『フットボールネーション 13 ―負けず嫌い-』(ビッグコミックス)読了

装幀 関善之 for VOLARE inc.  奥付に「負けず嫌い」と書いてあったので記しました。前巻も奥付に「元日国立」と書いてあったのを当該巻の読書感想を見て思い出し、ひょっとしたら全巻サブタイトルがあるのかもと思いましたが、手元にないので確認出来ません。読了したらすぐ売るので。 

フットボールネーション (13) (ビッグコミックス)

フットボールネーション (13) (ビッグコミックス)

 

 帯はわたる選手(シント=トロイデンVV MF)「海外選手より身体能力で劣る日本人が、世界で頭を使い戦い抜く為に読まなければいけない一冊であり、僕自身も勉強になりました」とありますが、帯裏の煽り文句「食事、睡眠、暮らす場所…生活全てが、プレイの“差”を生む!?」のほうが彼にとって実感出来たのではないでしょうか。横浜から平塚まで通う生活だったわけですので。

そういえば、相模原SCにも、高校時代学校からユースまで、電車の中で着替えるような生活を送っていたイナモの人が来ましたので、いろいろ参考になる現実のお話がそこここにあろうかと思います。主人公は当初ネカフェ生活のキャラでしたが、本巻で、その生活が全否定されます。アスリートがネカフェ生活って、せせこましいスペースで筋が伸びないストレッチもままならない時点でNGと思う(実はビジホ生活も同様ではないかと思います。ベッドの脇の狭いスペースでストレッチ生活というのも。最近のビジホはジム室がある所もあるですが…)です。で、本巻は、「フィジカル・モンスター」という概念が登場し、見事にそのハンデを苦にしないがそれでいいわけないタイプの人間が登場します。

こういう人は、実は、アスリートを引退というか、世の中の数ある仕事のどれかについて社会人生活を送り出した後のほうが、陥穽があると個人的には思います。なまじ他の人よりもスタミナがある分、普通の人ならへばるところもへばらないので、逆に生活が不摂生になるという… これくらいでも明日会社大丈夫だろう、明日午前中セーブしとけば午後には回復するだろうという生活の積み重ねで、疲労が蓄積してペキッと折れ、それが重なってなんか変なクセがつき、周囲からの目も変わってくるという。元プロより、なまじの体育会系のほうがそうだったりすると思うのですが(プロは体調管理もプロだろうから)ひょっとこみたいな人も過去には(過去じゃないか)いたので、そう思うです。

最後にオールしたの何歳の時ですかと聞かれて、あの時やったかもしれないが考えたくもないという人生。

でも、軽とF1のシャーシ比較は、どうでしょうか。メルセデスの一般販売車のシャーシを軽と比較するなら分かるんですが、F1カーって、サラブレッドが普通の馬に比べて競争競走に特化してる分骨折も疲労骨折もしやすいのと似てませんか。それをサッカー選手に例えると、現在はさすがにないでしょうが、血を抜いて戻す痕跡が残らないドーピングとか、ヌワンコ・カヌー試合中心臓発作で急死とか思い出してしまう。頁55のクリロナの絵は、なんでって思う程似てませんが、それは蛇足。

頁133、負けず嫌いにも二種類いて、負けるのが嫌だから戦わないタイプがいるってところは身に沁みました。私もそうですが、負け犬って、汚い手を使ってまで平然と勝つメンタリティもないし、でも負けず嫌いだったりして、ようするにお坊ちゃんと言うのか… そういうタイプもいるな、と。はー、とほほ。

この巻、バックスタンド最上段から富士山見えるコマがあるかと思ったら、書き割りの天皇杯の看板に富士山が書いてあるだけでした。多分天皇杯の看板だと思います。スルガ銀行ではないと思う。

本編で、システム変更マッチアップ対象が変わることでガラッとゲームの勢いも変わってしまう不思議をうまく描いていて、また主役のチームがそれで苦境に陥るので、よいと思いました。いつも強かったら読者は慢心してしまう。作者が戦術オタかどうか知りませんが、ロシアW杯観戦記で、「バカ試合」とか「塩試合」とかひとことで的確に表現する自信の持ち主であることは分かりました。

巻末に四コマ形式のロシアW杯観戦記がついていて、情報量は多かったです。作者はそれなりに英語喋れるんだなと思ったのが、ぱっぱっとキリル文字に対応するくだり。流しのタクシーはぼるとか、編集長が休載減らしてくださいと柱に書いたりとか、情報量は多かったです。「FAN ID」というビザ代わりのIDカードがあって、これとチケットで試合当日はメトロが無料になったというくだり、のー先生のスタグル漫画でも同じ描写があるのですが、説明がないので全く気づきませんでした。そうだったのか、これはそういう場面だったのか。スマホアプリでタクシー呼ぶ場面も両漫画共にアリ。

で、巻末漫画でいちばん印象に残ったのが、アエロフロートの突然の乗り換え変更より、経由地北京のネット遮断のすさまじさと、あと筆談で、作者が"行李"とか"今天"みたいな中文単語を散りばめながら、その限界を超えると"到达"でなく「到着」を使うくだりと、回答がすべてアルファベットの中国人係員の矜持。私も、知らない単語は使えないので、そこは日本語の漢字の熟語でも分かるやろ的に甘えたをします。一衣帯水。唇歯輔車。うそ。こんなことをしてると中国語は上達しません。絶対に。

翻訳アプリ、使わなかったのでしょうか。それも遮断されてるのか。でも全土すべてこうとはちょっと思えないのですが…(上海旅行した知人の話など聞くと)以上