『横田空域 日米合同委員会でつくられた空の壁』(角川新書)読了

 装丁者 緒方修一(ラーフイン・ワークショップ)

ロゴデザイン good design company 

オビデザイン Zapp!白金正之

 前川健一『アジア・旅の五十音』は、ほんとは前川グル導師が編集企画者になって、ビルマ北部少数民族の権威である吉田敏浩に書かせたかった、とある人の近書で、最近は日米委員会に夢中で、私はよく知らないのでとりあえず新書を一冊借りてみました。

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なぜ日本の制空権はアメリカ軍に制限されるのか  東京・横田基地にもオスプレイ配備完了  密室で決められた「他の取極」で 日本の憲法体系はすでに骨抜き  ・急上昇や迂回を強いられる民間機  ・住宅地でもおかまいなしの超低空飛行  ・首都圏でも衝撃波でガラスが割れる

横田空域だけでなく、岩国空域なんかもあるそうですが、こんな本です。オスプレイがバーンと帯にある時点でなるほどと。これが中国人民解放軍の殲だったらまったく印象が違っていたのでしょうが、本書に殲は登場しませんので、そうなると羊頭狗肉のそしりはマヌカハニー、否、まぬかれないでしょう。

帯裏の図が横田空域で、よくある軍用機と民間機で高度の棲み分けしてる話かと最初思っていたのですが、そこを日本の管制センターでなく、米軍がコントロールしてる点が作者の強調したい点だそうで、それは何故かというと、日米合同委員会がそう決めたからで、何故福島北部の喜多方らーめんから新潟の高度がグンバツに高いのかなど、謎の多くは、詳細が現状のままだとまったく開示される予定がないので、分かりま千円だそうです。これで行くと、民間航空便が小松と富山に行くのが結構難儀に見えますが、もともと低い高度は日本アルプスの乱気流があるので、低い高度は米軍にくれてやって、上を飛ぶんじゃいかなと思いました。それでも天候の悪い日は迂回飛行するので、金沢まで空路五時間とかかかる時もあるわけで、それで、北陸新幹線は必要だったのだなと分かるのですが、作者はそういう話だけでなく、山岳救助のドクターヘリなんかも米軍が制空権を持つ高度では、米軍に申請などお伺いを立てて飛ばんならんので、それでも主権国家ですかということらしい。

ただその日本の空を我が物顔に飛んでキーンバリバリうるせーぞ的な事象報告は、我々神奈川県民は相応にいい意味でも悪い意味でもスレてるので使いづらいのか、群馬県の渋川なんかの住民の声を取り上げています。あっちまで横田から十五分くらいで到達して訓練飛行やってるんだそうで。神奈川県の厚木飛行場に隣接した地域では、厚木飛行場の艦載機(横須賀の空母の)訓練のタッチアンドゴーがあるから、その領域の家は、一軒に二部屋、窓開けたらうるそうてかなんっしょ、対策で、エアコン設置行政支援でさしてもらえる話なんか本書には出ません。むかしは、神奈川なら小学校四年か五年の社会の教科書にも載ってたものですが、横田じゃないからかな。グソマの人が、戦争に使うものだし、なんとなくこはい、と、FUD攻撃あります。Fear, Uncertainty and Doubt. 

FUD - Wikipedia

あの会社の車はリコールしたことあるからこわい、もう売らないでほしい、とか、あのメーカのパソウコンはバッテリーが火を噴いたからこわい、もう買わないでほしい、と言ったら営業妨害になりますが、こと国防は違うと言っていい。か、どうか。

我々神奈川県民はスレていると実感しました。ある土地の中古格安住宅がなぜ格安なのか、タッチダウンの直下だからだ、と、ウェブの中古物件サイトの地図見て、すぐ下が厚木飛行場の滑走路なので、すぐ判定出来てしまうとか、そういう遊びをやりすぎている。「我々で括るな」

本書には、沖縄が独自にドイツとイタリアに調査チームを派遣して、両国では米軍に管制権を渡すなどしてないよ、と言ってもらう報告書が出ます。翁長知事時代。意気揚々と帰ってくる調査チーム。同じ敗戦国でとこちがう、と言いたいのでしょうが、イタリアは敗戦国でもなかろうと。自らの手でムソリーニとパヌッチ公開処刑、縛り首にしてますし。むしろ、韓国とフィリピンとの比較を調べてほしかった。アギナルド空軍基地とか、なんで返還したのか今でも分かりません。フィリピンに基地を置くほうが日本に置くより安くつくと思うのですが、フィリピンには思いやり予算がないからダメなのかなあ。フィリピン人の雇用を奪うのも枕を高くして寝れない感じなので、日本が思いやり予算を出して基地は韓国とフィリピンに置いてはどーでしょーか。ダメか。まず電力がダメなのかな。

