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【後報】
坂口尚『石の花』*1のアマゾンのページ見て、
「この本を買った人はこんな本も…」で出てきた本なので借りた、はずです。(記憶が曖昧)
座間市の図書館分館を含む5館全館に配備されていて、ベストセラーですね。
サヨク系の本が全館完備というと税金アレか、という話ではないはず。
おひとりさま系元祖みたいな題名の本が多かったので、この人の本はこれが初読です。
海江田万里と山咲千里以外に、世界には、まりと読ませる「万里」も存在するとは理解出来ず、
相当混乱しました。どて万里。単騎、万里を走る。
作者が、チェコでソ連系の学校に通っていたころの同級生を尋ねるお話3編です。
最初がグリーク、次がロメイニア、最後が南斯拉夫。
サヨク的家庭に育って今は違う環境にいる人、母になった友人と再会するおひとりさま、
コクサイ、他言語環境、さまざまな人がさまざまな切り口で読めるし、
読んだんだなあと思います。
むかし、風俗漫画家が、親が党員のこども同士は、
赤旗まつりなど独特なネタで盛り上がれると書いてたのを思い出し、
今でもその話読めるのか検索してみたら、その人だいぶ近況違うと知りました。*2
昔は、恵比寿のお店に釣りバカ日誌の浜ちゃんが来たとか書いてたのに。
頁155、ヘブライ語はアラブ語と親戚なのにイディッシュ語はドイツ語そっくり、
の箇所など楽しく読めました。
確かにヘブルとアラビックは同じセム語族だ、ハムってエチオピアしかないんだよな、
確か、と調べ直したりして。
頁237の箇所は、身につまされました。シベリア鉄道で、ウラル山脈を越える時、
夜でもあかあかと輝く赤い星の電飾が見え、西に向かう場合は、
ここからユーロプであると実感出来るのですが、
面白いことに、「これはdiscriminationちゃう、区別や」と言う人にたくさん会えるんですね。
これだけ語学堪能な人でも、交際能力適応能力と無縁にこういう体験は起こる、
という事実が少し悲しい。
タイトルになった友人の思想は、なだいなだの一番キライな本*3を想起し、
へどがでました。
作者がそれに抗おうとして紡ぎだそうとして最後まで言い切れなかった言葉は、
バック・ホー、胡志明、ホー・チミンが同じことを言ってました。
人間は、その人の生まれ育った歴史と地理から逃れることは出来ないって。
自由・博愛・平等をフランス語でメルティングぽっぽっぽっ、のフランス病のなだいなだは、
後年その宿痾に気付けたかどうか。
ソ連共産主義もフレンチ啓蒙思想の子孫のひとつですものね。デラシネ。
すでに故人の作者ですが、疾走した人生はまだまだ永く多くの人に記憶され続け、
忘れられないあいだはこの人は存在しているといえるのでしょう。
池上永一のデビュー作*4みたいな〆で、どっとはらい。
頁153で、マチネーのことをマティネと書いていたので、この文章でもカタカナそんなふうにしてみた。
(2013/7/30)
*1: 石の花 下巻 (光文社コミック叢書“シグナル” 13 坂口尚長編作品選集 1)
*2:http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E4%BA%95%E7%A5%A5
*3: 民族という名の宗教―人をまとめる原理・排除する原理 (岩波新書)
*4: