「凱里」が地球の歩き方に出てるか図書館の棚見に行った時、近くにあった本。たぶんリアルタイムでは読んだことがないと思います。バンコク週報、もしくは似たような、お姉ちゃんが出て来て競馬とかの記事もあるフリーペーパーは読んだことがあると思う。
前川健一の本を読んでるうち、この人が書かなくなった後もタイ、バンコクはブイブイ言わせてる邦人がようさんいたはずなので、その辺のふいんきを知ろうと思って、借りました。ブックデザイン 勝浦悠介 編集 圓尾公佑 写真協力 嶋健雄
略称「Gダイ」だそうで、現在ウェブ版のみだとかで、かつてのそれとはいったん切れてるそうで、しかし現地風俗ものオンリー路線から、旅行人に寄稿した方がいいのではと作者が老婆心から心配するような記事もまた載せるようになって(でももうその頃旅行人はない?)、かつてのライターも書かせてもらったりしたとか。そうしたクロニクルをこうやってまとめた本が簡単に読めるので、後続の人はみんなどこかでこの雑誌の膨大なバックナンバーと格闘せずとも(大宅壮一文庫にはあるのでしょうか)、これをアンチョコがわりに、今だとチートと云うのかな、記事を書いたり論文を書いたり出来るので、こうして「正史」が作られたんだなーと思いました。
前川健一は、この雑誌には関わっていないか、前川健一名義以外で関わってたのか、どちらかです。ほかに、クーロン黒沢も、いてもいいけど、いないな、と、巻末の主な号の記事紹介を見ながら思いました。一号だけ、前川健二なる人物が書いてるのですが、誤植でなければ、本人か別人のペンネームだと思います。下落合信彦というペンネームの人も登場しますので、前川健二がいてもいいんじゃいかと。記事のタイトルが、あからさまにほかの人の連載タイトルでしたし。
で、下川裕治はバンバン出ます。頁060、「格安航空券ガイド」「歩く」シリーズの生みの親として日本の活字業界に顔が広いので、それをいかして、「Gダイ」を日本国内に販売するための取次仲介の労を担ったりしています。頁422では、「Gダイアリーの陰の立役者は下川さんだろうと思う」とまで褒め殺されています。原稿料は、日本のタチのよくないところよりは全然ちゃんとしてたと書いてあります、さて。蔵前仁一は、高野秀行がイエメンでカートもしゃもしゃやる記事(そう推測出来るタイトル)の写真担当に名前が出ます。イエメンは、旅行人でも見たかなあ。誰もがそうそう行ける国ではないところに、その地域の専門家でない人がいって、どれだけの見聞録をものにすることが出来るのか。本書の作者はオマーンに行ったことがあるそうで、オマーンもまた、ふつうそんな行かない国。田中真知や吉田敏浩の名前があるかどうかは、見てません。ミャンマーの森の人は現在どうなってるか、的な題名の記事がありましたが、違う人の名前だったかも。
以下後報
【後報】
なかなかこの記事の続きが書けないです。前川健二の筆名の記事は、「風俗解放戦線」とかいうタイトルの記事で、そのタイトルは、猫巻トオルという人が普段書いている連載(頁119あたりにその記事の写真。鏡に写る風俗嬢という得意カットが紹介されています)だそうなので、その人と前川健一が同一人物か、あるいは不仲説かどちらかでしょう。
グレゴリ青山『旅のグ』に登場する猫田猫男という人の話を直接会った人から聞いたことがあり、その人物像が、いかにも「~解放戦線」といった、現代からするとパヨク的な連載タイトルとだぶるので、猫田猫夫と猫巻トオルは同一人物かもな、くらいに思ってます。で、カンボジア国籍を取得した芸人猫ひろしは別人と断言出来ます。
さらにいうと、先日ベトナム料理を食べに行って後悔した(でもまた行きます)いちょう団地のルポを書いていた「自称・誰よりもいちょう団地に通っているライター猫田しげる」は、猫であり、かつベトナム人社会に出入りしているというのなら、猫巻トオルが日本でこういう名前でライター活動しているのかなあ、なんて思ってました。
