『酒育のススメ』読了

酒育のススメ

酒育のススメ

表紙のコピー、どうして私はこんなに旨く酒が呑めるのか?
に挑発されて借りました。家の光、やりますね。
池野恋に農業ライフエッセーを連載させた記憶があるのですが、検索しても出てこない。
やはり模造記憶か。下記は事実なんですけどね、反響大きかったのに文庫化されません。酒育は大事ですよ。検索したら、ほかにも提言してるサイトあった。

学校教育にない「酒育」のすすめ
佐賀のお酒ポータルサイトhttp://www.sagasake.or.jp/main/519.html

で、この本は、日本酒オンリーの本です。
酒に興味を持った人が、玉石混交のネット情報などから、
石ばかり拾ってきてそれが蔓延すると作者も迷惑だし、
悪貨が良貨を駆逐して作者の飯の種が枯渇したりしても困るから、
頑張って書きました、という感じです。
呑めない人を酒育する本でなく、
酒マニアが間違った酒マニアにならないよう牽制する本、という感じ。
最初なぎらっぽいコラムニストの文体なのかと思いましたが、
ヒロシとも小林よしのりとも違う北九州の博多弁とのことで、新鮮でした。

まえがき
 お酒呑んでるより、ネットで株の売買をやったり、2チャンネルに描き込んだり、メール交換してるほうが、より刺激的で楽しいという人も多くなってきております。

まえがき
 朝から晩まで酒だけ呑むような呑み方はしたくもない。

頁54
こげなのを「田舎者」と呼ぶんでしょうな。おいさんの言う「田舎者」ってのは、自身の文化を持たないといった意味ですけどね。

頁111
 しかし夏の夕方、疲れた体にはググッとしみ込むごと旨いのです。
 こんなときは、やっぱ湯呑み茶碗でしょ。それも一杯だけ。二杯、三杯呑むもんではありまっせん。

こんな本です。あからさまに酒の害は書けないが、
知っていることはちゃんと匂わせている。このへんがプロ。
片目の話とか、古物商の経歴とか、食文化研究家の肩書とか、一人称「おいさん」で、
作者の人物像は推し量るとしても、広範囲にいろんな話が載っていて、ためになります。
鮮度やら流通やら照明やらもういろいろ。
でも、頁134のコメをアテにして日本酒は、炭水化物は酔いが回るのを促進するから、
よくない気がします。むかしデキゴトロジーで読んだ。夏目房之介のイラストで。

酔えればいいという世界に入ってはいけない、飲酒のダークサイドに囚われるぞ、
みたいなこともちょっとは書いてもよかったんじゃないかな、と思います。
頁225のミナミの風景は、西の人間ならアンテナにピピピッと来るが、
関東の人間には身を持ち崩すことを間接的に書いても伝わらない。と思います。