『時の過ぎゆくままに』読了

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講談社文庫もあるそうですが、読んだのは同社単行本。1986/10/20初刷

装幀 安西水丸

作者 Wikipedia
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1092年から作者急逝まで小説現代や問題小説、婦人公論などに発表された短編小説を集めた本。てっきりそう思わせて…なトリックが好きで、それをこなすのも好きな人だったのだな、と分かりました。でもこの本の短編の幾つかは、作者と片翼だけの天使の作者との軋轢を読者が知っている前提で書かれているので、自虐ネタというか、内輪受けじゃいかと思いました。今ならコミケで売る同人誌的な作品というか… 
『同業者パーティ』という作品など、元亭主の略語「元亭(もとてい)さん」なる業界用語も登場し、で、酒の弱かったはずのイクシマが今何を飲んでいるか、手にしているのが酒のはずがない、みたいな、本筋と関係あるのか的場面が続きます。

頁31「同業者パーティ」
 彼女のほうは、これは相当吞(い)けた。惚れた亭主と泣く泣く分かれて同業者としてもう一度出直すことに決めた女が酒ぐらい強くならないでどうするものか。

SFっぽい話も収録されています。最終戦争/熱核戦争と男女比と女性の性欲、とか、人類の原初/部族社会/草原の採集社会と女性、とか。熱核戦争の話に、唐突に諏訪優の詩が挿入されています。

頁65「秋のベッド」
秋はテネシーを想う
降りそそぐ陽の光り
したたる枯葉の恍惚
そのときわたしは時間が止まればいいと思った

(まるで、今のわたしみたい)
 くすりと彼女は忍び笑う。枕の上の少年の髪にそっと指をふれる。

今夜もジャック・ダニエルスをグラスに注ぐ
するとミシシッピーの流れが茫茫と見えてくるのだ

 この詩の通りに今夜もジャック・ダニエルスをグラスに注げるといいのに、と彼女は思った。

テネシーから最短距離でジャックダニエルに思考が直結してるのがせつないです。

諏訪優 Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AB%8F%E8%A8%AA%E5%84%AA

上のウィキ見ると、バロウズの名前が出てるので、もうそれで終わったコンテンツ。下記はホラー。

頁157「洋服箪笥の奥の暗闇」
 わたしは気をとり直して訊ねてみた。ウイスキーは自分もこれで今日は最後にしようと思いながら、もう一口飲んだ。

同じように階段から酔って落ちた中島らもの『酒気帯び車椅子』と違い、ふつうといえばふつうでした。みんなはあなたが思ってるほどあなたに関心はないよ、と言ってあげる人がいないわけではなかったろうに、と思うくらいくどくど、別れた亭主とのネタをみんな期待してるんでしょ、ウフ、書いたるわボケ、みたいな自意識と酒がほのみえる以外は。そしてジュリーとはハオウーグワンシー。

2015-03-19『酒気帯び車椅子』読了
http://d.hatena.ne.jp/stantsiya_iriya/20150319/1426769844

以上