でもライター紹介の写真を見ると、たぶんちがう人です。猫巻トオルにバインミーはついてないと思う。
で、全然関係ありませんが、いちょう団地はマッチが住んでたと聞き、検索したらそうでした。
マッチこと近藤真彦、元モーニング娘の矢口は「いちょう団地」出身だがマッチは大和市側の「県営いちょう団地」、矢口は横浜市側の「市営いちょう団地」出身と言うことまで知っている。 #神奈川あるある
— 神奈川県大好きあるある (@kanayokolove) 2017年11月8日
それで矢口真里といちょう団地も検索しましたが、特に何もありませんでした。高田延彦の名前も出たが、泉区というくくりで出ただけだろうというくらい。
神奈川県横浜市泉区のトランクルーム・レンタルコンテナ・貸し倉庫の物件一覧 - グッドトランク
なかなかどこも大変ですねという。
[B! 労働] 都内の風俗店を摘発 コロナで生活苦の技能実習生ら雇用:朝日新聞デジタル
(2020/11/12)
左は、なんとなく目についた広告。
(2020/12/19)
前川健一が信用していない日本語版ウィキペディアの室橋裕和サンの記事*1には載ってないのですが、1998年に実質的な処女作『バックパッカーズ読本』をひとりで企画構成執筆ページ割までこなしてこれがあたると、一気に天下の文藝春秋社会人入社まで登りつめたのち、燃え尽きたのと、ナントカ入試組に対する風当たりと、いろいろあいまって、衝動的に会社を辞めた室橋サンがバンコクに潜伏し、ひきこもりの酒浸りの生活を送っていたのが、本書の編集部に自分を売り込んでこれまた成功し、人生を再出発するところから本書は始まります。ええ話や。
たぶん著者のウィキペディアに『バックパッカーズ読本』が載ってないのは、その後同書が加筆修正改訂版発行を繰り返し、今では、ここでもおまへか、の下川裕治と格安航空券ガイド編集部が著者の筆頭に来るような本になっているからだと思います。私は「Gダイアリー」もバックパッカーズ読本も読んだことがないのですが、読んでたら旅行なんかしなかったかもしれない。
下記の文春の記事も安田峰俊かと思ったら、本書著者の室橋裕和だったので、この本の読書感想の続きも書かねばいけない、と思いました。
本書では、青二才のボクちゃんみたいなへりくだった文体で書いてますが、新刊の情宣で登場する室橋サンは、本書でだしで、そもそもの憧れは沢木耕一深夜特急だったと書くその御大に、近づいてるんだかないんだかといった風采です。
でまあ、2005年のGダイアリー入社前、室橋サンは「サイアムから北にBTSで3つほど行った戦勝記念塔駅。そこから東に伸びるランナム通りは当時、現地採用のなかでも底辺層や、得体の知れない日本人がたくさん住む界隈として知られていた」ところに、三十過ぎで半年ほどひきこもり、酒ばっか飲んでたそうです。ですが、その自分を、「たまにしくしく泣き声を上げているだけのアル中」(頁035)と形容するのは、最近依存症が流行りだからって、ちょっと書き過ぎじゃいかなと思いました。
頁089
まさか「アル中でリハビリしてるとこでして」と言い出すわけにもいかず、まあ嗜む程度でとお茶を濁したのだが、今度は首を振りため息をついて両手を広げ、
「お酒。たくさんの人が人生を壊してきました。スギヤマ、シマ……みんな飲みすぎです。良くない。
アル中のリハビリは断酒なのですが、多分この人は飲みすぎなだけなので、節酒だと思う。伊集院静の若い頃のような顔立ちかも知れないので、居眠り先生的な意味でアル中を名乗ってるのかもしれません。
本書には、著者と、可憐でキュートかどうか分かりませんが、たぶんそうであろう、LGBTQ?の在タイ邦人との、出会いと、別れがかなりページを割いて書かれていて、最初はモテ男の著者に反発していたツンデレのあの子が、モテなのでほだされて、好きになっていくが、身を引くというストーリーではないかもしれませんが、なんかいろいろ書いています。実は今は同居してるとかいうオチがあってもいいし、そうでなくてもしかたない。別に知りたくはないです。この顔ならなんでもあるよね。本書に登場する別の在タイ邦人女衒LGBTQ?によると、室橋さんは巨根らしいです。
