『セイロン亭の謎』平岩弓枝(新潮文庫)"The Mystery of Ceylon House" by Hiraiwa Yumie〈SHINCHŌ BUNKO〉読了

スリランカ関係書籍32冊目。

ブッコフで¥220(税込)で買いました。

庄野護『スリランカ学の冒険』*1には「西洋文学のなかのスリランカ」と「日本文学のなかのスリランカ」のふたつの章があるのですが、西洋文学がアンリ・ミショー*2だったりシヴァ・ナイポール*3だったりと、なんとなくかっこよさげな名前なのに対し、日本文学は岡村隆*4『泥河の果てまで』平岩弓枝『青の伝説』勝目梓『鮮血の珊瑚礁』の三つです。

だいぶちがう。

岡村という人は法政の冒険野郎ということ以外分からないのですが、平岩弓枝サンは御宿かわせみの人だし、勝目梓といえば笹沢佐保と並ぶ官能アクション小説の手練れですので、オイオイ邦文がこう來るのに海外文学がフォーサイスとかイアン・フレミングとかレイモンド・チャンドラーでないのはおかしいぜよとみんな思うと思います。逆に、アンリ・ミショーと並べるんなら斉藤泰志とか南木佳士とかのスリランカものを置けばいいじゃん、書いてないけど、みたいな。

平岩弓枝
Hiraiwa Yumie
1932(昭和7)年、東京生れ。日本女子大学文学部国文学科卒。長谷川伸戸川幸夫に師事し、'59年「鏨師」で直木賞を受賞。以後、戯曲、舞台演出へと活躍の場を広げ、「肝っ玉かあさん」始め、多くのテレビドラマの脚本でも知られる。'79年NHK放送文化賞、'87年菊田一夫演劇賞大賞、'91年『花影の花』で吉川英治文学賞を受賞。他に『女の顔』『御宿かわせみ』『お夏清十郎』 『風よヴェトナム』など。

伊東昌暉サンという人の新潮文庫解説によると、平成5年(1993年)「小説中公」1月号~11月号まで9月号の休載を挟んで全十回連載された作品とのこと。この解説は文春文庫にも載ってるのか、文春公式サイトにも出てます。*5

平成6年(1994年)中央公論社から単行本刊。

平成10年(1998年)新潮文庫。カバー装画 阿部真由美 デザイン 新潮社装幀室

令和5年(2023年)文春文庫(電子版含む)

解説によると、1983年くらいに平岩サンは二週間ほどかけてスリランカ全土を旅行していて、その経験が彼女のスリランカものの構想に生きているとか。

books.bunshun.jp

以下後報です。

【後報】

『青の伝説』はスリランカの話らしいのですが、本作は神戸の洋館の話です。お茶の葉を巡る詐欺事件、狐っ葉というらしいですが、それを取り扱った小説も他に書いていて、『おんなみち』というタイトルだそうです。明治中期の静岡が舞台だとか。ちょっと読もうかとも思いましたが、上中下三冊もあるので、ペンディング

『青の伝説』は一冊で済むようですが、電子版はないみたいです。

お茶の詐欺事件というと、邱永漢サンの直木賞作『香港』もそんな話だった気瓦斯。アルジェリア相手に信用取引するんだったか。もちろん騙す方ですが…

頁33に出てくるクレープシュゼットは食べたことがないので、食べたいと思いました。

おうちでプロの味!元パティシエの「クレープシュゼット」のレシピ | セブンプレミアム公式

頁25に、安徽省産の紅茶、はまなすの花をブレンドした花茶が出ます。

頁43にキーワードのせりふが出ます。英語が"Do you know the secret of Ceylon house?"で、漢語が“你知道不知道 锡兰亭的秘密?”です。なんで中文が簡体字なのかな、てのは最後まで思いました。老華僑しか出ないのに。

頁197、アメリカ人は今はコーヒ―を飲むが、むかしは紅茶だった。その名残で、今でもコーヒーはお茶のように薄くして飲むのだ。という珍説が登場します。いや、コーヒー豆が高騰してもお茶党に切り替えず、薄めてでもコーヒーを飲んでいたからアメリカンコーヒーが薄くなった説を私は信じています。

頁121

 神経に異常を来たした人間は、何をしでかすかわからない。

いきなりこんな直球が來るとは思いませんでした。この人は真犯人じゃありません。以上

(2024/8/11)