でカウント、
を思い出したりしました。以上です

【後報】
文庫には追加サンビスで、芳名録みると、こんな有名人が訪れとおる!
という感想文がついてます。例を挙げると、島田雅彦とか島田雅彦とか。
(2018/3/12)