ぜんぜん関係ありませんが、左は、某所のカンボジア料理店の階段のパネル写真。本書のカンボジアのくだりを読むと、なんとも複雑な気分に。頁282あたり。ビールを出されると、まず睡眠薬の混入を疑うとか、そんなの。今は日本のナンパもパパ活も、女性陣はたえずそれを疑う時代になりましたので、あまり若い人はピンとこないかもしれません。
頁101と頁125に付箋をつけてるのですが、意味が分からなくなっています。
頁137によると、当たり前ですが、この雑誌は在タイ邦人の恥」であると、駐在員の妻、現地スラングによると「駐妻」たちに相当叩かれ、最後までバンコクの紀伊国屋書店には置いて貰えなかったそうです。新宿の紀伊国屋では買えるのに、バンコクでは買えない。ただ、この雑誌は、タイ警察にもにらまれていて、特にタイの女子大生を取り上げた時は、コン・ジープンが可憐なタイの女子大生を性の商品化ガーとおしかりをたびたび受けていたそうです。日本で中国人がそういう雑誌を作って、ちょくちょく日本の素人女子大生を〈未来AV绝对不行的纯真妹, 性感无限〉とかキャプションつけて表紙でニッコリ胸元出させてなまあしで微笑ませたら、ネトウヨがヘイトの示威行進まちがいなしだと思います。だからそれはそういうことです。フランスみたいにそういうのも言論の自由で擁護しようとしてはいけない。
頁290のサイアムホテル最後の日などの記事は、よかったのかな? 付箋がついてるからには、よかったと思います。
頁295にタムブンが出ますが、タンブンと書いてあります。
付箋をつけてたはずが、どっかに行ってしまったか、見落とした個所として、(1) 日本の刑務所に服役中の素人ややーさんから、熱烈な愛読者の手紙が来るというくだり。それは書いてるのですが、レンタルビデオ宅配など、在タイ邦人社会に深くくいこんでいた日本ヤクザ社会について1㍉も触れていないのはさびしいです。バンコクで風俗店を開業して苦戦するその業界の人や素人は、どっかに書いてありましたが、見つけられず。
(2) 過去に「Gダイアリーに記事を書いた著名人」のトップバッターとして高野秀行が出てくるのですが、カートの記事と、そこに顔を出す蔵前仁一はともかく、著者が感激してる、イスラム飲酒紀行収録の、マレーシアのマラッカで酒かと思ってルートビア飲む話とか、その後ニョニャ料理で飲む話とかは、マレーシアでドラッグ決めて死刑になる話ならともかく、ふつうに酒売ってる国ですから、なぜこんな話を持ち上げるのかさっぱりでした。個人的には、イスラム飲酒紀行でいちばんテキトーに書き飛ばした、原稿料稼ぎのおからでふくらましたような記事だと思う。Gダイアリーの原稿料はよかったそうですが、それにしたって。ちなみに、よくオージーのティーンテイジャーがマレーシアやシンガポールにガンジャとか持ち込んで見つかって死刑になって、家族が、まだ人生始まったばかりなのにあんまりだ、悔悛の情を忖度、斟酌してやっておくんなまし、という嘆願を無視して刑が執行されるまでの一連のニュースが現地のテレビで流れる時、ものすごく冷酷に口が悪いのが邦人だったりします。韓国人や中国人も同様かも知れないが、彼らのコミュニティでそういうニュースを見たことがないので。「毛唐が」「入国カードに、ドラッグ、デスって書いてあるじゃねーか、自分たちは白人だから例外がまかりとおると思ってるんだから、あめーよ」とか、そんなこと言いながらテレビ見てる。
話を戻すと、高野秀行は、あんなお里の知れる記事を書いて、Gダイアリー読者を試したと思う。シモから見た考現学とかが好きそうなひまじん達の社会の、レベルはどやさという。下川裕治なら、なんと答えるか。とりあえず室橋サンはほめごろしで返した。以上
(2020/12/6)(2021/1/9)