『縮図』 (岩波文庫 緑 22-2) 読了

縮図 (岩波文庫 緑 22-2)

縮図 (岩波文庫 緑 22-2)

読んだのは1992年の22刷。

著者Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%B3%E7%94%B0%E7%A7%8B%E5%A3%B0
記念館 金沢
http://www.kanazawa-museum.jp/shusei/
この小説というか映画のWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B8%AE%E5%9B%B3

児玉清さんの下記本で知り、読もうと思った本です。

2018-04-08『 寝ても覚めても本の虫』 (新潮文庫) 読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20180408/1523134351

お色気は感じませんでした。何故だろう。
以下後報
【後報】

頁104 ヒロインの父親
職人とも商人ともつかぬ、ステンカラの粗末な洋服を着ており、昔国定と対峙して、利根川からこっちを縄張にしていた大前田の下ッ端でもあったらしく、請負工事の紛紜いざこざで血生臭いけんかに連累し、そのころはもう岡っ引ではない刑事に追われ、日光を山越えして足尾に逃げ込み、養蚕の手伝いなどしていたこともあり、若い時は気が荒かったというので均平も少し気味わるがっていたけれど、(中略)娘をあやつって自身の栄耀を図ろうなどの目論見は少しもなかった。酒ものまず賭事にも手を出さず、

任侠の人がバクチやらないってのも珍しいのかどうか。
同じ頁と、あと幾つかの個所に、「桂庵」「悪桂庵」(頁169)という単語があり、
知らなかったので検索しました。救世軍が、私刑リンチにも似た暴挙を、
業者に加えたので業者が戦々恐々、みたいな記述もあります。

桂庵(けいあん)とは - コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E6%A1%82%E5%BA%B5-58543
桂庵とは - 歴史民俗用語 Weblio辞書
https://www.weblio.jp/content/%E6%A1%82%E5%BA%B5

頁112、銀子は東京でなく、體がラクだという千葉の蓮池からデビューします。
置き屋夫婦はどさんこで、親父はいつも酒臭い息をしていて、
神さんは柔道家の娘で腎臓が悪かったとのことです。

2016.11.12 08:00 産経ニュース
【大人の遠足】かつて花街として栄えた千葉市中心街の ...
https://www.sankei.com/premium/news/161112/prm1611120015-n1.html
蓮池へ想いを馳せて - 千葉市観光協会
http://www.chibacity-ta.or.jp/5beach/hasuikeeomoiwohasete

頁112
 銀子は秋にお披露目をしたのだったが、姐さんたちに引き回されているうちに、少しずつ座敷の様子がわかり、客のとりなしもこなれて来て、座敷は忙しい方だったが、ある晩医専の連中に呼ばれて、もう冬の寒い時だったので、狐拳で負けるたびに、帯留め、帯揚げ、帯と一枚一枚剥がされ、次に罰杯のコップ酒をしいられ、性体もなくへとへとに酔って帰ったことがあったが、家の閾をまたぐ途端一度に酔いが発して、上がり口の廊下にくずれてしまった。
(中略)
 朝目のさめた銀子の牡丹は、頭脳あたまの蕊しんがしんしん痛んだ。三味線に囃されてちょんぬけをやり、裸になる代わりに酒をのまされ、へべれけになって座敷を出たまでは覚えているが、

この次のページに、吉川鎌子と運転手の恋愛事件、
という実話が一行挿入されていて、何故かヒロインの置き屋の神さんと、
同じ病院に収容されているという記述があります。現実と虚構の錯綜。

にっぽん心中考 佐藤清彦 Googleブックス
https://books.google.co.jp/books?id=dSpxDgAAQBAJ&pg=PA82&lpg=PA82&dq=%E5%90%89%E5%B7%9D%E9%8E%8C%E5%AD%90&source=bl&ots=n2eHF2-vKf&sig=wsxken7NhMIDNoSTsVNvUIfrFKk&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwj-k8fGzczaAhVDOJQKHYIxA6AQ6AEwAnoECAAQOA#v=onepage&q=%E5%90%89%E5%B7%9D%E9%8E%8C%E5%AD%90&f=false
新編近代美人考 長谷川時雨 青空文庫
https://www.aozora.gr.jp/cards/000726/files/45987_26595.html
あと、読書メーターの感想見ると、下記にも記述があるとか。

「歴史に咲く花々―人物おんな日本史」(集英社文庫)杉本苑子

何故かWikipediaには、この人でなくこの人のハズだけ記事があります。

芳川寛治 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B3%E5%B7%9D%E5%AF%9B%E6%B2%BB

ウィキペディアの関連書籍は下記でした。

『伯爵夫人の肖像』杉本苑子朝日新聞社、1965

頁123
 銀子は目に涙をためていたが、栗栖もちょっとてこずるくらい童蒙どうもうな表情をしていた。(中略)蒼い無限の海原が自分を吸い込もうとして蜿蜒うねりをうっている、

童蒙(ドウモウ)とは - コトバンク
https://kotobank.jp/word/%E7%AB%A5%E8%92%99-581518
童蒙とは - Weblio辞書
https://www.weblio.jp/content/%E7%AB%A5%E8%92%99

獰猛の当て字かと思った。念のため引いてよかったです。
ふりがな文庫によると、この漢字の「うねり」は、
若山牧水も使ってるとか。

https://furigana.info/r/%E3%81%86%E3%81%AD%E3%82%8A

頁199縹緻きりょう

ふりがな文庫
https://furigana.info/r/%E3%81%8D%E3%82%8A%E3%82%87%E3%81%86

頁256唐人髷
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%94%90%E4%BA%BA%E9%AB%B7
https://kotobank.jp/word/%E5%94%90%E4%BA%BA%E9%AB%B7-580670

頁182、南洋の真珠採りの話があります。

後半の病んだ銀子の描写と、冒頭のそれが、ぜんぜん結びつかず、
何がどうなってどうなってるのか、狐につままれたように読了しました。
打ち切り未完だからその整合性のなさは、いかんともしがたいのか。
しかし、若き日の児玉清のハートを、どこでわしづかみにしたんだろう。
不思議です。

頁15
 銀子はでっくりした小軀だが、この二、三年めきめき肥って、十五貫もあるので、ぶらぶら歩くのは好きでなかった。いつか奈良へ旅した時、歩きくたぶれて、道ばたの青草原に、べったりすわってしまったくらいだった。

この時点では何人も妓を抱えてる身分だと思ったのですが…
唐人髷の薄倖な病気で余命ヤヴァい時点と、どうリンクしてたのか…以上
(2018/4/22)