『紅色ホテル』"HÔTEL ROUGE" 読了

 カバー折の著者肖像写真撮影・景山正夫 装丁 亀海昌次

紅色ホテル

紅色ホテル

 

 まだやってる山崎洋子を読んでみようシリーズ

八つの短編(ひとつは中編)のうち、ホテルを舞台にした作品が五つあるということで、ニューグランドのエッセーに題名が出た本。最初の三篇が"floor X"で、中編が"offsideoutside"で、その後の四話が"floor XX"

青い髪の人魚』「小説すばる」1988年8月臨時増刊号掲載

猟奇スプラッター。時代が生んだ、流行の産物。

スペシャル・ルーム』「小説すばる」1990年11月号掲載

和製ホラー。四谷怪談伊右衛門以来の勧善懲悪の伝統に則って、ひどい目に遭うのはバブル時代の、こずるく立ちまわって、くすねたりごまかしたりが上手な小悪党。

十三怪談』「小説すばる」1987年12月冬季号掲載

和製ホラー。これも因果応報。なかなか不条理でサディスティックな、美徳の不幸家畜人ヤプーにはなれない。

暗黒街とうきょうの淑女おんなたち』「野生時代」1988年11月号掲載

ゆうもあミステリーというか、コン・ゲームというか。まあまあ長いので、前後編掲載かと思ってました。なぜ主人公が妊娠してるのか、相手は誰なのかが説明なかった気がします。編集もバブルで、気を入れて原稿読んでなかったのか。ホテルの話じゃないです。

ホテル・ルージュ』「小説すばる」1993年8月号掲載

これもスプラッター。猟奇。私見ですが、一時期の推理小説の猟奇好きは、ISだかアルカイダだかが、日本人捕虜を首切る動画が全世界に拡散された頃から、潮が引くように熱気が失せた気がします。現実の、さばさばした説得力の前に、空想はしぼむ。和製ホラーは、編集や読者が共同幻想(笑)で育てたジャンルと思うのですが、『リング』が1998年、『ぼっけえ、きょうてえ』が1999年。それ以前に作者にホラーを書かせた編集は、まだ種に水をやっている状態と思っていたのか。やがて芽を出して、大輪の花を咲かせる。

孤独な妖精』「小説すばる」1993年11月号掲載

これがいちばん読めるというか、しっかりした推理小説でもあるというか。子役という飛び道具を使っているせいもあるかと。最初、夜の繁華街の植え込みの陰に子どもが蹲ってるというので、地縛霊かと思いました。ちがった。

あたしを見つめて』「小説すばる」1994年3月号

以下二篇はホテルと関係なし。次の話を読むと、どうもこの話も、作者の保護者観が投影されてるんだなと思いました。

匂い袋』「マダム」1993年4月号・5月号

作者が生い立ち自叙伝を書くのは2014年で、それを読んでからこれを読んでいるわけで、何も知らずに読んでたら、どう思っていただろうと思います。このややこしい人間関係の設定が、なんで必要なのか、もっとシンプルにしよしとか思うのか。まさか現実を映したミラー構成だったとは。以上