敗戦国に基地を置かないとどういうことになるかの一例として、戦勝国台湾に基地を置いた場合、1957年3月20日、米軍将校レイノルドの妻の入浴を覗き見した中国人劉自然が将校に射殺され、米軍事法廷で将校は無罪判決になり、何故か中華民國政府が民衆を煽って、5月24日、反米暴動が勃発し、暴徒は米国大使館に乱入し、家具や文書を滅茶苦茶にしたという、世にいう五・二四事件の例があります。

そんなのに比べたら、というか台湾を比較対象にするのはアレなので、韓国でそんなようなことがあればその事例を使って、日本は民度が違うので、募集工問題のようなことは起こさないのだよ、エッヘン、と言って、プライドがくすぐられれば、いくら小林よしのりが「親米のポチ」と言っても、ほかのアジアより欧米から徳とマナーのある国民と思われてるとおだててもらうわけですから、気持ち的にアガりますので、うれしくないわけがない、安保がきおいしいよ、ということだと思います。

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そんな本で、作者は、しかし、2019年でも、「カチン族」と言わず「カチン人」と、三つ子の魂百までを貫いてるので、そこはいいと思います。

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ビルマを、ビルマ(現ミャンマー)と書くのは、時代の流れなのか。

Google マップ

本書は横田まで本国から飛んで、そっから上の六本木ヘリポートまでヘリコで移動して、そっから車、の米政治家について、頁19でなんか言ってますが、主席の習近平がお越しになると主要道路全封鎖する国から見ると、どっちがいいのかとも思います。作者的には、どっちもダメじゃダメなんですか、山が動いた、ということなんでしょうが。

前の総書記が飛行機嫌いだったので、臨時特別列車出してた国と比較したらとどうでしょうか。そうまでしなくてもふつうに新幹線乗ればいいじゃん、が通じない場合。

こないだ香港の蘋果日報を日本のマスコミが「リンゴ日報」と呼んだのにも驚きましたが、作者も頁16で、米軍機関紙のスターズアンドストライプスを星条旗新聞と呼んでいて、そんな隠語ヤメテ~と思いました。

頁26に、近年の主な首都圏の米軍ヘリの事故まとめが載ってますが、これ、批判する立場の人からは、何故民間機やほかの日本の公用機の事故数を併記して比較しないの、と突っ込まれると思います。米軍の場合は、そういうのを隠ぺいしようとする力を監視する市民オンブズマンも多少いるし、そういう団体を根こそぎ別件タイーホで労働改造したりはしなさそうなので、まだいいんだと思います。人民解放軍相手に同じことするのを、考えただけで身震いがする。

頁43、横田空域の正式名称は横田進入管制区、ヨコタ・レーダー・アプローチ・コントロールだそうで、略して横田ラプコンだそうです。レプコンでなくラプコンなんですね。レプラコーン。

頁139に横田をでっぱつする戦闘機の写真が載ってますが、厚木にもよく来ます。まあでも自衛隊もそんなのありますし、あれですね。今日は自衛隊の日の丸つけた輸送機が、さかんに旋回訓練してました。

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本書のキモで、横田空域に限らず、実は米軍は有事の際には日本全国どこにでも行けて、だからあっちこっちで訓練出来て、それはある時点までは日米協定で日本が認めてなかった分だそうです。それが、まあ、さっきの台湾の例とはダンチですが、ベトナム戦争時代、飛鳥田市政の横浜が、相模補給廠から横浜ノースドックまでの戦車輸送(トレーラー積載)を、「道路が傷む」という理由で認めなかったことがあり(1972/8/5)それにイキった米軍はんが、合同委員会でボロカスにゆうて勝ったのか、その後はそういうのも出来るんだそうです。

なんつーか、これが自衛隊が矢面に立って自衛隊が悪いで攻撃されてたら、もっと大変だったと思います。その辺米軍でよかった気もする。人民解放軍は以下略。以上